
個人事業主として事業を営む中で、「手元の資金が足りない」「事業を拡大したいけれど資金がない」という壁にぶつかることは珍しくありません。事業の立ち上げ期から安定期、さらに成長期においても、資金繰りの課題は個人事業主が常に向き合わなければならないテーマです。しかし、個人事業主が利用できる資金調達の手段は、意外にも多岐にわたります。日本政策金融公庫をはじめとする公的融資、補助金・助成金、クラウドファンディング、ファクタリング、そして請求書カード払いといった手段まで、それぞれに特徴と適した状況があります。本記事では、個人事業主が資金調達を検討する際に知っておくべき主要な方法を網羅的に解説し、自分の状況に合った最適な手段を選ぶための判断基準をわかりやすく紹介します。資金繰りに不安を感じている方も、これから事業の拡大を検討している方も、ぜひ最後までお読みください。
目次
個人事業主が資金調達を必要とする主な場面
開業・創業時の初期費用
個人事業主として事業をスタートする際には、業種によって異なりますが、多くの場合まとまった初期費用が必要です。店舗型ビジネスであれば内装工事費や設備費、フリーランスであっても高性能なパソコンや専門ソフトウェア、Webサイト制作費などがかかります。自己資金だけでは不足する場合、開業前から資金調達の手段を検討することが重要です。
特に創業間もない時期は、実績が乏しく金融機関の審査が厳しくなりがちです。しかし、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」のように、創業期の個人事業主を対象とした融資制度も整備されています。開業前から情報を収集し、どの資金調達手段が自分の状況に合っているかを把握しておくことが、スムーズなスタートにつながります。
運転資金の一時的な不足
事業が軌道に乗っていても、売上の入金タイミングと仕入れや人件費などの支払いタイミングがずれることで、一時的に手元資金が不足することがあります。いわゆる「黒字倒産」のリスクです。特に請求書払いで取引する個人事業主の場合、売掛金が発生してから実際に入金されるまでに30日〜60日かかることも多く、その間の支払いをどう乗り越えるかが課題になります。
こうした一時的な資金不足に対応するためには、ファクタリングや請求書カード払いのような即効性のある資金調達手段が役立ちます。銀行融資のように時間がかかる方法では間に合わない局面でも、スピーディーに資金を確保できる手段を知っておくことが大切です。
事業拡大・設備投資
事業が成長し、新しい設備の導入や人材採用、マーケティング投資を検討するタイミングでも資金調達が必要になります。この局面では、ある程度の実績があるため融資審査が通りやすくなる一方、調達規模も大きくなります。
設備投資の場合は、返済期間の長い融資や補助金の活用が効果的です。特に国や自治体の補助金・助成金は返済不要であるため、条件に合致する制度を積極的に活用することが賢明です。
個人事業主が使える資金調達方法の全体像
資金調達の4つのカテゴリー
個人事業主が利用できる資金調達の方法は、大きく4つのカテゴリーに分類できます。
まず「借りる」方法です。金融機関からの融資が代表例で、日本政策金融公庫・銀行・信用金庫・ビジネスローンなどがあります。返済義務がある点が特徴で、調達した資金の使途を明確にし、返済計画を立てることが重要です。
次に「もらう」方法です。補助金・助成金がこれにあたります。返済不要ですが、申請条件が細かく定められており、採択されるための準備が必要です。また、後払いが原則のため、先に費用を立て替える必要があります。
3つ目は「集める」方法です。クラウドファンディングのように、不特定多数から資金を集める手段です。個人事業主でも活用しやすく、資金調達と同時に事業のPRにもなるというメリットがあります。
4つ目は「資産を現金化する」方法です。ファクタリングや請求書カード払いのように、保有している売掛債権や支払い義務を別の形に換えることで資金を確保する手段です。
公的融資を活用する:日本政策金融公庫
活用したい公的融資機関の特徴
日本政策金融公庫は、個人事業主にとって最も利用しやすい公的融資機関のひとつです。民間の金融機関に比べて審査基準が柔軟で、低金利・長期返済が可能なため、特に創業期や資金余力の少ない段階での利用に向いています。
主な融資制度として、創業から2期以内の事業者を対象とした「新規開業・スタートアップ支援資金」があります。無担保・無保証人で最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)まで借り入れが可能です。また、商工会・商工会議所の会員向けの「小規模事業者経営改善資金(マル経融資)」は、無担保・無保証人で最大2,000万円まで低金利で借り入れできる制度です。
審査を通過するためのポイント
日本政策金融公庫の審査では、事業計画書の内容が非常に重要です。「なぜこの事業をやるのか」「市場規模はどうか」「どうやって収益を上げるのか」「返済できる根拠は何か」という4点が問われます。
具体的には、以下の準備を心がけてください。
