ファクタリングの基礎知識

ファクタリング契約とは?種類・契約書の重要条項・偽装契約の見分け方を徹底解説

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ファクタリング 契約

売掛金を支払期日より前に資金化できるファクタリングは、銀行融資に頼らない資金調達手段として中小企業や個人事業主に広がっています。しかしファクタリング契約は法律上「債権譲渡契約」であり、その仕組みや契約書の条項を正しく理解せずに署名すると、想定外の費用負担を負ったり、実質的には違法な貸付に巻き込まれたりする危険があります。この記事では、ファクタリング契約の法的な性質、2社間と3社間という契約の種類、契約書で必ず確認すべき重要条項、契約締結までの流れ、そして「偽装ファクタリング」を見抜くための具体的なチェックポイントを、2020年の民法改正や金融庁の注意喚起、近年の裁判例を踏まえて解説します。契約内容を理解したうえで安全に利用したい事業者の方に向けた内容です。

ファクタリング契約の法的な性質は「債権譲渡契約」

ファクタリングは、利用者が保有する売掛債権(売掛金を請求する権利)をファクタリング会社に売却し、その対価を受け取る取引です。法律的にはお金を借りる「金銭消費貸借契約」ではなく、債権そのものを売り渡す「債権譲渡契約」に当たります。この性質の違いが、後述する手数料・償還請求権・違法性の判断すべてに関わってくるため、最初に押さえておくことが重要です。

債権譲渡そのものは民法で正面から認められた行為です。さらに2020年4月施行の改正民法では、債権譲渡をめぐるルールが利用者に有利な方向へ整理されました。改正前は取引基本契約に「譲渡禁止特約(譲渡制限特約)」が付いていると債権を第三者に譲渡できないとされていましたが、改正後の民法第466条第2項により、譲渡を制限する意思表示があっても債権譲渡そのものは有効になりました。これにより、譲渡禁止特約が付いた売掛金でもファクタリングを利用できる余地が広がっています。

一方で、ファクタリングが「債権の売買」である以上、貸金業法や利息制限法といったお金の貸し借りに関する規制は原則として適用されません。これがファクタリングの手数料が利息制限法の上限(年15〜20パーセント)を超えても直ちに違法とならない法的な根拠です。ただし、後述するとおり実質が「貸付」と評価される契約は別で、貸金業の規制を受けたり契約自体が無効になったりします。

ファクタリング契約の種類|2社間と3社間の違い

ファクタリング契約は、当事者の構成によって大きく「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類に分かれます。どちらを選ぶかで、取引先への通知の有無・手数料の相場・必要な手続きが変わるため、自社の状況に合った契約形態を選ぶことが大切です。

2社間ファクタリング契約

2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2者だけで契約が完結する形態です。売掛先(取引先)には債権を譲渡したことを原則として通知しないため、取引先にファクタリング利用を知られずに資金調達できます。売掛先からの入金はいったん利用者が受け取り、その後ファクタリング会社へ送金する流れになります。

手数料の相場は売掛金額のおおむね8〜18パーセント程度と高めです。これは、取引先の関与がないぶんファクタリング会社にとって二重譲渡や使い込みのリスクが高く、その分がコストに反映されるためです。後述する債権譲渡登記を求められるのも、主にこの2社間ファクタリングです。

3社間ファクタリング契約

3社間ファクタリングは、利用者・ファクタリング会社・売掛先の3者が関与する形態です。利用者から売掛先へ「債権譲渡通知」を行い、売掛先の承諾を得たうえで、支払いを売掛先からファクタリング会社へ直接行ってもらいます。

取引先がファクタリング会社へ直接支払うため、利用者による使い込みリスクがなく、貸し倒れリスクも低くなります。その結果、手数料の相場は売掛金額の1〜9パーセント程度と2社間より大幅に低くなります。ただし取引先にファクタリング利用を知られるため、取引関係への影響を懸念して2社間を選ぶ事業者も少なくありません。

  • 通知の有無:2社間は売掛先への通知が原則不要、3社間は債権譲渡通知が必須
  • 手数料相場:2社間はおおむね8〜18パーセント、3社間は1〜9パーセント
  • 入金経路:2社間は利用者経由で送金、3社間は売掛先から直接ファクタリング会社へ
  • 取引先への影響:2社間は知られにくい、3社間は知られる

契約書で必ず確認すべき重要条項

ファクタリング契約のトラブルの多くは、契約書の条項を十分に確認しないまま署名することで起こります。ここでは、契約書で特に注意して確認すべき重要な条項を整理します。署名前に一つずつチェックしてください。

償還請求権の有無(ノンリコース・ウィズリコース)

償還請求権とは、売掛先が倒産などで売掛金を支払えなくなった場合に、ファクタリング会社が利用者に対して「代わりに支払え(買い戻せ)」と請求できる権利のことです。償還請求権がない契約を「ノンリコース」、ある契約を「ウィズリコース(リコース)」と呼びます。

