
資金調達の手段としてファクタリングを検討しはじめると、必ず目にするのが「三者間契約(3社間契約)」という言葉です。三者間契約とは、ひとつの取引に当事者が3者関わる契約形態を指し、ファクタリングの文脈では「利用企業」「売掛先(取引先)」「ファクタリング会社」の3者が関与する3社間ファクタリングを意味します。売掛債権を早期に現金化できる便利な仕組みですが、売掛先への通知や承諾が必要になるため、2社間ファクタリングとは手続きの流れも手数料水準も大きく異なります。
この記事では、三者間契約の基本的な意味から、3社間ファクタリングの登場人物・契約の流れ・2社間ファクタリングとの違い・メリットとデメリット・債権譲渡の対抗要件(民法467条)といった法律面のポイント・利用時の注意点まで、はじめての方にもわかるように体系的に解説します。自社の資金繰り改善にどちらの契約形態が向いているかを判断する材料として、ぜひ最後までお読みください。
目次
三者間契約とは何かをわかりやすく整理する
三者間契約とは、ひとつの法律行為に3者の当事者が関わり、それぞれが権利を持ち義務を負う契約のことです。一般的な売買契約は売主と買主の二者間で成立しますが、三者間契約では3者の合意が前提となります。代表的な例としては、保証契約を伴う賃貸借や、第三者が支払を引き受ける立替払い、そして本記事で扱うファクタリングの3社間契約などが挙げられます。 ファクタリングにおける三者間契約は、正式には「3社間ファクタリング」と呼ばれます。これは、売掛債権を保有する利用企業がその債権をファクタリング会社へ譲渡し、債務者である売掛先がその譲渡を承諾したうえで、期日にファクタリング会社へ直接支払いをおこなう契約形態です。売掛先が契約の当事者として明確に関与する点が、二者だけで完結する2社間ファクタリングとの最大の違いになります。
3社間ファクタリングの登場人物と役割
3社間ファクタリングを理解するうえで、まずは3者それぞれの立場と役割を押さえておきましょう。三者間契約という名前のとおり、以下の3つの当事者が関わります。
利用企業(債権の譲渡人)
商品やサービスを提供して売掛債権を保有している企業です。資金繰りの改善や入金サイトの短縮を目的に、その売掛債権をファクタリング会社へ譲渡(売却)します。譲渡人とも呼ばれ、3社間ファクタリングの起点となる存在です。手数料を差し引かれた金額を入金期日より前に受け取ることができます。
売掛先(債務者)
利用企業に対して代金の支払義務を負っている取引先です。3社間ファクタリングでは、この売掛先が債権譲渡を承諾し、支払期日になるとファクタリング会社へ直接代金を支払います。売掛先が契約に関与し承諾するという点が、三者間契約の核心です。売掛先の信用力が審査の主な対象になるのも、最終的に支払いをおこなうのが売掛先だからです。
ファクタリング会社(債権の譲受人)
売掛債権を買い取る事業者です。利用企業から債権を譲り受け、手数料を差し引いた金額を利用企業へ支払います。そして支払期日に売掛先から直接代金を回収します。譲受人とも呼ばれ、債権の回収リスクを負う代わりに手数料を得る立場です。
3社間ファクタリングの契約の流れ
3社間ファクタリングは、売掛先が関与するぶん、2社間ファクタリングよりも工程が多くなります。一般的には次の流れで進みます。
- 利用企業が売掛先へ商品やサービスを提供し、売掛債権が発生する
- 利用企業がファクタリング会社へ申込みをおこない、債権の内容や売掛先の信用について審査を受ける
- 利用企業が売掛先へ債権譲渡の通知をおこない、売掛先から譲渡の承諾を得る
- 利用企業とファクタリング会社が債権譲渡契約を締結する
- ファクタリング会社が手数料を差し引いた金額を利用企業へ支払う
- 支払期日になると、売掛先がファクタリング会社へ直接代金を支払う
このうち最も時間がかかるのが、売掛先への通知と承諾の取得です。内容証明郵便の郵送日数や、売掛先の社内での確認・決裁に要する日数を含めると、資金化までには1週間から2週間程度かかるのが一般的です。即日での資金化は基本的に難しいと考えておきましょう。
2社間ファクタリングとの違い
ファクタリングには大きく分けて3社間と2社間の2種類があります。両者の違いを正しく理解することが、自社に合った契約形態を選ぶ第一歩です。主な相違点は次のとおりです。
売掛先への通知・承諾の有無
3社間ファクタリングでは、売掛先への債権譲渡の通知と承諾が必須です。一方、2社間ファクタリングは利用企業とファクタリング会社の二者だけで契約が完結するため、原則として売掛先に知られることなく利用できます。ファクタリングの利用を取引先に知られたくない場合は2社間が選ばれますが、そのぶん手数料は高くなります。
手数料の水準
