ファクタリングの基礎知識

債権譲渡と消費税の関係を徹底解説|金銭債権の譲渡が非課税となる根拠とファクタリング手数料の取り扱い

公開日:

債権譲渡 消費税

売掛金などの金銭債権を譲渡したり、ファクタリングを利用して資金調達を行ったりした際に、「この取引に消費税はかかるのか」「受け取った対価や支払った手数料はどう経理処理すればよいのか」と悩む経理担当者は少なくありません。商品やサービスの売買とは性質が異なる債権の取引は、消費税の扱いが直感的に理解しにくく、誤った税区分で処理してしまうと申告内容に影響を及ぼすおそれがあります。この記事では、金銭債権の譲渡が消費税法上どのように位置づけられているのか、ファクタリング手数料は課税されるのか、課税売上割合の計算にどう影響するのか、そしてインボイス制度との関係はどうなるのかを、国税庁の見解や条文を根拠としながら順を追って解説します。なお、消費税の取り扱いは取引の実態によって判断が分かれる場面があるため、個別具体的なケースについては必ず顧問税理士や所轄の税務署に確認することをおすすめします。

金銭債権の譲渡は消費税法上「非課税取引」が原則

結論から述べると、売掛金や貸付金といった金銭債権を譲渡する取引は、消費税法上「非課税取引」として扱われるのが原則です。消費税は本来、国内で事業者が対価を得て行う資産の譲渡や役務の提供に対して課されるものですが、金銭債権の譲渡はその性質上、消費という概念になじまないため課税の対象から外されています。つまり、債権という財産的価値が買い手に移転するだけで、何かを「消費」しているわけではない、という考え方が根底にあります。

非課税となる法的根拠は別表第二

金銭債権の譲渡が非課税とされる根拠は、消費税法別表第二(令和元年10月の改正前は別表第一)にあります。同表は消費税を課さない取引を列挙したもので、その中で「有価証券その他これに類するものの譲渡」が非課税取引として定められています。金銭債権は、この「有価証券その他これに類するもの」に含まれると整理されており、結果として金銭債権の譲渡には消費税が課されません。土地の譲渡や貸付け、社会保険医療、住宅の貸付けなどと並び、資本の移転や金融取引に近い性質を持つ取引として非課税の枠組みに位置づけられている点が特徴です。

非課税取引と不課税取引・免税取引の違い

消費税の世界では「非課税」「不課税(課税対象外)」「免税(0%課税)」という似て非なる区分があり、これらを混同すると経理処理を誤ります。金銭債権の譲渡はあくまで「非課税取引」であり、消費税の課税対象となる取引でありながら政策的に税を課さないものとして扱われる点を押さえておく必要があります。一方、不課税取引は対価性がないなどそもそも消費税の課税の枠組みに入らない取引を指し、免税取引は輸出取引のように税率0%が適用されるものを指します。この三つの区分は、消費税の申告書を作成する際の集計区分にも直結するため、債権譲渡の取引が発生したときには、まずどの区分に該当するのかを明確にしておくことが正確な処理の出発点になります。金銭債権の譲渡が「非課税」に分類されることは、後述する課税売上割合の計算において重要な意味を持ちます。

  • 非課税取引:課税対象だが政策的配慮で税を課さない取引。金銭債権・有価証券の譲渡、土地の譲渡などが該当する。
  • 不課税取引(課税対象外):対価性がないなど消費税の課税の枠組みに入らない取引。配当金の受け取りや寄附金などが該当する。
  • 免税取引:税率0%が適用される取引。輸出取引や国際輸送などが該当し、仕入税額控除は受けられる。

ファクタリング手数料も債権譲渡対価の一部として非課税が原則

ファクタリングは、保有する売掛債権をファクタリング会社へ譲渡して早期に資金化する取引です。法的には金銭債権の売買にあたるため、上で述べた「金銭債権の譲渡」として、消費税は非課税となるのが原則です。ここで多くの経理担当者が迷うのが、ファクタリング会社へ支払う「手数料」に消費税がかかるのかという点ですが、この手数料についても課税されないのが原則となります。

割引料・保証料・手数料は名目を問わず非課税

国税庁の質疑応答事例「金銭債権の買取り等に対する課税関係」では、金銭債権の譲り受けの際に債権者から徴収する割引料、保証料または手数料は、その名目のいかんにかかわらず、金銭債権の譲受けの対価として非課税となる旨が示されています。ファクタリングにおける手数料は、額面金額と買取金額との差額、すなわち債権を割り引いて買い取る際の割引料に相当します。したがってこの手数料は独立した役務提供の対価ではなく、債権譲渡対価の一部とみなされ、非課税取引の枠内で処理されることになります。実務上、ファクタリング会社から受け取る計算書に消費税額が記載されていないのは、この取り扱いを反映したものです。出典は国税庁の質疑応答事例です。なお、ファクタリングの種類によって手数料の水準は大きく異なり、売掛先にも通知する3社間ファクタリングでは数パーセント程度、利用者とファクタリング会社の2社間で完結するファクタリングでは10%から20%程度になることもありますが、いずれの手数料も債権譲受対価の一部として非課税で処理される点は変わりません。手数料率の高低が消費税の課税区分を左右するわけではない、と理解しておくとよいでしょう。

