請求書の基礎知識

請求書の様式に決まりはある?法律上の指定と必須記載事項を解説

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請求書 様式

請求書を作るときに「この様式で本当に大丈夫だろうか」と手が止まることはないでしょうか。取引先から届く請求書は縦型もあれば横型もあり、明細が別紙になっているものもあります。どれが正しいのか判断できないまま、社内の古いテンプレートを使い続けている経理担当者は少なくありません。

結論を先に書きます。請求書の様式は法律で指定されていません。国税庁も適格請求書について「様式は、法令等で定められていません」と明記しています。法律が決めているのは、書かれていなければならない記載事項のほうです。ここを切り分けて理解できれば、自社の都合に合わせて様式を設計できます。

この記事では、法律が求める記載事項の一覧、実務でよく使われる様式の型、業種ごとの書き方の違い、紙とデータでの扱いの差、社内で様式を統一するときの注意点をまとめます。専門知識がなくても順番に確認できるように整理しましたので、自社のテンプレートを見直す判断基準として使えます。

目次

請求書の様式に法律上の指定はありません

国税庁が「様式は法令等で定められていない」と示しています

インボイス制度に対応した適格請求書についても、国税庁の手引きには「適格請求書の様式は、法令等で定められていません」と書かれています。必要な事項が記載された書類であれば、請求書でも納品書でも領収書でもレシートでも適格請求書になります。手書きでも認められます。

消費税法が定めているのは「何を書くか」であって、「どう並べるか」ではありません。A4縦の中央に社名を置くか、右上に置くかは事業者の自由です。罫線の太さやロゴの位置に法的な正解はありません。

適格請求書は記載事項の定めです

適格請求書等保存方式は2023年10月1日に始まりました。この制度で追加されたのは、登録番号や税率ごとの消費税額といった記載項目です。様式のテンプレートが国から配布されたわけではありません。

この違いを取り違えると、余計な作業が生まれます。「国税庁の指定フォーマットに合わせなければならない」と考えて、既存の様式をすべて捨ててしまうケースがあります。実際には不足項目を足すだけで済むことが多いので、まず自社の請求書と記載事項を突き合わせるほうが早く終わります。

様式が自由でも不利益は起こります

法的な制約がないことと、どんな様式でも実務上問題がないことは別です。記載事項が欠けていれば、受け取った側は仕入税額控除を受けられません。結果として修正依頼が届き、再発行の手間がかかります。

支払期日や振込先の書き方が不明瞭だと、入金の遅延にもつながります。様式が自由な分、記載事項の抜けを防ぐ仕組みは自社で用意することになります。

請求書に書くべき記載事項

適格請求書に必要な6項目

適格請求書として認められるには、次の6項目が必要です。

1. 発行事業者の氏名または名称と登録番号

2. 取引を行った年月日

3. 取引内容(軽減税率の対象であればその旨)

4. 税率ごとに区分した対価の合計額と適用税率

5. 税率ごとに区分した消費税額等

6. 交付を受ける事業者の氏名または名称

登録番号は「T」に13桁の数字が続く形式です。法人の場合は法人番号がそのまま13桁部分に入ります。この番号が抜けていると適格請求書になりません。

小売業や飲食店が使える適格簡易請求書は5項目

不特定多数の相手と取引する業種には、簡易な様式が認められています。対象は小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業などです。

適格簡易請求書では、6項目のうち「交付を受ける事業者の氏名または名称」を省略できます。さらに「適用税率」と「税率ごとに区分した消費税額等」はどちらか一方の記載で足ります。スーパーのレシートに宛名がないのは、この仕組みがあるからです。

法令の要求ではない項目も実務では欠かせません

請求書番号、支払期日、振込先の金融機関名と口座番号、振込手数料の負担者は、消費税法の記載事項ではありません。それでも実務では必須に近い扱いです。

支払期日が書かれていない請求書は、経理側で支払サイトを判断できません。振込先が抜けていれば問い合わせが発生します。法令が求める項目と実務が求める項目は別に数え、どちらも載せた様式にしておくと安全です。手書きの請求書で必要な記載項目を確認しておくと、項目の抜け漏れに気づきやすくなります。