自己資金の比率として、必要資金の10〜30%程度の自己資金があると審査通過率が上がります。また、過去に税金・公共料金の滞納があると審査に影響するため、きちんと納付していることを確認しましょう。さらに、確定申告書や試算表など、事業の財務状況を示す書類を整えておくことが大切です。
申し込みから融資実行までの流れ
日本政策金融公庫への申し込みから融資実行までは、一般的に1〜2ヶ月程度かかります。まず最寄りの支店に相談・申し込みを行い、必要書類を提出します。その後、担当者との面談(審査)が行われ、審査結果の通知後に融資契約・実行という流れです。
資金が必要な時期から逆算して、余裕を持って申し込みを開始することが重要です。
制度融資・銀行融資・信用金庫の活用
制度融資とは何か
制度融資とは、都道府県や市区町村(自治体)・金融機関・信用保証協会の三者が連携して提供する融資制度です。自治体が利子補給を行うため通常の銀行融資より低金利で利用でき、信用保証協会が保証するため審査のハードルが下がる特徴があります。
各都道府県・市区町村によって制度の内容が異なるため、事業所の所在地を管轄する自治体の窓口(商工会・商工会議所・産業振興センターなど)に問い合わせるとよいでしょう。
銀行・信用金庫での融資
銀行融資は、まとまった金額を長期で借りられる点が魅力ですが、審査が厳しく、実績のない個人事業主には難しい場合があります。一方、信用金庫は地域密着型の金融機関であり、個人事業主との取引に積極的なケースも多く、担当者が親身になって相談に乗ってくれる傾向があります。
2〜3年の確定申告書や試算表を準備し、日々の取引を通じて信頼関係を築いておくことが、融資審査をスムーズに進める上で効果的です。
ビジネスローンの特徴と注意点
銀行系・ノンバンク系のビジネスローンは、審査がスピーディーで最短即日での調達が可能です。担保・保証人不要のものも多く、個人事業主でも利用しやすい特徴があります。ただし、金利が高め(年5〜18%程度)なため、短期間の資金繰り改善目的での利用にとどめ、長期的な借り入れには向いていません。
補助金・助成金で返済不要の資金を得る
補助金と助成金の違い
補助金と助成金はよく混同されますが、異なる制度です。補助金は主に国や自治体が政策目的のために設ける制度で、申請・審査・採択というプロセスがあります。採択されなければ受け取れないため、競争性があります。
一方、助成金(主に雇用関連)は条件を満たせば原則として受給できる制度です。厚生労働省が管轄する雇用関連の助成金が代表的で、新規雇用や職業訓練の実施などに応じて支給されます。
いずれも返済不要ですが、「先に費用を支出し、後から補助・助成を受ける」後払いの仕組みが基本です。そのため、支出のための資金も別途確保しておく必要があります。
活用できる主な補助金・助成金
個人事業主が特に活用しやすい補助金・助成金として、以下が挙げられます。
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者(従業員5名以下の商業・サービス業など)の販路開拓や生産性向上に使える補助金です。上限50万円(特定の類型では最大250万円)が補助されます。広告費・展示会出展費・ホームページ制作費なども対象になるため、個人事業主でも使いやすい制度です。
IT導入補助金は、業務効率化のためのITツール(会計ソフト・受発注システムなど)の導入費用を補助する制度です。個人事業主も対象となる場合があり、デジタル化を進める際に活用できます。
キャリアアップ助成金は、アルバイト・パートを正社員化した場合などに支給される助成金です。雇用関係の実態が必要なため、従業員を雇っている個人事業主向けです。
申請のコツと注意点
補助金・助成金の申請では、「何のために使うのか」「どんな効果が期待できるのか」を具体的かつ明確に記載することが採択率を上げる鍵です。また、募集期間が限られているため、常に最新情報をチェックする習慣をつけましょう。
商工会・商工会議所やよろず支援拠点では、補助金申請の無料サポートを行っています。一人で抱え込まず、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
ファクタリングで売掛金を即時現金化する
ファクタリングの仕組みと特徴
ファクタリングとは、取引先に対して保有している売掛債権(請求書)をファクタリング会社に売却し、支払期日前に現金化するサービスです。融資と異なり、借入ではなく「資産の売却」であるため、負債が増えない点が特徴です。
個人事業主にとってのメリットは、審査が売掛先の信用力を主に見るため、個人事業主自身の信用力や実績が少なくても利用しやすい点です。また、最短即日で資金化できるため、急な資金ニーズにも対応できます。
2社間・3社間ファクタリングの違い
ファクタリングには主に2社間と3社間の形式があります。
2社間ファクタリングは、個人事業主(売主)とファクタリング会社の2社間で完結します。取引先への通知が不要なため、取引関係に影響しません。ただし、手数料が高め(8〜18%程度)です。
3社間ファクタリングは、売主・ファクタリング会社・取引先の3社が関わります。取引先の承認が必要ですが、手数料が低め(2〜9%程度)で済みます。