課税される付随費用には注意が必要

ファクタリング取引そのものや割引料相当の手数料は非課税ですが、取引に付随して発生する一部の費用には消費税が課税される場合があります。代表的なものが、債権譲渡の対抗要件を備えるための債権譲渡登記です。登記を司法書士に依頼する場合、その報酬は事務手続きという役務提供の対価にあたるため消費税の課税対象となります。一方、登記の際に納める登録免許税は税金であり消費税はかかりません。また、契約に関する事務手数料や振込手数料なども、役務提供の対価として課税されることがあります。同じ「手数料」という名称でも、債権の譲受対価に含まれるものは非課税、独立した役務提供の対価となるものは課税と、性質によって区分が分かれる点に十分注意してください。

  • 非課税となるもの:ファクタリングの割引料・買取手数料(債権譲受対価の一部)、登録免許税。
  • 課税となる可能性があるもの:債権譲渡登記の司法書士報酬、事務手数料、振込手数料など独立した役務提供の対価。

債権譲渡が課税売上割合に与える影響

金銭債権の譲渡が非課税である以上、その譲渡対価は課税売上にはなりません。しかし、消費税の仕入税額控除を計算するうえで重要な「課税売上割合」には影響を及ぼす場合があり、ここが債権譲渡の消費税で最も注意すべき論点です。課税売上割合とは、総売上高(課税売上高+非課税売上高)に占める課税売上高の割合のことで、これが低くなると控除できる仕入税額が減り、納税額が増えるという関係にあります。

平成26年度税制改正で対価の5%を分母に算入

金銭債権の譲渡対価をそのまま課税売上割合の分母(資産の譲渡等の対価の額の合計額)に全額算入すると、多額の債権譲渡を行った事業者の課税売上割合が極端に低下し、仕入税額控除が過度に制限されてしまいます。この弊害を是正するため、平成26年度税制改正により、平成26年4月1日以後に行われる金銭債権の譲渡については、その譲渡対価の額の5%相当額のみを課税売上割合の計算上の分母に算入すればよいこととされました。これは消費税法施行令第48条に定められた取り扱いで、有価証券の譲渡と同様の計算方法です。たとえば額面1,000万円の金銭債権を譲渡した場合、分母に算入されるのはその5%にあたる50万円となり、課税売上割合への影響が大きく緩和されます。

自社の売掛金の譲渡は分母に算入しない

さらに重要な例外があります。施行令第48条第2項第2号により、「資産の譲渡等の対価として取得した金銭債権」、すなわち自社が商品の販売やサービスの提供を行った結果として発生した売掛金などを譲渡した場合は、その譲渡対価を課税売上割合の分母に一切算入しません。これは、売上計上の段階ですでに課税売上として分子・分母に反映されているため、その債権を譲渡したときにさらに分母へ加えると二重に計上してしまうことを避けるための措置です。したがって、一般的な事業会社が自社の売掛金をファクタリングで譲渡するケースでは、その譲渡対価は5%算入の対象にもならず、課税売上割合に影響を与えないと整理できます。一方、金融機関などが第三者から買い取った金銭債権を転売するような場合には、5%の算入が問題になり得ます。出典は国税庁の質疑応答事例および消費税法施行令第48条です。

債権譲渡 消費税

債権譲渡・ファクタリングの仕訳例

消費税が非課税であることを踏まえ、買取型ファクタリングを利用した場合の具体的な仕訳を確認しましょう。ここでは、額面100万円の売掛金をファクタリング会社へ譲渡し、手数料5万円が差し引かれて95万円が入金されるケースを想定します。契約から入金までに日数がある場合と、即日入金の場合で処理が分かれます。

契約時と入金時に分けて処理する場合

ファクタリング契約を締結した時点では、まだ現金は入金されていないため、譲渡した売掛金を「未収入金」へ振り替えます。本業の営業活動以外で発生する債権であるため、売掛金ではなく未収入金を用いる点がポイントです。仕訳は「(借方)未収入金1,000,000円/(貸方)売掛金1,000,000円」となります。その後、手数料5万円が差し引かれて95万円が入金された時点で、「(借方)普通預金950,000円・売上債権売却損50,000円/(貸方)未収入金1,000,000円」と処理します。手数料部分は「売上債権売却損」または「売掛債権売却損」といった勘定科目で営業外費用として計上します。

