
固定資産の耐用年数を正しく把握できれば、減価償却費を正確に計上して法人税の節税効果を最大限に引き出せます。この記事を読めば、法定耐用年数の仕組み・主要資産の年数一覧・定額法・定率法の計算手順・中古資産の特例まで網羅的に理解できます。税理士に任せっきりだった方も、本記事のステップ通りに計算すれば自社の減価償却スケジュールを自分で確認できるようになります。
目次
耐用年数とは何か|法定耐用年数の基本
耐用年数とは、固定資産が事業に使用できる期間として税法上定められた年数です。減価償却の計算に使用し、資産の取得価額を耐用年数に応じて費用配分します。
法定耐用年数の定義と根拠
耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(耐用年数省令)によって定められています。資産の種類・構造・用途ごとに細かく区分されており、事業者が独自に設定することはできません(一部例外を除く)。
法定耐用年数を使用する目的
・企業間で減価償却費の計算方法を統一するため
・税務上の恣意的な費用操作を防ぐため
・財務諸表の比較可能性を確保するため
会計(企業会計)では合理的な見積もりによる経済的耐用年数を使用できますが、税務申告(法人税・所得税)では法定耐用年数を使用する必要があります。
減価償却と耐用年数の関係
減価償却とは、固定資産の取得価額を耐用年数に応じて毎期費用計上することです。
例:取得価額100万円・耐用年数5年の機械の場合
→ 毎年20万円(定額法の場合)を減価償却費として費用計上
耐用年数が長いと年間の費用計上額が少なく、短いと多くなります。耐用年数の設定は損益計算に大きな影響を与えます。
耐用年数が終了(償却完了)した資産は、帳簿上の価値が1円(備忘価額)になりますが、実際には引き続き事業で使用できます。
主要固定資産の法定耐用年数一覧
実務でよく使われる固定資産の法定耐用年数を種類別にまとめます。
建物・建物附属設備
建物の耐用年数は構造によって大きく異なります。
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造(事務所用):50年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造(住宅用):47年
金属造(骨格肉厚4mm超・事務所用):38年
金属造(骨格肉厚3mm以下・事務所用):19年
木造・合成樹脂造(事務所用):24年
木造・合成樹脂造(住宅用):22年
建物附属設備(内装・設備等)の例:
電気設備(蓄電池電源設備を除く):15年
給排水・衛生設備・ガス設備:15年
エレベーター:17年
冷暖房設備(冷凍機の出力が22kw以下):13年
機械・装置・工具
機械・装置は業種・用途によって耐用年数が定められています。
食料品製造業用設備:10年
飲料・たばこ・飼料製造業用設備:10年
繊維工業用設備:7年
化学工業用設備:8年
金属製品製造業用設備:10年
電子部品・デバイス製造業用設備:8年
情報通信機械器具製造業用設備:8年
工具の例:
測定工具・検査工具:5年
切削工具:2年
金型:2〜10年(金属製品用金型は3年)
車両・パソコン・ソフトウェア
実務でよく登場するIT機器や車両の耐用年数です。
普通自動車:6年
軽自動車:4年
トラック(小型・2t以下):3年
オートバイ:3年
パソコン・サーバー:4年
複合機・コピー機:5年
スマートフォン・タブレット:2〜4年(実務上は4年が多い)
ソフトウェア:
・サーバー用OS等(市販品):5年
・その他ソフトウェア(自社利用):5年
・自社制作ソフトウェア:5年
家具・備品の例:
机・椅子・棚(金属製):15年
机・椅子・棚(木製):8年
減価償却の計算方法|定額法と定率法
減価償却の計算方法には主に「定額法」と「定率法」があります。
定額法の計算方法
定額法は毎期同額の減価償却費を計上する方法です。計算が単純で、利益計画が立てやすい特徴があります。
【定額法の計算式】
減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率
定額法の償却率 = 1 ÷ 耐用年数
【具体例】
取得価額:300万円、耐用年数:5年の場合
償却率:1 ÷ 5 = 0.200
年間減価償却費:300万円 × 0.200 = 60万円
5年間同額で計上します。
