ファクタリングの基礎知識

ファクタリングと手形の違いを徹底解説|手形割引・でんさい・約束手形廃止後の資金調達

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ファクタリング 手形

「取引先から約束手形で支払われたが、期日まで待てず早く現金化したい」「手形割引とファクタリングは何が違うのか」といった悩みを抱える事業者は少なくありません。とくに2024年11月の下請法運用見直しによる手形サイトの短縮、そして2026年度末(2027年3月末)を目標とした紙の約束手形の利用廃止方針が進むなか、手形にまつわる資金調達の考え方は大きな転換点を迎えています。手形を早期に現金化する手段としては昔から「手形割引」が使われてきましたが、近年は売掛債権そのものを売却する「ファクタリング」や、手形の後継として位置づけられる「でんさい(電子記録債権)」への関心が高まっています。

この記事では、ファクタリングと手形(約束手形)・手形割引の違いを、遡求義務(償還請求権)の有無という最も重要な観点を軸に整理します。あわせて、でんさいの仕組みと現金化の方法、約束手形の廃止方針とその背景、そして手形が使えなくなる時代にどの資金調達手段をどう使い分ければよいかまでを網羅的に解説します。専門用語もかみ砕いて説明するので、経理担当者や個人事業主の方もぜひ最後までご覧ください。

約束手形・手形割引とはそもそも何か

ファクタリングとの違いを理解するには、まず約束手形と手形割引の基本を押さえる必要があります。約束手形とは、振出人(支払う側)が受取人(支払われる側)に対して「一定の期日に、一定の金額を支払う」ことを約束する有価証券です。取引の代金をその場で現金で払う代わりに、支払いを将来に先送りできる仕組みで、支払企業にとっては資金繰りの猶予を得られる利点があります。

一方、手形を受け取った側は、記載された支払期日(満期日)が来るまで現金を手にできません。手形を受け取ってから満期日までの期間を「手形サイト」と呼び、従来は90日から120日といった長期のサイトも珍しくありませんでした。この待機期間が受取企業の資金繰りを圧迫することが、長年の課題とされてきたのです。

そこで満期日を待たずに手形を現金化する方法が「手形割引」です。手形割引とは、満期前の約束手形を銀行や手形割引業者に持ち込み、満期までの利息に相当する割引料を差し引いた金額を受け取ることで早期に現金化する手法を指します。実質的には手形を担保にした融資に近く、割引を依頼した企業には後述する「買い戻し義務」が残る点が最大の特徴です。

手形割引の割引料と手形サイトのルール

手形割引で差し引かれる割引料は、手形の額面・満期までの期間・振出人の信用力によって変動します。銀行の手形割引であれば年率で数パーセント程度、信用力が低い先の手形を扱う手形割引業者では年率でさらに高くなる傾向があります。満期までの期間が長いほど、また信用力が低いほど割引料は高くなるのが一般的です。

手形サイトについては制度改正が進んでいます。公正取引委員会と中小企業庁は、2024年11月1日以降、親事業者が下請代金の支払手段としてサイトが60日を超える手形等を交付した場合、下請法上の「割引困難な手形の交付」に該当するおそれがあるとして指導の対象とする運用を開始しました。従来は繊維業で90日、その他業種で120日が上限の目安でしたが、これが原則60日以内へと大幅に短縮された形です。実際に公正取引委員会は、2024年度の定期調査で60日超の手形を用い短縮予定もないとした親事業者約600者に対して注意喚起を行っています。

ファクタリングと手形・手形割引の決定的な違い

ここからが本題です。「ファクタリング 手形」で情報を探している方が最も知りたいのは、ファクタリングと手形割引の違いでしょう。両者は「売上に基づく資産を期日前に現金化する」という目的こそ似ていますが、法的な性質はまったく異なります。最大の違いは、対象となる資産と、遡求義務(償還請求権)の有無の2点です。

違い1:現金化する対象が異なる

手形割引が現金化する対象は「約束手形」という有価証券です。これに対しファクタリングが現金化する対象は「売掛金(売掛債権)」です。売掛金とは、商品やサービスを提供したものの代金がまだ支払われていない状態の債権を指します。つまり手形割引は手形という紙の証券がなければ利用できませんが、ファクタリングは請求書ベースの通常の掛け取引でも利用できるため、手形を発行しない取引先との間でも資金化が可能です。

違い2:遡求義務(償還請求権)の有無

最も重要な違いが、遡求義務すなわち償還請求権(リコース)の有無です。償還請求権とは、現金化した債権や手形が最終的に回収できなかった場合に、資金を提供した側が利用企業に対して「その分を返してほしい」と請求できる権利のことです。この言葉はもともと手形取引で使われてきた概念です。