即日入金の場合

契約と同時に資金が入金される場合は、未収入金を経由せず一度の仕訳で処理できます。仕訳は「(借方)普通預金950,000円・売上債権売却損50,000円/(貸方)売掛金1,000,000円」となります。いずれの処理でも、手数料に消費税は付さず非課税として扱う点は共通です。会計ソフトに入力する際は、売上債権売却損の税区分を「非課税仕入」ではなく「対象外(不課税)」として登録するのが一般的ですが、自社の会計方針や使用ソフトの設定によって扱いが異なる場合があるため、顧問税理士に確認のうえ統一しておくと安心です。

  • 契約時:未収入金へ振り替え、売掛金を消し込む。
  • 入金時:入金額を普通預金、手数料を売上債権売却損として計上し、未収入金を消す。
  • 2社間ファクタリングで自社が回収を代行する場合は、回収額を「預り金」で処理する。

インボイス制度と債権譲渡の関係

令和5年10月に開始したインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除を受けるために適格請求書(インボイス)の保存を求める制度です。経理担当者の中には、ファクタリングや債権譲渡を行う際にインボイスが必要になるのではないかと心配する方もいますが、結論として原則的なファクタリング取引はインボイス制度の影響を受けません。

非課税取引のため適格請求書は不要

インボイス制度はあくまで「課税取引」に係る消費税の仕入税額控除を対象とした制度です。金銭債権の譲渡は前述のとおり非課税取引であり、そもそも消費税が発生しないため、ファクタリング会社が適格請求書発行事業者であるかどうかにかかわらず、適格請求書の発行や保存は必要ありません。利用者がファクタリング会社の登録番号を確認しなければならない、といった対応も基本的に不要です。ただし、債権譲渡登記の司法書士報酬など、取引に付随して発生する課税対象の役務提供については、その役務提供者からインボイスを受け取らなければ仕入税額控除が受けられない点には留意してください。なお、ファクタリングで譲渡する売掛債権そのものは、もとの売上取引においてインボイスの対象となるため、売上計上時の請求書管理は通常どおり適切に行う必要があります。

よくある質問

債権譲渡と消費税に関して、経理担当者から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。

ファクタリングの手数料を支払ったとき、消費税の仕入税額控除はできますか

ファクタリングの手数料は金銭債権の譲受対価の一部として非課税で処理されるため、そもそも消費税が含まれておらず、仕入税額控除の対象にもなりません。会計上は売上債権売却損として営業外費用に計上しますが、消費税の課税仕入れには該当しないと整理するのが原則です。

金銭債権を譲渡すると課税売上割合が下がって不利になりますか

自社の売掛金などの「資産の譲渡等の対価として取得した金銭債権」を譲渡する場合は、消費税法施行令第48条第2項第2号により譲渡対価を課税売上割合の分母に算入しないため、課税売上割合への影響はありません。第三者から買い取った債権を転売するような場合に限り、譲渡対価の5%が分母に算入されます。自社の判断に迷う場合は税理士に確認してください。

債権譲渡登記にかかる費用に消費税はかかりますか

債権譲渡登記そのものに係る登録免許税は税金であるため消費税はかかりません。一方、登記手続きを司法書士に依頼した場合の報酬は、役務提供の対価として消費税の課税対象となります。ファクタリング取引本体が非課税であることと混同しないよう、費用ごとに区分して処理することが大切です。

まとめ

金銭債権の譲渡は、消費税法別表第二に定める「有価証券その他これに類するものの譲渡」に含まれ、消費税は非課税となるのが原則です。ファクタリングの手数料も、国税庁の質疑応答事例が示すとおり名目を問わず債権譲受対価の一部として非課税で処理されます。課税売上割合については、金銭債権の譲渡対価の5%を分母に算入する取り扱いがある一方、自社の売掛金など資産の譲渡等の対価として取得した金銭債権の譲渡は施行令第48条第2項第2号により分母に算入しないため、一般的な事業会社が自社の売掛金を譲渡するケースでは課税売上割合への影響は生じません。

仕訳では未収入金と売上債権売却損を用い、手数料は非課税として処理します。さらに、非課税取引であるためインボイス制度の影響も原則として受けません。債権譲渡やファクタリングの消費税処理は、付随費用の課税区分や課税売上割合の例外規定など判断を要する論点が多いため、個別の取引については顧問税理士や所轄税務署に確認したうえで、自社の会計方針として統一して処理することをおすすめします。ファクタリングをはじめとする資金調達の選択肢についてはOLTAが、請求書まわりの業務効率化についてはINVOYが参考になります。

この記事の投稿者:

hasegawa

ファクタリングの基礎知識の関連記事

ファクタリングの基礎知識の一覧を見る

\1分でかんたんに請求書を作成する/
いますぐ無料登録