
資金繰りの手段としてファクタリングを検討するとき、「ファクタリングは違法ではないか」「利用すると法律に触れるのではないか」という不安を抱く方は少なくありません。結論から言えば、売掛債権を売買する本来のファクタリングは合法的な取引です。
一方で、ファクタリングの名目を借りながら実態は高金利の貸付けを行う偽装ファクタリングや、個人の給与を対象にした給与ファクタリングは、貸金業法や出資法に違反する違法行為として摘発されています。つまり「ファクタリングが違法かどうか」は、その取引の中身が債権の売買なのか、それとも実質的な貸付けなのかによって分かれます。
この記事では、ファクタリングが合法とされる法的根拠、どのようなケースが違法になるのか、最高裁判所の判例、違法業者の見分け方、トラブルに遭ったときの相談先までを、2023年から2026年時点の情報をもとに中立的に整理します。
目次
そもそもファクタリングとは|債権譲渡という仕組み
ファクタリングとは、企業や個人事業主が保有する売掛債権(取引先に対して将来代金を請求できる権利)を、支払期日が来る前にファクタリング会社へ売却し、早期に資金化する金融サービスです。たとえば支払期日が60日後の100万円の売掛金を、手数料を差し引いた金額でファクタリング会社に売ることで、待たずに現金を手にすることができます。
この取引の法的な土台になっているのが、民法上の「債権譲渡」です。民法第466条第1項は、債権は原則として自由に譲り渡すことができると定めています。ファクタリングは、この債権譲渡のルールにのっとって売掛債権を売買する契約であり、お金を貸し借りする「貸付け」とは法的な性質がまったく異なります。貸付けであれば返済義務が生じ、利息や元本を返さなければなりませんが、債権の売買では売掛債権そのものを引き渡す代わりに代金を受け取るだけで、原則として返済という概念は生じません。この違いが、ファクタリングが貸金業の規制を受けない根拠になっています。
ファクタリングには大きく分けて2つの契約形態があります。利用者とファクタリング会社の2社だけで完結する「2社間ファクタリング」と、売掛先(取引先)も加えた「3社間ファクタリング」です。2社間は取引先に債権を売却したことを知られずに資金化できる一方で手数料が高めになりやすく、3社間は取引先の承諾を得る必要がある代わりに手数料を抑えやすい傾向があります。いずれの形態であっても、売掛債権そのものを売買している点は共通しており、この点が貸付けとの本質的な違いになります。
ファクタリングが違法ではない法的根拠
ファクタリングが合法的な取引といえる理由は、主に次の3点に整理できます。
- 民法上の債権譲渡として認められている取引であること。民法第466条が債権の自由な譲渡を認めているため、売掛債権を売買する行為そのものに違法性はありません。
- 貸付けではないため貸金業の登録が不要であること。ファクタリングは債権の売買であってお金を貸す行為ではないため、貸金業法が定める貸金業の登録義務の対象外とされています。
- 利息制限法や出資法の上限金利が適用されないこと。これらの法律は「貸付け」の利息を規制するものであり、債権の売買である本来のファクタリングには手数料という形が適用され、金利規制の直接の対象とはなりません。
金融庁も公式サイトの「ファクタリングに関する注意喚起」の中で、一般に、事業者が保有する売掛債権を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るファクタリングは、合法的な資金調達の手段であると説明しています。したがって、債権の売買として適切に行われるファクタリングを利用すること自体に法的な問題はありません。 ただし、合法であることと、手数料が常に妥当であることは別の問題です。後述するとおり、本来のファクタリングであっても相場を大きく超える手数料が設定されているケースには注意が必要です。
ファクタリングが違法になる3つのケース
ファクタリング自体は合法ですが、次のような取引は「ファクタリング」という名前を使っていても、実態は貸金業にあたる違法行為と判断される可能性があります。代表的な3つのケースを見ていきましょう。
ケース1 給与ファクタリング(個人の給与を対象にした取引)
給与ファクタリングとは、個人(労働者)が勤務先に対して持っている給与を受け取る権利(賃金債権)を給与支払日の前に買い取り、金銭を交付したうえで、給与支払日にその個人を通じて資金を回収する取引です。形式上は債権の譲渡に見えますが、その経済的な実態は給与を担保にした個人への貸付けにほかなりません。金融庁は給与ファクタリングについて、業として行えば貸金業に該当すると明確に注意喚起しています。
ケース2 偽装ファクタリング(実質的な貸付けを売買で偽装する取引)