建物・建物附属設備・無形固定資産・ソフトウェアは定額法のみが認められています。その他の資産は定額法・定率法どちらかを選択できます(届出不要で定率法が法定の計算方法)。
定率法の計算方法
定率法は期首帳簿価額に一定の率(定率法償却率)を掛けて減価償却費を計算する方法です。初期に多く費用計上でき、節税効果が早期に得られます。
【定率法の計算式(200%定率法)】
減価償却費 = 期首帳簿価額 × 定率法償却率
定率法償却率 = 1 ÷ 耐用年数 × 2(200%定率法の場合)
【具体例】
取得価額:300万円、耐用年数:5年の場合
定率法償却率:1 ÷ 5 × 2 = 0.400
1年目:300万円 × 0.400 = 120万円
2年目:(300-120)万円 × 0.400 = 72万円
3年目:(180-72)万円 × 0.400 = 43.2万円
…と減少していく
定率法は期中から使用開始の場合、月数按分が必要です。
中古資産の耐用年数の計算
中古資産を取得した場合は、法定耐用年数ではなく、残存耐用年数を計算して使用します。
中古資産の耐用年数計算式
中古資産の見積耐用年数は以下の式で計算します。
【法定耐用年数の全部を経過した資産】
耐用年数 = 法定耐用年数 × 0.2
(端数切捨て、最低2年)
【法定耐用年数の一部を経過した資産】
耐用年数 = 法定耐用年数 − 経過年数 + 経過年数 × 0.2
(端数切捨て、最低2年)
【具体例:法定耐用年数6年の自動車を3年落ちで購入した場合】
6年 − 3年 + 3年 × 0.2 = 3 + 0.6 = 3.6年 → 3年(端数切捨て)
中古資産は短い耐用年数で早期に費用計上できるため、節税効果があります。ただし経過年数が不明の場合は法定耐用年数の20%を使用します。
中古資産購入時の節税活用
中古資産を活用した節税では、短い耐用年数(最短2年)で取得価額を全額費用化できるケースがあります。
例:築30年の木造事務所(法定耐用年数24年)を取得した場合
法定耐用年数の全部を経過しているため:24年 × 0.2 = 4.8年 → 4年
例:築10年の鉄骨鉄筋コンクリート造建物(法定耐用年数50年)
50年 − 10年 + 10年 × 0.2 = 40 + 2 = 42年
ただし、節税目的の恣意的な中古資産購入は税務上問題になる場合があります。事業目的の正当な取得であることが前提です。
少額資産・一括償却資産の特例
取得価額が少額の資産については、特例を使って一括で費用計上できます。
少額減価償却資産の特例(30万円未満)
中小企業者等(資本金1億円以下の法人等)は、取得価額が30万円未満の減価償却資産について、取得した事業年度に全額損金算入できます(少額減価償却資産の特例)。
適用要件:
・青色申告法人であること
・資本金または出資金が1億円以下の中小企業者等であること
・年間合計300万円まで(超過分は通常の減価償却)
この特例を使えば、30万円未満のパソコン・工具・備品等を購入した年度に全額費用化でき、節税効果があります。
一括償却資産(20万円未満)
取得価額が20万円未満の資産は「一括償却資産」として処理できます。3年間均等に費用計上する方法で、企業規模を問わず適用できます。
例:取得価額15万円のパソコンを購入した場合
毎年5万円(15万円 ÷ 3年)を減価償却費として計上
一括償却資産のメリット
・償却方法・耐用年数の管理が不要
・固定資産台帳への個別記載が不要(一括管理)
・中小企業者等でなくても適用可能
30万円未満の少額減価償却資産特例と一括償却資産は選択適用できます。どちらが有利かは状況によって異なります。
まとめ
固定資産の耐用年数と減価償却の計算方法について解説しました。
法定耐用年数は資産の種類・構造・用途によって定められており、税務申告では必ずこれを使用します。減価償却の計算方法は定額法と定率法があり、建物等は定額法のみです。中古資産は簡便法で計算した短い耐用年数を使えるため節税効果があります。少額資産は特例を使って早期費用化を検討しましょう。
正確な耐用年数の把握と適切な減価償却の処理は、適正な利益計算と節税の両面で重要です。不明点は税理士に相談して正確に処理してください。耐用年数の変更と修正申告
誤った耐用年数を使用して申告していた場合、修正申告または更正の請求が必要になる場合があります。
耐用年数の誤りが発覚した場合の対処法
①過大計上(短い耐用年数を使用):減価償却費を多く計上していた場合
