
ファクタリングは売掛債権を活用した資金調達・リスク管理の手法ですが、ひとくちにファクタリングといっても、その方式は一つではありません。売掛金を売却して現金化する買取型から、取引先の倒産に備える保証型、医療機関だけが使える診療報酬・介護報酬ファクタリング、海外取引に対応する国際ファクタリングまで、目的や取引形態に応じて多様なファクタリング方式が存在します。
どのファクタリング方式を選ぶかによって、手数料の相場、入金までのスピード、取引先に知られるかどうか、対象にできる債権の種類が大きく変わります。自社の状況に合わない方式を選んでしまうと、本来なら数パーセントで済む手数料を二桁支払うことになったり、資金調達できないケースもあります。この記事では、主要なファクタリング方式を体系的に整理し、それぞれの定義・特徴・手数料相場・使い分けを比較できる形で網羅的に解説します。資金繰りの改善や貸倒れ対策の選択肢を検討している経営者・経理担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ファクタリング方式は大きく2つの軸で分類できる
ファクタリングの方式は多岐にわたりますが、混乱しないためには2つの分類軸を押さえることが重要です。1つ目は「何を目的とするか」という機能による分類で、これにより買取型と保証型に分かれます。2つ目は「誰が契約に関わるか」という当事者による分類で、これにより2社間と3社間に分かれます。
さらに、対象とする債権の種類や利用する業界によって、一括ファクタリング、リバースファクタリング、診療報酬ファクタリング、注文書ファクタリング、国際ファクタリングといった派生的な方式が存在します。これらは買取型・保証型と2社間・3社間の組み合わせの上に、特定の用途を加えたものと理解すると整理しやすくなります。以下、それぞれの方式を順番に見ていきましょう。
- 機能による分類:買取型ファクタリング/保証型ファクタリング
- 当事者による分類:2社間ファクタリング/3社間ファクタリング
- 用途・債権による分類:一括ファクタリング/リバースファクタリング/診療報酬・介護報酬ファクタリング/注文書ファクタリング/国際ファクタリング
買取型ファクタリングと保証型ファクタリングの違い
ファクタリングを機能面で大別すると、買取型と保証型の2種類になります。両者は名前こそ似ていますが、目的がまったく異なります。買取型は資金調達のための手法であり、保証型は貸倒れリスク対策のための手法です。
買取型ファクタリング
買取型ファクタリングは、保有している売掛債権をファクタリング会社に売却し、本来の支払期日よりも前に現金化する方式です。一般に「ファクタリング」というと、この買取型を指すことがほとんどです。資金繰りを改善したい、急な支払いに備えたいといった資金調達ニーズに応えるもので、借入ではなく債権の売買にあたるため、負債を増やさずに資金を確保できる点が特徴です。
買取型では、売掛金の全額がそのまま入金されるわけではなく、手数料が差し引かれます。また「掛け目」と呼ばれる買取率が設定される場合があり、通常は売掛金額の75〜90%程度が目安とされます。掛け目で留保された分は、売掛金が無事に回収された後に精算されるのが一般的です。
保証型ファクタリング
保証型ファクタリングは、取引先による代金の支払いをファクタリング会社に保証してもらう方式です。万が一、売掛先が倒産したり支払い不能に陥った場合に、ファクタリング会社から保証金が支払われる仕組みで、貸倒れによる損失を回避することを目的としています。資金を前倒しで受け取るのではなく、回収不能リスクをヘッジするための方式である点が買取型との決定的な違いです。
保証型では保証料を支払う必要があり、その相場は保証額の1〜8%程度、一般的には3〜8%程度とされています。保証料率は売掛先の信用力によって変動し、信用力が高い取引先ほど料率は低くなります。新規取引先との取引拡大や、与信管理の負担を軽減したい場合に有効な方式です。
- 買取型:売掛金を売却して早期現金化する。目的は資金調達。手数料は売掛金額に対して発生
- 保証型:売掛金の回収を保証してもらう。目的は貸倒れリスク回避。保証料が発生
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違い
買取型ファクタリングは、契約に関わる当事者の数によってさらに2社間と3社間に分かれます。この違いは、取引先への通知の有無、手数料の高さ、入金スピードに直結するため、買取型を利用する際に最も重要な選択ポイントとなります。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングは、利用者(売掛債権を持つ会社)とファクタリング会社の2者だけで契約を結ぶ方式です。売掛先は契約に関与せず、債権譲渡の事実が取引先に知られることはありません。取引先との関係に影響を与えずに資金調達できるため、多くの中小企業に利用されています。