実務でよく使われる様式の型

縦型と横型は明細の量で選びます

縦型はA4を縦に使い、上に宛名と発行者、中央に明細、下に振込先を置く形です。明細の行数が少ない取引に向いています。日本の商習慣では縦型が多数派です。

横型はA4を横に使い、列を多く取れる点が利点です。数量、単位、単価、税率、税抜金額、税額と列が増える製造業や卸売業で選ばれます。どちらを選んでも法的な差はありません。

明細一体型と別紙型

明細一体型は1枚の中に合計と内訳をすべて収めます。枚数が少なく、受け取る側も確認しやすい様式です。

別紙型は請求書本体に合計だけを載せ、明細を別シートにします。明細が数十行を超える取引ではこちらが読みやすくなります。ただし本体と別紙の関連が不明確だと、記載事項を満たしているか判断できません。請求書に明細番号や納品書番号を記載して、対応関係をはっきりさせておきます。

合計請求書は月まとめの取引に向きます

納品ごとに請求書を出さず、1か月分をまとめて1通にする様式を合計請求書と呼びます。締め日までの取引を集計し、月末や翌月初に発行します。

適格請求書は1つの書類だけで全項目を満たす必要がありません。国税庁のQ&Aでも、複数の書類の相互の関連が明確で取引内容を正確に認識できる方法で交付されていれば、それらの書類全体で記載事項を満たすと示されています。日々の納品書に取引年月日と内容を書き、月次の合計請求書に登録番号と税率ごとの消費税額を書くという分担が可能です。

書類を組み合わせるときの注意点

組み合わせで対応する場合、消費税額の端数処理に気をつけます。税率ごとに1回だけ端数処理を行うのが原則です。納品書ごとに端数処理をして、それを合計請求書で足し上げると要件を満たさなくなることがあります。

どの書類でどの項目を担保するかを社内で文書化しておくと、担当者が変わっても運用が崩れません。

業種と取引形態で変わる書き方

建設業の出来高請求

建設業では工事の進捗に応じて請求する出来高請求が一般的です。契約金額、当月までの出来高累計、前月までの請求済額、当月請求額という4つの数字を並べる様式にします。

累計と既請求額が並んでいないと、二重請求かどうかを受注側も発注側も判断できません。工事名と工事番号を明細の上部に固定表示しておくと、複数現場が並行しても混乱しません。

業務委託で源泉徴収がある場合

デザイン料や原稿料など源泉徴収の対象になる報酬では、源泉徴収税額を差し引いた金額を記載する欄が必要です。税率は支払金額100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分が20.42%です。

報酬150万円の例で計算すると、(1,500,000円 − 1,000,000円)× 20.42% + 102,100円 \= 204,200円が源泉徴収税額になります。様式としては「報酬額」「消費税額」「源泉徴収税額(マイナス表示)」「差引請求額」の4行を縦に並べると誤解が生まれにくくなります。源泉徴収は所得税の話なので、消費税の記載事項とは別の系統として押さえておきます。

サブスクなど継続課金の請求

月額課金では、対象期間を明記する欄が重要になります。「2026年8月1日から2026年8月31日まで」のように開始日と終了日を書きます。

日割り計算が発生する初月や解約月は、日数と単価の内訳を明細に出しておきます。契約IDやプラン名を固定欄に置いておけば、問い合わせ対応が短くなります。

8%と10%が混在する取引

飲食料品や定期購読の新聞は軽減税率8%の対象です。標準税率10%の商品と同じ請求書に載せる場合、明細の各行に税率を表示し、末尾で税率ごとの小計、消費税額、合計を分けて記載します。

軽減税率の対象品目には「※」などの記号を付け、欄外に「※は軽減税率対象」と注記する方法が広く使われています。税率が1種類しかない請求書と同じ様式を使い回すと、税率ごとの区分ができず要件を満たしません。インボイス制度に対応した請求書テンプレートを土台にすると、区分表示の抜けを防げます。

請求書 様式

紙とデータで様式はどう変わるか

紙とPDFで変わるのは保存の方法です

PDFで送る請求書も、記載事項が揃っていれば紙と同じ扱いです。様式そのものを変える必要はありません。

違いが出るのは保存の場面です。メールに添付されたPDFは電子取引に該当し、紙に印刷して保管するだけでは要件を満たしません。データのまま保存します。

電子帳簿保存法が求める要件

電子取引のデータ保存では、真実性と可視性を確保します。真実性はタイムスタンプの付与、訂正削除の履歴が残るシステムの利用、または事務処理規程の備付けで満たします。

可視性では、取引年月日、取引金額、取引先で検索できる状態にしておくことが求められます。ファイル名に「20260831_100000_〇〇株式会社」のような規則を決めておけば、専用システムがなくても対応しやすくなります。様式の設計段階で請求日と金額と取引先名を機械的に取り出せる形にしておくと、この作業が軽くなります。