手数料には明確な差があります。3社間ファクタリングの手数料相場は売掛金額の2%から9%程度であるのに対し、2社間ファクタリングは8%から18%程度と高めです。差が生じる理由は回収リスクの違いにあります。3社間では売掛先がファクタリング会社へ直接支払うため貸し倒れリスクが低く、結果として手数料が抑えられます。たとえば100万円の売掛債権を手数料5%で3社間ファクタリングに出すと、手取りは95万円になります。
資金化までのスピード
2社間ファクタリングは売掛先の承諾が不要なため、審査と契約が速やかに進み、最短即日から数日で資金化できる場合があります。これに対し3社間ファクタリングは通知や承諾の取得に時間を要するため、資金化までに1週間から2週間程度かかるのが一般的です。急いで資金が必要な場面では2社間、コストを抑えたい場面では3社間という使い分けが基本になります。
代金回収の流れ
3社間ファクタリングでは、売掛先からファクタリング会社へ直接代金が支払われます。一方、2社間ファクタリングでは、いったん売掛先から利用企業へ代金が支払われ、その後に利用企業がファクタリング会社へ送金します。2社間では利用企業が回収代金を一時的に預かる形になるため、ファクタリング会社にとっては資金が利用企業に流用されるリスクがあり、これも手数料が高くなる一因です。
債権譲渡通知と承諾の法律的な意味(民法467条)
3社間ファクタリングで欠かせない「通知」と「承諾」は、単なる連絡ではなく、法律上の重要な意味を持ちます。根拠となるのが民法467条の「債権譲渡の対抗要件」です。仕組みを理解しておくと、なぜ売掛先の関与が必要なのかがよくわかります。
債務者対抗要件と第三者対抗要件
民法467条1項では、債権の譲渡は譲渡人が債務者に通知をするか、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができないと定められています。これを債務者対抗要件といいます。つまり、利用企業が売掛先へ通知するか、売掛先が承諾しない限り、ファクタリング会社は売掛先に対して「自分が新しい債権者だ」と主張できないのです。 さらに同条2項では、この通知または承諾は確定日付のある証書によっておこなわなければ、債務者以外の第三者に対抗できないとされています。これを第三者対抗要件といいます。確定日付を備える方法として一般的に用いられるのが内容証明郵便です。3社間ファクタリングで内容証明郵便が使われるのは、この第三者対抗要件を確実に満たすためです。
二重譲渡が起きた場合の優劣
同じ債権が複数の相手に二重に譲渡されてしまった場合、確定日付のある通知が債務者に到達した日時、または確定日付のある債務者の承諾の日時の先後によって、譲受人どうしの優劣が決まります。3社間ファクタリングで通知や承諾に確定日付を備えるのは、こうしたトラブルからファクタリング会社の権利を守るためでもあります。法律の仕組みと実務の手続きが直結している点を押さえておきましょう。

3社間ファクタリングのメリット
三者間契約による3社間ファクタリングには、コスト面と審査面で明確な利点があります。代表的なメリットを整理します。
- 手数料が低い:相場は2%から9%程度で、8%から18%程度の2社間ファクタリングより大幅に安く抑えられる
- 審査に通りやすい場合がある:審査の主な対象が売掛先の信用力であるため、利用企業が赤字決算や創業間もない状態でも、売掛先の経営状態が良好なら利用できる可能性がある
- 債権譲渡登記が不要な場合が多い:売掛先の承諾があるため、登記にかかる手間や追加費用を抑えられるケースがある
- 回収の手間がかからない:売掛先がファクタリング会社へ直接支払うため、利用企業が代金を回収して送金する手間が省ける
とくに手数料の低さは、継続的にファクタリングを利用する事業者にとって大きな魅力です。仮に毎月300万円の売掛債権を資金化する場合、手数料が15%か5%かでは月あたり30万円もの差が生じる計算になり、年間に換算すると360万円もの開きになるため、資金繰りへの影響は決して小さくありません。コストを長期的に圧縮したい事業者にとって、売掛先の協力を得られる環境であれば3社間ファクタリングを選ぶ価値は十分にあるといえます。
3社間ファクタリングのデメリットと注意点
一方で、三者間契約には売掛先が関与することによるデメリットも存在します。利用前に必ず確認しておきたいポイントを挙げます。
- 売掛先にファクタリングの利用を知られる:通知と承諾が必須のため、資金繰りに窮しているという印象を与え、取引関係に影響が及ぶ可能性がある
- 資金化までに時間がかかる:通知や承諾の取得に1週間から2週間程度を要し、即日資金化は基本的にできない