手形割引には原則としてこの償還請求権があります。したがって、割引した手形の振出人が満期に支払えず不渡りとなった場合、割引を依頼した企業は手形を買い戻し、受け取った現金を返済しなければなりません。つまり振出人の倒産リスクは、最終的に手形割引を利用した側が負う構造になっています。

一方、ファクタリングは償還請求権なし、いわゆるノンリコース契約が原則です。ノンリコース契約であれば、売掛金をファクタリング会社に売却した後に売掛先が倒産して代金が回収不能になったとしても、ファクタリング会社は利用企業に買い戻しを請求できません。売掛先の貸し倒れリスクをファクタリング会社が引き受けるため、利用企業は売掛先の倒産リスクから解放されます。これが手形割引との決定的な差であり、ファクタリングが「債権の売買」と呼ばれるゆえんです。ただし償還請求権ありのファクタリング契約は貸金業に該当しうるため、契約時には償還請求権の有無を必ず確認しましょう。

違い3:審査対象・手数料・信用情報への影響

審査の対象にも違いがあります。手形割引では割引を依頼する企業自身の信用と振出人の信用の両方が見られるのに対し、ファクタリングでは主に売掛先の信用力が審査されます。そのため、自社の業績が芳しくない場合でも、売掛先が優良企業であればファクタリングを利用しやすいケースがあります。

  • 手形割引:対象は約束手形、償還請求権あり、割引料は年率数パーセント程度、実質的に借入に近く信用情報に影響しうる
  • ファクタリング:対象は売掛金、原則ノンリコースで償還請求権なし、手数料は買取額に対して2社間で相場8〜18%程度・3社間で1〜9%程度、債権売買のため借入にはあたらない
  • 共通点:どちらも期日前に資金を得られる早期資金化の手段であり、担保・保証人を必須としない場合が多い

手数料水準だけを見れば手形割引のほうが低く見えますが、手形割引は不渡り時の買い戻しリスクを利用企業が負う点、そしてファクタリングは売掛先の倒産リスクを移転できる点を踏まえて総合的に比較することが大切です。単純な料率比較ではなく、負うリスクとのバランスで選ぶ姿勢が欠かせません。

でんさい(電子記録債権)とは|手形の後継の仕組み

手形の代替手段として近年急速に普及しているのが、でんさい(電子記録債権)です。でんさいは、全国の金融機関が参加する電子債権記録機関「でんさいネット(株式会社全銀電子債権ネットワーク)」が管理する記録原簿に、債権の発生や譲渡を電子的に記録する仕組みです。紙の手形が果たしてきた役割を、そのまま電子データに置き換えたものと考えると理解しやすいでしょう。

でんさいは、金融機関を通じて記録原簿に「発生記録」を行うことで発生します。でんさいネットでは、紙の手形の振出実務と同じように債務者側の手続きで債権を発生させられる「債務者請求方式」を基本としています。発生したでんさいは、記録原簿に「譲渡記録」を行うことで第三者へ譲渡でき、必要に応じて債権を分割して一部だけ譲渡することも可能です。紙の手形では原則できなかった分割ができる点は、でんさいならではの大きな利点です。

でんさいを満期前に金融機関へ譲渡して割引料を差し引いた現金を受け取る「でんさい割引」を使えば、手形割引と同様に早期資金化ができます。でんさいは電子データであるため、紙の手形で必要だった収入印紙が不要になり印紙税を削減できるほか、紛失・盗難のリスクがなく、郵送や保管の事務負担も大幅に軽減されます。ただし遡求義務の考え方は手形に近く、でんさい割引でも支払企業が支払えなければ買い戻しを求められる点は、ノンリコースのファクタリングとは性質が異なります。

ファクタリング 手形

約束手形の廃止方針とファクタリング・でんさいへの移行

手形をめぐる環境は制度面から大きく動いています。政府は2021年6月に「おおむね5年後の約束手形の利用廃止」と「小切手の全面的な電子化」を目指す方針を示しました。これを受けて全国銀行協会は自主行動計画を策定し、2026年度末、すなわち2027年3月末を目標として、紙の約束手形と小切手の金融機関での取り扱い(交換)を終了する方向で取り組みを進めています。すでに一部の金融機関では手形用紙・小切手用紙の新規発行を順次終了しています。

廃止の対象はあくまで「紙の」約束手形と小切手です。手形が担ってきた支払機能そのものが消えるわけではなく、その受け皿として位置づけられているのが、でんさいをはじめとする電子記録債権やインターネットバンキングによる振込です。つまり今後は、手形で行っていた取引をでんさいへ移行するか、あるいは掛け取引に切り替えて必要に応じてファクタリングで資金化する、といった対応が求められることになります。