→ 税務当局から修正申告を求められることがある
→ 過大計上した費用に対して過少申告加算税・延滞税が発生する可能性
②過少計上(長い耐用年数を使用):減価償却費を少なく計上していた場合
→ 更正の請求を行って過払い税金の還付を求められる
→ 還付を受けられるのは申告期限から5年以内
耐用年数は一度採用したら変更できないわけではありませんが、正当な事由がなければ変更は認められません。会計上と税務上で異なる耐用年数を使用している場合は、申告書の「別表十六」で調整します。
耐用年数省令は改正されることがあります。例えば、平成19年の税制改正で定率法が250%定率法から200%定率法に変更されました。改正時の経過措置や旧耐用年数との調整に注意が必要です。
無形固定資産・ソフトウェアの耐用年数
有形固定資産だけでなく無形固定資産やソフトウェアの耐用年数も重要です。デジタル化が進む現代では、ソフトウェアへの投資が増加しており、正確な処理が求められます。
ソフトウェアの耐用年数
・複写して販売するための原本(市販ソフト):3年
・研究開発用ソフトウェア:3年
・その他のソフトウェア(自社利用・業務用):5年
注意点:SaaS(クラウドサービス)の月次・年次利用料は減価償却の対象外で、支払い時に費用(役務提供費・ソフトウェア利用料等)として計上します。自社サーバーへのオンプレミス型システムはソフトウェアとして資産計上・減価償却します。
無形固定資産の代表的な耐用年数
・特許権:8年
・実用新案権:5年
・商標権:10年
・漁業権:10年
・ダム使用権:55年
・のれん:5年(会計上)※税務上の取り扱いは異なる
のれんは会計上5年以内の定額償却が求められますが、税務上は原則として損金算入できません(M&Aで取得した営業権・のれんは個別に検討が必要)。

固定資産台帳の管理と実務ポイント
減価償却を正確に行うためには固定資産台帳の整備が不可欠です。実務での管理ポイントを解説します。
固定資産台帳に記録すべき情報
・資産名称・種類
・取得日・取得価額
・耐用年数・償却方法
・事業年度ごとの減価償却費・期末帳簿価額
・除却・売却日と金額
年次チェック項目
①現物確認:帳簿に記録されている資産が実際に存在するか
②使用状況確認:廃棄・除却した資産が台帳に残っていないか
③追加資産の計上漏れ確認:当期取得した資産が全て計上されているか
④少額資産・一括償却資産の整理
固定資産台帳の整備が不十分だと、税務調査で償却超過・過大計上の指摘を受けるリスクがあります。会計ソフト(MF・弥生・勘定奉行等)の固定資産管理機能を活用して正確に管理しましょう。
中小企業では固定資産管理を担当者が手動でExcel管理しているケースも多いですが、入力ミスや更新漏れが生じやすいため、専用ソフトまたは会計ソフトの固定資産機能の活用を推奨します。
減価償却の節税シミュレーション
定額法と定率法のどちらが有利か、具体的な数値でシミュレーションして比較します。
【条件】
取得価額:500万円、耐用年数:5年、法人税率:30%
定額法の場合(償却率0.200):
1年目:100万円の費用計上 → 節税額30万円
2年目:100万円 → 30万円
3年目:100万円 → 30万円
4年目:100万円 → 30万円
5年目:100万円 → 30万円(合計節税額150万円)
定率法の場合(200%定率法・償却率0.400):
1年目:200万円 → 節税額60万円
2年目:120万円 → 36万円
3年目:72万円 → 21.6万円
4年目:43.2万円 → 12.96万円
5年目:残額64.8万円 → 19.44万円
(合計節税額150万円:5年間合計は同じ)
結論:5年間の節税総額は定額法も定率法も同じです。ただし定率法は初年度の節税効果が高く、資金繰りを早期に改善できます。法人税率が将来下がることが見込まれる場合は、定率法で今期に多く費用計上した方が有利です。
業種や事業の状況に応じて、税理士と相談の上最適な方法を選択してください。
資本的支出と修繕費|耐用年数との関係
固定資産のメンテナンス費用が「資本的支出」か「修繕費」かの判断は、耐用年数にも影響する重要な問題です。
資本的支出:固定資産の価値を高めたり、耐用年数を延長する支出
→ 固定資産に加算して減価償却(耐用年数は元の資産に準じる)
修繕費:固定資産を現状に復帰させる支出(維持管理・修繕)
→ 支出時に全額費用計上