正規のファクタリングは原則として償還請求権なし(ノンリコース)です。債権を売り切る以上、売掛先が支払えなくなった未回収リスクはファクタリング会社が負担し、利用者が買い戻しを求められることはありません。逆に償還請求権が付いている契約は、回収不能リスクが利用者に残る点で実質的に「売掛債権を担保にした貸付」に近く、ファクタリング会社が貸金業登録をしていなければ違法となるおそれがあります。契約書に「償還請求権なし」と明記されているかを必ず確認しましょう。

手数料の内訳と計算方法

手数料は何パーセントかという数字だけでなく、計算の基礎と諸費用の有無まで確認します。売掛金額に対して計算するのか買取金額に対して計算するのか、消費税の扱いはどうなっているのかで実質負担は変わります。また、ファクタリング手数料とは別に事務手数料・審査手数料・出張費・債権譲渡登記費用・振込手数料などが別建てで請求されるケースがあるため、契約書と見積書の総額が一致しているかを照合してください。

債権譲渡登記に関する条項

2社間ファクタリングでは、同じ債権を別の会社にも売却する「二重譲渡」を防ぎ第三者対抗要件を備えるため、ファクタリング会社が利用者に債権譲渡登記を求めることがあります。登記には登録免許税がかかり、債権の個数が5,000個以下なら1件につき7,500円、5,000個を超える場合は1件につき15,000円です。これに加えて司法書士へ依頼する場合は数万円から10万円程度の報酬が発生し、これらは通常利用者の負担となります。

なお、すべての2社間ファクタリングで登記が必須なわけではなく、登記を不要とするサービスもあります。登記を行った場合は、取引終了後に抹消手続きを行うことも重要です。抹消しないまま放置すると、次に別のファクタリング会社を利用する際に二重譲渡を疑われ、審査に通らない原因になります。契約書に抹消手続きと費用負担の取り決めがあるかも確認しましょう。

契約解除・損害賠償・違約金の条項

契約解除条項には、どのような場合に契約が解除されるか、解除された場合に資金の返還義務が生じるかが定められています。報告義務違反や表明保証違反を理由に広範に解除・買い戻しを求められる内容になっていないかを確認します。損害賠償や違約金の条項も要注意で、ここに過大な金額や、売掛先の不払い時に利用者が損害を賠償する旨が書かれていると、契約書の表面上は「償還請求権なし」でも実質的に買い戻しを強いられる構造になっていることがあります。償還請求権の有無だけでなく、損害賠償責任の範囲まで読み込むことが、不利な契約を避けるポイントです。

ファクタリング契約締結までの流れ

契約の各ステップで何が確認されるかを把握しておくと、書類の準備や条項チェックをスムーズに進められます。一般的な流れは以下のとおりです。

  • 申し込み・問い合わせ:利用するファクタリング会社へ売掛債権の内容や希望金額を伝える
  • 必要書類の提出:請求書・通帳のコピー・取引基本契約書・本人確認書類・決算書などを提出する
  • 審査・見積もり:売掛先の信用力を中心に審査が行われ、買取可否・手数料・入金額が提示される
  • 契約条件の確認:償還請求権の有無・手数料の内訳・債権譲渡登記の要否・解除条項などを契約書で確認する
  • 契約締結:内容に合意したら契約書を取り交わす(3社間では売掛先への債権譲渡通知と承諾を行う)
  • 入金:契約成立後、手数料を差し引いた買取代金が利用者の口座へ振り込まれる

審査で重視されるのは利用者自身の信用力よりも売掛先の信用力です。これは、最終的に支払うのが売掛先であるためで、赤字決算や税金滞納がある事業者でも、売掛先が優良であれば利用できる可能性があります。なお、契約書はその場の口頭説明だけで判断せず、控えを必ず受け取り、内容を持ち帰って確認することが安全な契約の基本です。

ファクタリング 契約

偽装ファクタリング契約の危険と見分け方

金融庁は、ファクタリングを装って高金利の貸付けを行うヤミ金融業者の存在を確認しており、経済的に貸付けと同様の機能を有する取引は貸金業に該当するおそれがあると注意喚起しています。形式上は「債権の売買」を装いながら、実態は売掛金を担保にした違法な融資という「偽装ファクタリング」に巻き込まれないために、契約書の特徴を見抜く必要があります。

買戻特約・償還請求権付きは貸付とみなされるリスク

契約に「買戻特約」や償還請求権が付いていると、売掛先が支払わない場合に利用者が買い戻す(弁済する)義務を負うため、回収不能リスクが利用者に残ります。この場合、債権の売買ではなく実質的に売掛債権を担保とした金銭の貸付と評価され、貸金業登録のない業者が行えば貸金業法違反となります。実際の裁判例でも判断が分かれており、東京地裁令和2年9月18日判決は、ファクタリング業者が償還請求権を持たず不払いリスクが業者へ移転していると評価できることなどから貸金業法は適用されないと判断しました。これに対し札幌高裁令和4年7月7日判決は、売主が買戻期限までに債権を買い戻さざるを得ない状況にあったことなどを考慮し、実質は債権を担保とする金銭消費貸借に近く貸金規制を潜脱するものとして、公序良俗に反し無効と判断しています。