急いで資金が必要な場合は2社間、コストを抑えたい場合は3社間と使い分けると効果的です。
ファクタリング利用時の注意点
ファクタリングは便利な手段ですが、手数料負担が生じるため頻繁に利用すると収益を圧迫します。また、「審査なし」「手数料0%」などを謳う業者は違法業者の可能性があるため注意が必要です。
INVOYでは、請求書買取(ファクタリング)について詳しい解説記事も公開しています。詳しくは「請求書買取(ファクタリング)とは?資金繰りを改善する新たな選択肢」をご確認ください。

請求書カード払いで支払いを延長する
請求書カード払いとは
請求書カード払い(BtoB決済)とは、取引先への支払いをクレジットカードで行うことで、実際の現金支出を後ろ倒しにできるサービスです。カードの引き落とし日まで手元現金を保持できるため、実質的に支払いを延長する効果があります。
たとえば、INVOYの「請求書カード払い」サービスを利用すると、銀行振込でしか支払えない請求書をクレジットカードで決済でき、支払いを最大60日間延長することが可能です。取引先がカード払いに対応していなくても利用でき、カードのポイントも獲得できます。
請求書カード払いを使うべき状況と条件
請求書カード払いは、次のような状況で特に有効です。
月末に資金繰りが厳しくなる個人事業主の場合、仕入れや外注費の支払いをカード払いにすることで、手元現金を維持しながら事業を継続できます。また、売掛金の入金前に支払いが集中する場合にも、支払いサイクルを調整する手段として活用できます。
融資と異なり審査不要(カード審査は別途必要)で、新しい負債を増やさずに資金繰りを改善できる点が特徴です。詳しくはINVOY 請求書カード払いをご参照ください。
クラウドファンディングによる資金調達
クラウドファンディングの種類と特徴
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める手段です。個人事業主でも活用しやすく、資金調達と同時に事業のPRやファン獲得にも有効です。
主な種類は以下のとおりです。
購入型クラウドファンディングは、支援者に商品やサービスをリターンとして提供する形式です。CAMPFIREやMakuakeが代表的なプラットフォームです。製品開発費やプロジェクト資金の調達に適しています。
寄付型クラウドファンディングは、リターンなしで支援を募る形式です。社会貢献性の高い活動やNPO的な事業に向いています。
融資型(ソーシャルレンディング)は、多数の投資家から資金を集めて貸し付ける形式です。法人化が必要な場合が多く、個人事業主には難しいケースもあります。
成功するクラウドファンディングのポイント
クラウドファンディングを成功させるためには、事業・プロジェクトへの共感を生む「ストーリー」の作り方が鍵です。「なぜこの事業をやるのか」「支援者にとってどんなメリットがあるか」を具体的かつ魅力的に伝えることが重要です。
また、自分のSNSや既存の顧客基盤を活用して初期サポーターを集め、プロジェクト公開直後から支援を集めることで、プラットフォームのランキングや注目度が上がりやすくなります。
親族・知人からの借入と注意点
身近な人からの借入は慎重に
資金調達の選択肢として、親族や知人から借りるという方法があります。金融機関の審査なしに資金を確保できるため、スピード感があります。しかし、人間関係への影響を考えると、最も慎重に扱うべき手段のひとつです。
借入の際には、必ず金銭消費貸借契約書を書面で作成し、返済条件(金額・期日・利率)を明文化しておきましょう。口約束だけでは後々トラブルになりかねません。
贈与税と利子の取り扱い
親族から資金を受け取る場合、贈与とみなされると贈与税が発生することがあります。年間110万円を超える贈与は申告義務が生じます。また、利息なしで借りる場合でも、実質的な贈与とみなされるリスクがあるため、適切な利率(市場金利程度)を設定することが望ましいとされています。
税務上のリスクを避けるために、税理士に相談することをおすすめします。
資金調達方法の選び方:状況別ガイド
スピードが重要な場合
資金が急に必要になった場合は、審査・実行までのスピードが重要です。ファクタリング(最短即日)やビジネスローン(最短数日)、請求書カード払いが候補になります。
コストを抑えたい場合
手数料・金利を最小化したいなら、補助金・助成金(返済不要)や日本政策金融公庫(低金利)が最適です。ただし、準備期間が必要なため早めに動くことが重要です。
大きな金額を調達したい場合
数百万〜数千万円の資金調達が必要な場合は、銀行融資・日本政策金融公庫・制度融資などが中心となります。事業計画の作り込みと、経営状況を示す書類の整備が必要です。
負債を増やしたくない場合
借入を増やしたくない場合は、補助金・助成金・クラウドファンディング・ファクタリングが選択肢となります。ファクタリングは「売掛金の前払い」であり、借金ではないため財務上の負債が増えません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 日本政策金融公庫の融資は受けられますか?