偽装ファクタリングとは、契約書の体裁は債権の売買にしながら、中身は実質的な貸付けになっているものを指します。代表的なのが、買戻特約や償還請求権(リコース)が付いているケースです。売掛先が倒産したり代金を支払わなかったりした場合に、利用者がファクタリング会社へ無条件に債権を買い戻す義務を負う契約は、回収不能のリスクを利用者が背負っている点で実質的にお金の貸し借りと変わりません。こうした契約は無登録の貸金業として違法と判断されることがあります。 実際の裁判でも、大阪地方裁判所の平成29年3月3日判決をはじめ、買戻特約や連帯保証特約が付いたファクタリング契約を実質的な貸付けと認定し、貸金業法や利息制限法の規制対象とした事例があります。
ケース3 ヤミ金が運営する高金利の取引
貸金業の登録を受けずに、ファクタリングを装って高金利の貸付けを行うヤミ金融業者も存在します。手数料という名目で利息制限法や出資法の上限を大きく超える対価を取っている場合、これは違法な高金利貸付けにあたります。出資法は、業として行う貸付けについて年20パーセントを超える利息を定めることを禁じており、これを大幅に超える実質金利の取引は刑事罰の対象になります。
最高裁が示した判断|給与ファクタリングは貸金業
給与ファクタリングの違法性を決定づけたのが、最高裁判所第三小法廷の令和5年(2023年)2月20日決定です。この判決は、給与ファクタリングが貸金業法第2条第1項および出資法第5条第3項にいう「貸付け」にあたると判断しました。
最高裁は、形式上は給与債権の譲渡という体裁をとっていても、その経済的な実態は金銭の貸付けであると評価しました。これにより、給与債権の買取りという名目で実質的に融資を行う業者は、貸金業の登録をせずに貸金業を営む違法業者(いわゆるヤミ金融)であり、利息や手数料の額にかかわらず、その営業自体が違法であることが明確になりました。日本司法書士会連合会もこの判決を受けて会長声明を出すなど、社会的にも大きな影響を与えました。
この判断の背景には、給与ファクタリングを名乗る業者の悪質な実態があります。報道によれば、ある業者は2018年6月から2020年5月にかけて、全国の約9万7000人に対して約50億円を貸し付け、年利換算で1000パーセントを超えるような手数料によって約13億5000万円の違法な利息を得ていたとして、出資法違反などで摘発されました。こうした被害の広がりが、最高裁の厳格な判断につながったと考えられます。 なお、ここで違法とされているのはあくまで個人の給与を対象にした取引であり、事業者の売掛債権を売買する通常の事業者向けファクタリングとは区別して理解することが重要です。
最高裁の判決以降、給与ファクタリングをうたう業者の営業はほとんど見られなくなったとされていますが、同種の手口が名前を変えて再び現れる可能性もあるため、個人の給与や報酬を「買い取る」と称する取引には引き続き注意が必要です。給与を前借りできるかのような勧誘を受けた場合は、それが実質的な貸付けであり、無登録であれば違法な取引である可能性が高いと考えてください。

違法な業者を見分けるためのチェックポイント
合法なファクタリングと違法な業者を見分けるために、契約前に確認しておきたいポイントを整理します。次のような特徴が見られる場合は、実質的な貸付けや悪質業者である可能性を疑う必要があります。
- 契約に買戻特約や償還請求権が付いている。売掛先が支払わなかったときに利用者が返済を負担する仕組みは、実質的な貸付けと判断されやすい要注意ポイントです。
- 手数料が相場と比べて極端に高い。一般に2社間ファクタリングで売掛金の8パーセントから18パーセント程度、3社間で2パーセントから9パーセント程度が目安とされており、これを大きく超える設定は警戒が必要です。
- 分割での支払いを求めてくる。債権の売買であれば本来は一括での売買が基本であり、分割返済の提案は貸付けの性質を帯びている可能性があります。
- 契約書を交付しない、または内容が不明確である。手数料や契約形態が書面で明示されない取引は避けるべきです。
- 会社の所在地や連絡先がはっきりしない。固定の事務所や固定電話がなく、携帯電話番号だけで営業している業者は慎重に確認しましょう。
これらのうち、特に買戻特約と相場を大きく超える手数料の2点は、違法性を判断するうえで重要な手がかりになります。少しでも不審に感じたら、契約を急がず、専門家に相談することをおすすめします。
金融庁の注意喚起と、トラブル時の相談先