2社間方式では、売掛先からの入金はいったん利用者の口座に入り、その後に利用者がファクタリング会社へ送金する流れになります。ファクタリング会社にとっては資金が回収できないリスクが高くなるため、手数料は高めに設定される傾向があります。相場は売掛金額の8〜18%程度、サービスによっては10〜20%程度になることもあります。一方で売掛先の承諾が不要なため手続きが速く、最短即日での入金も可能です。
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングは、利用者・ファクタリング会社・売掛先の3者で契約を結ぶ方式です。売掛債権を譲渡することについて売掛先に通知し、承諾を得る必要があります。ファクタリング会社は売掛先から直接代金を回収できるため、未回収リスクが大幅に下がり、手数料は低く抑えられます。相場は1〜5%程度、サービスによっては2〜9%程度です。
3社間方式のデメリットは、売掛先の承諾を得る手続きが必要なため、入金まで数日から1週間程度かかる点です。また、債権を譲渡したことが取引先に知られるため、資金繰りに不安を抱えていると受け取られないか懸念する声もあります。手数料を最優先するなら3社間、スピードと秘匿性を重視するなら2社間という使い分けになります。
- 2社間:売掛先への通知不要。最短即日。手数料は8〜18%程度と高め
- 3社間:売掛先への通知・承諾が必要。入金まで数日〜1週間。手数料は1〜5%程度と低い
一括ファクタリングとは
一括ファクタリングは、支払企業(発注側)が従来の手形による支払いをやめ、その代わりに納入企業が保有する売掛債権をファクタリング会社が買い取って現金化する決済システムです。支払企業・納入企業・ファクタリング会社(多くは銀行系)の3者で運用され、手形の発行・管理にかかる事務負担や印紙税を削減し、決済事務を合理化することを目的としています。
納入企業にとっては、ファクタリング会社に手数料を支払うことで支払期日前に売掛金を現金化できるメリットがあります。手形のように紛失・盗難のリスクがなく、裏書譲渡の手間も不要です。なお、一括決済方式には債権譲渡担保方式、併存的債権引受方式、一括信託方式、ファクタリング方式の主に4種類があり、一括ファクタリングはこのうちファクタリング方式に該当します。電子記録債権を用いる「でんさい」も似た役割を果たしますが、でんさいは支払期日当日の決済が基本である点が一括ファクタリングとの違いです。
リバースファクタリングとは
リバースファクタリングは、これまで紹介した方式とは主導する立場が逆になるユニークな方式です。通常のファクタリングは売掛金を受け取る受注企業(債権者)が主導して早期資金化を図りますが、リバースファクタリングは買掛金を支払う発注企業(債務者)が主導します。発注企業がファクタリング会社に依頼し、外注先(下請け企業)への買掛金の支払いを一時的に立て替えてもらう仕組みです。
発注企業にとっての主な目的は支払サイトの延長です。ファクタリング会社が先に外注先へ支払いを行い、発注企業は後日ファクタリング会社へ返済するため、支払いまでの猶予を確保できます。一方、外注先は希望すれば早期に代金を受け取れるため、発注企業と受注企業の双方に資金繰り改善のメリットがあります。サプライチェーン全体の安定化につながる方式として注目されています。
- 通常のファクタリング:売掛金を持つ受注企業が主導。目的は売掛金の早期現金化
- リバースファクタリング:買掛金を持つ発注企業が主導。目的は支払サイトの延長

医療・介護報酬ファクタリングとは
医療ファクタリング(診療報酬ファクタリング)・介護報酬ファクタリング・調剤報酬ファクタリングは、病院・クリニック・調剤薬局・介護事業者などが、社会保険診療報酬支払基金(社保)や国民健康保険団体連合会(国保連)に対して持つ報酬債権を譲渡して早期現金化する方式です。
医療機関がサービスを提供してから、保険負担分の報酬が実際に入金されるまでには通常2〜3ヶ月程度かかります。このタイムラグを埋め、設備投資や人件費などの運転資金を確保するために利用されます。支払元が公的機関であり貸倒れリスクが極めて低いため、手数料は他のファクタリング方式と比べて大幅に低く、月0.2〜0.8%程度と非常に低い水準で利用できるのが大きな特徴です。
この方式は、医療機関・ファクタリング会社・国保連や社保の3者が関わる3社間ファクタリングの形で実施されるのが基本です。譲渡額の0.2〜0.8%といった低料率に加え、初回手数料や月額利用料が別途設定されるサービスもあります。安定した報酬債権を持つ医療・介護分野ならではの、低コストな資金調達手段といえます。
注文書ファクタリングとは
注文書ファクタリング(POファイナンス)は、まだ請求書が発行されていない段階、すなわち取引先から注文書・発注書を受け取った時点で資金化できる方式です。一般的な請求書ファクタリングが納品後の確定債権を対象とするのに対し、注文書ファクタリングは受注した段階で将来発生する見込みの売掛金をもとに資金を調達できる点が大きく異なります。