- 売掛先の協力が前提になる:売掛先が承諾しなければ契約が成立しないため、自社だけで手続きを完結できない
- 少額債権では断られることがある:ファクタリング会社の業務負担が大きいため、少額の売掛債権は審査で懸念点となる場合がある
最大の注意点は、売掛先との関係性への影響です。近年はファクタリングが資金調達手段として一般化しつつありますが、それでも取引先によってはネガティブに受け止める場合があります。事前に売掛先へ丁寧に説明し、理解を得たうえで進めることが、取引関係を損なわないための鍵となります。また、売掛先自身の経営状態が芳しくない場合は審査に通りにくくなる点にも留意が必要です。
債権譲渡禁止特約がある場合の取り扱い
取引基本契約のなかには、売掛債権の譲渡を禁止する「債権譲渡禁止特約」が定められていることがあります。かつてはこの特約があると債権譲渡そのものが無効とされる余地がありましたが、2020年4月施行の改正民法によって、譲渡制限の特約が付いていても債権譲渡は原則として有効と扱われるようになりました。ただし実務上は、特約に反してファクタリングを利用すると売掛先との取引関係に支障が生じるおそれがあるため、3社間ファクタリングで売掛先の承諾を得る過程で特約の有無を確認し、トラブルを未然に防ぐことが望ましいといえます。
3社間ファクタリングが向いているケース
ここまでの内容を踏まえ、三者間契約による3社間ファクタリングが適しているのは次のようなケースです。
- 資金化までに1週間から2週間の余裕があり、急いでいないケース
- 手数料コストをできるだけ抑えたいケース
- 売掛先が官公庁や大企業など信用力が高く、承諾も得やすいケース
- 継続的に売掛債権を資金化したいケース
反対に、売掛先に知られたくない場合や即日で資金が必要な場合は2社間ファクタリングが選択肢になります。自社の状況と優先順位に応じて、コストとスピード、そして取引先との関係性のバランスを見極めて選ぶことが大切です。資金繰り全体の見直しをおこなううえでは、ファクタリングと並行して、請求書のカード払いなど支払いサイトを延ばす手段も検討するとよいでしょう。INVOYのカード払いサービスについてはサービスサイトで確認できます。
よくある質問
三者間契約と3社間ファクタリングは同じ意味ですか
ファクタリングの文脈ではほぼ同じ意味で使われます。三者間契約はひとつの取引に3者が関わる契約形態全般を指す言葉ですが、ファクタリングにおいては利用企業・売掛先・ファクタリング会社の3者が関わる3社間ファクタリングを指すのが一般的です。3者間契約と表記されることもありますが、内容は同じです。
売掛先の承諾が得られない場合はどうなりますか
3社間ファクタリングは売掛先の承諾が成立の前提となるため、承諾が得られなければ契約は成立しません。その場合は、売掛先の関与が不要な2社間ファクタリングを検討することになります。ただし2社間は手数料が高くなる傾向があるため、コストとのバランスを考えて判断しましょう。
3社間ファクタリングは即日で資金化できますか
原則として即日資金化はできません。売掛先への通知と承諾の取得に時間がかかるため、資金化までに1週間から2週間程度を見込む必要があります。即日や数日での資金化を希望する場合は、2社間ファクタリングが適しています。
内容証明郵便はなぜ必要なのですか
民法467条2項の第三者対抗要件を満たし、確定日付を備えるためです。確定日付があることで、債権が二重に譲渡された場合などにファクタリング会社の権利を法的に保護できます。確定日付を確実に残す手段として、内容証明郵便が広く用いられています。
まとめ
三者間契約とは、ひとつの取引に3者が関わる契約形態のことで、ファクタリングにおいては利用企業・売掛先・ファクタリング会社の3者が関わる3社間ファクタリングを指します。売掛先への通知と承諾が必須であるため、2社間ファクタリングよりも資金化に時間はかかりますが、手数料相場が2%から9%程度と低く抑えられ、売掛先の信用力次第では審査に通りやすいという大きなメリットがあります。 一方で、売掛先にファクタリングの利用を知られることや、即日資金化ができないことはデメリットです。通知と承諾には民法467条という法的な裏付けがあり、内容証明郵便による確定日付がファクタリング会社の権利を守る役割を果たしています。コストを重視するなら3社間、スピードや秘匿性を重視するなら2社間と、自社の状況に応じて使い分けることが重要です。資金繰りの選択肢を広げる手段のひとつとして、クラウドファクタリングや請求書カード払いを提供するOLTAの取り組みも参考になります。詳しくはOLTAをご覧ください。



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