金融庁は「ファクタリングに関する注意喚起」や「多重債務防止のための注意喚起」を公表し、ファクタリングを装った高金利の貸付けを行うヤミ金融業者の存在に注意するよう呼びかけています。高額な手数料を支払うと、かえって資金繰りが悪化して多重債務に陥る危険があり、また悪質な業者から平穏を害するような取立てを受けるおそれがあると指摘しています。 もし違法な業者とのトラブルに巻き込まれた場合や、悪質な取立ての被害に遭った場合は、一人で抱え込まずに次の窓口へ相談してください。
- 金融庁 金融サービス利用者相談室。電話番号は0570-016811(IP電話からは03-5251-6811)で、ファクタリングに関する情報提供や相談を受け付けています。
- 警察。悪質な取立ての被害に遭った場合は、最寄りの警察署や、全国共通の警察相談専用電話「#9110」に相談できます。
- 弁護士・司法書士。契約の有効性や過払い金の返還請求など、法的な対応が必要な場合は、各地の弁護士会や司法書士会、法テラス(日本司法支援センター)に相談するとよいでしょう。
前述の大阪地裁判決のように、実質的な貸付けと認定された違法なファクタリング契約については、過払い金の返還を求められる可能性もあります。被害が疑われる場合は早めに専門家の助言を受けることが大切です。
安全にファクタリングを利用するためのポイント
合法的なファクタリングを安心して活用するために、利用者側で意識しておきたいことをまとめます。
- 契約形態を確認する。買戻特約や償還請求権が付いていない、いわゆるノンリコース(償還請求権なし)の債権売買契約であるかを確認しましょう。
- 手数料の内訳を書面で確認する。手数料率や差し引かれる金額が明確に記載された契約書を必ず受け取り、相場と照らし合わせて判断します。
- 会社の実態を確認する。所在地や代表者、運営会社の情報が公開されているか、固定の連絡先があるかを確認します。
- 複数社を比較する。1社だけで決めず、複数のファクタリング会社の条件を比べて、不当に高い手数料を避けるようにします。
なお、ファクタリングと混同されやすい資金調達手段として、OLTAが提供するクラウドファクタリングのように、オンラインで完結する事業者向けの債権買取サービスもあります。サービスの仕組みや運営会社の情報は、公式サイトで確認することができます。事業者の資金繰りに関する情報はOLTAなどで確認できます。 また、請求書の発行や支払いに関する基礎知識については、INVOYのメディアでも幅広く解説されています。資金繰りやファクタリングを検討する際の参考にしてください。
よくある質問
ファクタリングを利用すると違法になりますか
いいえ。事業者が保有する売掛債権を売買する本来のファクタリングは合法であり、利用者が違法に問われることはありません。違法とされるのは、給与ファクタリングや、買戻特約付きの偽装ファクタリングなど、実質的に貸付けにあたる取引を無登録で行う業者側の行為です。
給与ファクタリングはなぜ違法なのですか
個人の給与(賃金債権)を対象にした給与ファクタリングは、形式は債権譲渡でも実態は給与を担保にした個人への貸付けと評価されるためです。最高裁判所は令和5年(2023年)2月20日の判決で、給与ファクタリングを貸金業法および出資法上の「貸付け」にあたると判断しました。
手数料が高いだけで違法になりますか
債権の売買である本来のファクタリングには利息制限法の上限金利は直接適用されません。ただし、相場を大きく超える手数料は、実質的な貸付けであることを示すサインの一つとされており、買戻特約など他の要素と合わせて違法と判断される場合があります。手数料が極端に高い取引は避けるのが賢明です。
違法な業者と契約してしまった場合はどうすればよいですか
まずは契約や取立ての記録を保管したうえで、金融庁金融サービス利用者相談室(0570-016811)や、悪質な取立てがある場合は警察(#9110)に相談してください。契約の有効性や過払い金返還の検討が必要な場合は、弁護士・司法書士や法テラスに相談するとよいでしょう。
まとめ
ファクタリングが違法かどうかは、その取引の実態が「債権の売買」なのか「実質的な貸付け」なのかによって決まります。事業者の売掛債権を売買する本来のファクタリングは、民法の債権譲渡に基づく合法的な資金調達手段であり、貸金業の登録も金利規制の対象にもなりません。一方で、個人の給与を対象にした給与ファクタリングや、買戻特約付きの偽装ファクタリング、ヤミ金による高金利取引は違法であり、最高裁判所も令和5年(2023年)の判決で給与ファクタリングを貸金業上の貸付けと明確に位置づけました。利用にあたっては、契約形態や手数料、運営会社の実態を確認し、買戻特約や相場を超える手数料といった危険なサインを見逃さないことが重要です。不安やトラブルがあれば、金融庁・警察・弁護士などの相談先を活用し、安全に資金調達を進めましょう。



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