案件を受注したものの、材料費や人件費などの先行コストが必要になる建設業や製造業などで活用されます。納品前の段階で資金化できる利便性が高い一方で、まだ売上が確定していない債権を扱うため、ファクタリング会社のリスクは大きくなります。そのため手数料は従来のファクタリングよりも2〜5%程度高めに設定されることが多い点に注意が必要です。
国際ファクタリングとは
国際ファクタリングは、海外企業との取引で発生した売掛金を、ファクタリング会社に保証してもらう方式です。輸出取引では取引先が海外にあるため信用調査が難しく、代金の回収に不安が伴います。そこで輸出業者は日本のファクタリング会社に輸入業者の信用保証の引受けを依頼し、海外の提携ファクタリング会社と連携して与信枠を設定します。保証期間は一般に180日以内の短期が主体です。
国際ファクタリングの主な目的は、取引先の倒産や支払い遅延による貸倒れリスクをなくすことにあります。信用状(L/C)を用いた決済と比べて手続きが簡素で、銀行を介さずに与信を確保できる点がメリットです。費用は原則として輸出者が負担し、保証料率はインボイス金額に対して所定の料率で設定されます。海外取引を行う輸出企業にとって、回収リスクを抑えながら取引を進めるための有効な選択肢です。
ファクタリング方式の選び方
これまで紹介してきた方式は、目的によって選ぶべきものが明確に分かれます。自社の課題が「資金調達」なのか「リスク回避」なのか、まずそこを切り分けることが第一歩です。
- とにかく早く資金が欲しい:2社間の買取型ファクタリング。最短即日入金が可能だが手数料は高め
- 手数料を最優先で抑えたい:3社間の買取型ファクタリング。取引先の承諾は必要だが料率が低い
- 取引先の倒産に備えたい:保証型ファクタリングや国際ファクタリングで貸倒れリスクをヘッジ
- 医療・介護事業を営んでいる:診療報酬・介護報酬ファクタリングなら月0.2〜0.8%程度の低料率
- 納品前に先行資金が必要:注文書ファクタリングで受注段階から資金化
- 自社が発注側で支払いを調整したい:リバースファクタリングで支払サイトを延長
どの方式を選ぶ場合でも、複数のファクタリング会社から見積もりを取り、手数料や入金スピード、対応可能な債権の種類を比較することが、コストを抑えるうえで欠かせません。OLTAではオンライン完結型のクラウドファクタリングを提供しており、サービスの詳細はOLTAで確認できます。
よくある質問
ファクタリング方式の中で最も手数料が安いのはどれですか
買取型の中では3社間ファクタリングが安く、相場は1〜5%程度です。さらに低いのが医療・介護分野の診療報酬・介護報酬ファクタリングで、支払元が公的機関で貸倒れリスクが低いため月0.2〜0.8%程度で利用できます。一方、2社間ファクタリングは8〜18%程度と高めで、注文書ファクタリングはそれよりさらに2〜5%程度上乗せされる傾向があります。
取引先に知られずにファクタリングを利用できますか
2社間ファクタリングであれば、売掛先への通知や承諾が不要なため、取引先に知られずに利用できます。逆に3社間ファクタリングや診療報酬ファクタリングは、売掛先(または公的機関)への通知・承諾が前提となるため、債権譲渡の事実が相手に伝わります。秘匿性を重視する場合は2社間方式を選ぶことになります。
ファクタリングと借入(融資)は何が違いますか
ファクタリングは売掛債権の売買であり、借入ではありません。そのため負債が増えず、信用情報にも影響しないのが特徴です。買取型は審査で売掛先の信用力が重視されるため、利用者自身の業績が芳しくなくても利用できるケースがあります。一方で、手数料は融資の金利と比べると割高になりやすい点には注意が必要です。
どの方式でも即日で資金化できますか
即日資金化が可能なのは主に2社間の買取型ファクタリングです。3社間方式や診療報酬ファクタリングは売掛先・公的機関の承諾や確認が必要なため、入金まで数日から1週間程度かかります。保証型ファクタリングや国際ファクタリングはそもそも即時の資金調達ではなく、リスク保証を目的とした方式である点に留意してください。
まとめ
ファクタリング方式は、機能による分類(買取型・保証型)、当事者による分類(2社間・3社間)、用途による分類(一括・リバース・医療介護・注文書・国際)という3つの観点で整理できます。買取型は資金調達、保証型は貸倒れ対策が目的であり、買取型の中でも2社間は最短即日だが手数料8〜18%程度と高め、3社間は1〜5%程度と低いがやや時間がかかります。診療報酬ファクタリングは月0.2〜0.8%程度と最も低料率、注文書ファクタリングは納品前に資金化できる反面2〜5%程度割高になる、といった具合に、それぞれの方式に明確な特徴があります。
重要なのは、自社の課題が資金調達なのかリスク回避なのかを見極め、入金スピード・手数料・秘匿性・対象債権の優先順位に応じて最適な方式を選ぶことです。複数社から見積もりを取って比較し、納得のいく条件で資金繰りを改善しましょう。請求書発行やカード払いを含めたバックオフィスの効率化についてはINVOYもあわせて参考にしてください。



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