判断の基準
①20万円未満の支出:修繕費として処理可能
②60万円未満かつ前期末帳簿価額の10%未満の支出:修繕費として処理可能
③上記以外:内容に応じて判断(原状回復→修繕費・機能向上→資本的支出)
具体例
・事務所の壁紙張り替え(原状回復)→ 修繕費
・事務所の間仕切り追加(価値向上)→ 資本的支出
・エアコンの修理(部品交換)→ 修繕費
・エアコンを省エネ新型に全取替え(機能向上)→ 資本的支出
資本的支出と修繕費の区分は税務調査でも頻繁に争点になります。判断が難しい場合は税理士に相談し、根拠を記録に残しておきましょう。
減価償却と消費税インボイス対応
固定資産を購入する際の消費税・インボイス対応についても確認が必要です。
固定資産取得時の消費税処理
固定資産の購入価額に含まれる消費税は、仕入れ税額控除の対象です(課税事業者の場合)。インボイス制度の導入以降、適格請求書(インボイス)の保存が控除要件です。
取得価額への消費税の算入
税込み経理方式を採用している場合は、消費税含む金額で固定資産を計上します。税抜き経理方式の場合は消費税を除いた金額で固定資産を計上し、消費税は別途処理します。どちらの方式を採用するかによって取得価額・減価償却費の計算が変わります。
少額資産の判定と消費税
少額減価償却資産(30万円未満)・一括償却資産(20万円未満)・普通資産(10万円未満)の判定は取得価額で行います。税込み経理の場合は税込み金額、税抜き経理の場合は税抜き金額で判定します。
例:税込み価格10万8,000円(本体10万円+消費税8,000円)の工具
・税抜き経理:本体10万円 → 10万円未満には該当しないため少額特例は使えない
・税込み経理:10万8,000円 → 10万円以上のため少額特例は使えない
→ どちらでも通常の減価償却対象
消費税の処理方式は事業開始時や事業年度開始前に選択し、継続適用が原則です。
よくある質問Q&A
Q:パソコンを3年で買い替えているのに、耐用年数4年で償却しないといけないですか?
A:税務上の耐用年数(法定耐用年数)は経済的な実際の使用年数と異なる場合があります。税務申告では法定耐用年数4年を使用しなければなりません。ただし30万円未満なら少額減価償却資産として一括費用計上できます。
Q:中古で購入したスマートフォンの耐用年数は何年ですか?
A:スマートフォンの法定耐用年数は原則4年です。中古の場合は簡便法で計算します。法定耐用年数4年で、例えば2年使用済みの中古なら:4年-2年+2年×0.2=2.4年→2年(端数切捨て)となります。
Q:建物の一部を改築した場合の耐用年数は?
A:既存建物の一部を改築した場合、改築部分は「既存建物の耐用年数と同じ」または「改築後の残存耐用年数」で償却します。増築の場合は増築部分を独立した資産として扱い、構造に応じた耐用年数を適用します。
Q:土地の耐用年数は?
A:土地は非減価償却資産です。土地は価値が消耗しないとされるため、減価償却は行いません。ただし土地の取得に付随する測量費・仲介手数料等は土地の取得価額に含めます。
固定資産の除却・売却時の処理と耐用年数
固定資産を耐用年数途中で除却・売却する場合の処理も重要です。
固定資産の除却(廃棄)の場合
帳簿価額(取得価額-減価償却累計額)が残っている状態で廃棄する場合は「固定資産除却損」として損失計上します。
例:取得価額100万円・耐用年数5年の備品を3年経過後に廃棄(定額法・残存帳簿価額40万円)
借方:固定資産除却損 400,000円
貸方:備品 1,000,000円(原価)
借方:減価償却累計額 600,000円
固定資産の売却の場合
売却価格と帳簿価額の差額を「固定資産売却益」または「固定資産売却損」として処理します。
例:上記の備品を35万円で売却した場合
借方:現金 350,000円
借方:固定資産売却損 50,000円(40万円-35万円)
貸方:備品 1,000,000円
借方:減価償却累計額 600,000円
耐用年数超過後も使用する資産の扱い
法定耐用年数が終了して帳簿価額が備忘価額(1円)になった後も、実際の業務に使い続ける固定資産は、引き続き固定資産台帳に記載して管理します。追加の減価償却費は発生しませんが、現物が存在する限り台帳から消去しないことが管理上の原則です。



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