はい、受けられます。日本政策金融公庫は個人事業主を対象とした融資制度を多数用意しています。特に「新創業融資制度」は創業期の個人事業主向けで、無担保・無保証人での借り入れが可能です。確定申告書や事業計画書を準備の上、最寄りの支店に相談してみてください。
Q2. 赤字でも資金調達できますか?
融資の場合、赤字は審査に不利に働きますが、必ずしも不可能ではありません。赤字の原因が一時的なもの(設備投資による減価償却など)であることを説明できる事業計画書があれば、融資を受けられるケースもあります。また、ファクタリングは売掛先の信用力を重視するため、個人事業主自身の財務状況に影響されにくい面があります。
Q3. 補助金と融資を同時に活用できますか?
原則として可能です。補助金は事業の特定目的に使う資金として、融資は運転資金や設備投資全般として、それぞれ異なる目的に活用することができます。ただし、同じ費用に補助金と融資を重複して充てることはできないため、資金計画を明確にしておくことが大切です。
Q4. ファクタリングと融資はどう使い分けるべきですか?
融資は中長期的に資金が必要な場合(設備投資・事業拡大)に向いており、ファクタリングは一時的な資金繰りの改善(売掛金の早期現金化)に向いています。コスト面では融資の金利よりファクタリングの手数料の方が高い傾向があるため、長期的な資金需要には融資を、短期的なつなぎ資金にはファクタリングを使うのが一般的な使い分けです。
Q5. 開業届を出していなくても資金調達できますか?
融資の場合、多くは開業届の提出と確定申告実績が求められます。ただし、クラウドファンディングや親族・知人からの借入など、開業届なしで利用できる手段もあります。事業を継続する意思があるなら、まず開業届を提出した上で資金調達を検討することをおすすめします。
Q6. 資金調達の相談はどこにすればよいですか?
無料で相談できる窓口として、商工会・商工会議所、よろず支援拠点、日本政策金融公庫の各支店(事前相談可能)があります。有料サポートが必要な場合は、中小企業診断士や税理士への依頼も有効です。
まとめ:調達手段は「目的と状況」で選ぶ
個人事業主が利用できる資金調達の手段は多様であり、それぞれに特徴と適した状況があります。本記事で紹介した主な方法を振り返ります。
日本政策金融公庫などの公的融資は、低金利・長期返済で創業期から利用しやすい手段です。補助金・助成金は返済不要ですが、準備と申請のプロセスが必要です。ファクタリングは急な資金ニーズに対応できる即効性のある方法です。請求書カード払いは支払いを後ろ倒しにして手元現金を確保できる実用的な手段です。クラウドファンディングは資金調達と事業PRを同時に行える方法です。
重要なのは、「今の自分の状況に最も適した手段はどれか」を冷静に判断することです。複数の手段を組み合わせることも有効です。また、資金調達は必要になってから動くのでは遅いことも多く、余裕のある時期から情報収集と準備を進めておくことが、事業の安定につながります。
資金繰りの改善については、支払いサイトとは?資金繰りを改善する交渉術や資金調達を成功させる全手法と専門家による支援の活用法なども合わせてご参照ください。まずは自分の状況を整理し、最適な一手を選んで事業の成長につなげていきましょう。



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