この流れは、これまで手形割引で資金繰りを回してきた企業にとって特に重要です。紙の手形が使えなくなれば、手形割引という手段自体が将来的に縮小していきます。その際の選択肢として、でんさい割引と、請求書ベースで利用できるファクタリングの2つが有力な代替となります。手形の廃止を、自社の資金調達手段を見直す好機と捉えるとよいでしょう。

ファクタリング・手形割引・でんさいの使い分け

3つの手段はそれぞれ性質が異なるため、自社の状況に応じて使い分けることが重要です。判断の軸は、手元にある資産の形(手形か売掛金か)、負いたくないリスク(売掛先の倒産リスクを移したいか)、そしてスピードやコストです。

  • 手元に紙の約束手形があり、なるべく低コストで現金化したいなら手形割引。ただし振出人が不渡りを出した場合の買い戻しリスクは自社が負う
  • 取引先がでんさいに対応しており、電子化された債権を保有しているならでんさい割引。印紙税不要・分割譲渡可能で事務負担が軽い
  • 手形がない掛け取引で、売掛先の倒産リスクまで移転して確実に資金化したいならノンリコースのファクタリング。手数料は相対的に高めだが貸し倒れリスクを回避できる

たとえば「売掛先の経営状況にやや不安があり、万一の貸し倒れを避けたい」場合は、多少手数料が高くても償還請求権なしのファクタリングが安心です。逆に「振出人が上場企業で信用力が高く、コストを抑えたい」場合は手形割引やでんさい割引が合理的でしょう。約束手形の廃止を見据え、これから新たに導入するならでんさいやファクタリングを軸に検討するのが現実的です。ファクタリングの具体的な仕組みや基礎知識は、INVOYのメディアでも詳しく解説しています。

よくある質問

手形割引とファクタリングはどちらが手数料は安いですか

料率だけを見れば、銀行の手形割引のほうが年率数パーセント程度と低く、ファクタリングの手数料(2社間で相場8〜18%程度)より安く見えます。ただし手形割引には不渡り時の買い戻し義務があり、振出人が倒産すれば全額の返済リスクを負います。ファクタリングは原則ノンリコースでそのリスクを移転できるため、単純な料率比較ではなく負うリスクを含めて総合的に判断することが大切です。

約束手形が廃止されたら手形割引は使えなくなりますか

2026年度末(2027年3月末)を目標に紙の約束手形の取り扱いが終了する方向のため、紙の手形を前提とする手形割引は将来的に利用できなくなっていくと考えられます。今後は、電子化されたでんさいを割り引く「でんさい割引」や、売掛債権を売却するファクタリングへ移行するのが一般的になる見通しです。手形取引がある企業は早めに代替手段の検討を始めることをおすすめします。

ファクタリングは借入になりますか。信用情報に影響しますか

ファクタリングは売掛債権の売買であり、原則として借入(融資)にはあたりません。したがって負債として計上されず、金融機関の借入枠を圧迫しない点がメリットです。ただし償還請求権あり(リコース)の契約は実質的に貸金とみなされる場合があるため、契約前に償還請求権の有無を必ず確認してください。手形割引は形式的に借入に近く、信用情報に影響しうる点で異なります。

でんさいとファクタリングは何が違いますか

でんさいは手形を電子化した「決済の仕組み」そのもので、割引すれば早期資金化もできますが、遡求義務の考え方は手形に近く支払企業が支払えなければ買い戻しを求められます。一方ファクタリングは売掛債権の売買であり、原則ノンリコースで売掛先の倒産リスクを移転できます。倒産リスクまで回避したい場合はファクタリング、低コストで電子的に決済・資金化したい場合はでんさいが向いています。

まとめ

ファクタリングと手形・手形割引は、いずれも売上にひもづく資産を期日前に現金化する手段ですが、その性質は大きく異なります。手形割引は約束手形を対象とし、原則として償還請求権(遡求義務)があるため、振出人が不渡りを出せば買い戻し義務を負います。これに対しファクタリングは売掛債権の売買で、原則ノンリコースであり、売掛先の倒産リスクをファクタリング会社へ移転できる点が最大の強みです。

制度面では、2024年11月から下請法上の手形サイトが原則60日以内へ短縮され、さらに2026年度末(2027年3月末)を目標に紙の約束手形と小切手の取り扱いが終了する方向で進んでいます。手形が担ってきた役割は、でんさい(電子記録債権)やインターネットバンキングによる振込、そしてファクタリングへと引き継がれていきます。手元の資産の形と、負いたくないリスク、コストやスピードを軸に、手形割引・でんさい割引・ファクタリングを賢く使い分け、手形廃止時代の資金繰りに備えましょう。

この記事の投稿者:

hasegawa

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