危険な契約を見抜くチェックポイント

次のような特徴が契約書や取引条件に見られる場合は、偽装ファクタリングや悪質業者の可能性が高いため、契約を見送るか専門家に相談してください。

  • 償還請求権あり、または買戻特約・買戻義務が定められている
  • 分割返済や月々の支払いを求められる(債権の売買なら一括で完結するはず)
  • 手数料が相場をはるかに超える、または手数料率や内訳が契約書に明記されていない
  • 契約書の控えを渡さない、署名を急がせる、会社の所在地や登記が確認できない
  • 給与(給料)を対象とする「給料ファクタリング」を勧めてくる(最高裁が貸付に当たると判断済み)

特に給料ファクタリングは、最高裁が貸付に該当すると判断しており、貸金業登録のない業者による取引は違法です。労働者個人の給与債権を対象とするものは、事業者向けの正規の売掛債権ファクタリングとは性質が異なるため、絶対に利用しないでください。

安全にファクタリング契約を結ぶための注意点

トラブルを避けて安全に契約するためには、契約前の確認と業者選びが何より重要です。以下の点を意識してください。

  • 契約書に「償還請求権なし(ノンリコース)」と明記されているかを確認する
  • 手数料・諸費用の総額と計算方法を見積書と契約書で照合する
  • 債権譲渡登記の要否・費用負担・取引後の抹消手続きを確認する
  • 契約解除・損害賠償・違約金の条項に過大な負担がないか読み込む
  • 契約書の控えを必ず受け取り、不明点は署名前に解消する

資金調達の手段は売掛債権の売却だけではありません。資金繰りの全体像を踏まえて手段を比較検討したい場合は、クラウドファクタリングや資金繰り支援を手がけるOLTAの情報もあわせて確認すると、自社に合った選択肢を整理しやすくなります。請求書の発行・管理や支払いサイトの調整といった日々の資金繰り改善についてはINVOYで関連情報を確認できます。条件や法令は改正されることもあるため、最新の情報を確認し、判断に迷う場合は弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

ファクタリング契約は融資(借入)と何が違いますか?

融資はお金を借りる金銭消費貸借契約で、返済義務と利息が発生します。一方ファクタリングは売掛債権を売却する債権譲渡契約で、原則として返済義務はなく、負担するのは手数料のみです。償還請求権なしの正規のファクタリングであれば、売掛先が支払えなくなっても利用者が買い戻す必要はありません。

取引先に知られずにファクタリングを利用できますか?

2社間ファクタリングであれば、売掛先への債権譲渡通知が原則不要のため、取引先に知られずに利用できます。ただし、その分手数料は8〜18パーセント程度と高めになり、債権譲渡登記を求められることもあります。取引先に知られても問題ない場合は、手数料が1〜9パーセント程度と低い3社間ファクタリングが有利です。

譲渡禁止特約が付いた売掛金でも契約できますか?

2020年4月施行の改正民法により、譲渡を制限する意思表示があっても債権譲渡そのものは有効とされたため(民法第466条第2項)、譲渡禁止特約が付いた売掛金でもファクタリングを利用できる余地が広がりました。ただし運用はファクタリング会社の判断にもよるため、事前に相談することをおすすめします。

契約書で最も注意すべき条項はどこですか?

償還請求権の有無が最重要です。あわせて買戻特約や損害賠償の条項も確認してください。表面上は償還請求権なしでも、損害賠償条項で実質的に買い戻しを強いる契約があるためです。手数料の内訳、債権譲渡登記、契約解除条項もあわせて確認しましょう。

まとめ

ファクタリング契約は法律上「債権譲渡契約」であり、貸金業法や利息制限法が原則適用されない点が融資との大きな違いです。契約形態は取引先への通知が原則不要で手数料が高めの2社間と、通知が必要で手数料が低い3社間に分かれます。契約書では、償還請求権なし(ノンリコース)であること、手数料の内訳と総額、債権譲渡登記の要否と費用、契約解除・損害賠償・違約金の条項を必ず確認してください。

とりわけ注意すべきは、買戻特約や償還請求権が付いた契約です。これらは実質的に売掛債権を担保とした貸付と評価され、貸金業登録のない業者が行えば違法となるおそれがあり、裁判例でも公序良俗違反として無効とされたケースがあります。給料ファクタリングのように最高裁が貸付に当たると判断したものも含め、偽装ファクタリングの特徴を理解して見極めることが、安全に資金調達するための鍵です。契約書は控えを受け取って持ち帰り、不明点は署名前に解消し、判断に迷う場合は専門家へ相談しましょう。

この記事の投稿者:

hasegawa

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