電子インボイスは様式そのものが標準化されます

デジタル庁は2021年9月にJapan Peppol Authorityとなり、日本のデジタルインボイスの標準仕様としてJP PINTを策定しました。国際規格Peppolに準拠したデータ仕様です。

JP PINTでは項目名やデータ型が決められているため、「様式は自由」という前提が変わります。合わせる対象が紙面のレイアウトからデータ項目の定義に移ります。売り手と買い手のシステムが直接データを受け渡すため、転記作業そのものが減ります。将来この方式へ移る前提で、自社の請求データの項目を整理しておく価値があります。

社内で様式を統一するときの注意点

請求書番号は重複しない連番にします

請求書番号は法令上の必須項目ではありませんが、社内管理の基礎になります。「2026-0831-001」のように年月と連番を組み合わせると、発行日から探しやすくなります。

再発行時の扱いも決めておきます。同じ番号で差し替えるのか、枝番を付けるのかを統一しないと、どちらが有効な請求書か分からなくなります。

保存期間は法人と個人で違います

法人は法人税法により原則7年の保存が必要です。欠損金の繰越控除を受ける事業年度については10年に延びます。

個人事業主は所得税法上5年が原則ですが、消費税の課税事業者であれば7年の保存が必要になります。交付した適格請求書の写しも保存の対象です。10年分を見据えて、様式のファイル名規則と保管場所を決めておくと後から困りません。

経過措置の変更に様式を追随させます

免税事業者からの仕入れについては、仕入税額控除の経過措置があります。2023年10月1日から2026年9月30日までは80%、2026年10月1日から2028年9月30日までは70%、2028年10月1日から2030年9月30日までは50%、2030年10月1日から2031年9月30日までは30%と段階的に下がり、2031年10月1日以降は控除できません。

令和8年度税制改正では、同一の免税事業者などからの課税仕入れの合計額が年間1億円を超える部分に経過措置を適用できない上限も設けられました。2026年10月1日以後に開始する課税期間からの適用です。受け取る側の処理が変わるため、取引先が適格請求書発行事業者かどうかを台帳で管理し、請求書の登録番号欄と突き合わせる運用にしておきます。

テンプレートは版管理します

テンプレートを更新したら、版番号と改定日をフッターに小さく入れておきます。「Ver.3.0 2026年8月改定」のような表記です。

古い様式が現場に残っていると、記載事項の抜けが再発します。共有ドライブ上の1か所を正本と決め、そこ以外のコピーは使わないルールにしておきます。請求書実務のお役立ち情報で制度変更を確認しながら、年に1回は見直す時期を決めておくとよいでしょう。

請求書の様式についてよくある質問

手書きの請求書でも有効ですか

有効です。国税庁も、必要な事項が記載されていれば手書きでも適格請求書になると示しています。ただし登録番号や税率ごとの消費税額を書き漏らすリスクは高くなります。金額の書き間違いも起きやすいため、件数が増えてきたら作成ツールへの切り替えを検討します。

「請求書」というタイトルでなくても構いませんか

構いません。記載事項が揃っていれば、納品書や領収書、レシートといった名称でも適格請求書として扱われます。実務上は受け取る側が仕分けしやすいように「御請求書」「請求書」と明示するのが無難です。

押印は必要ですか

法律上は不要です。請求書に印鑑がなくても有効で、仕入税額控除にも影響しません。ただし取引先の社内規程で押印済みの請求書を求められることはあります。相手の要求と自社の運用効率を照らして決めます。

消費税の端数処理はどう決めればよいですか

税率ごとに1回だけ端数処理を行います。切り上げ、切り捨て、四捨五入のどれを選ぶかは事業者が決められます。明細の行ごとに端数処理をして合計する方法は認められていません。テンプレートの計算式を作る段階で、どこで丸めるかを固定しておきます。

取引先から様式を指定された場合は従う必要がありますか

法律上の義務はありません。とはいえ受け取る側の経理システムが特定の並びを前提にしていることも多く、断ると支払処理が遅れる可能性があります。指定された様式でも自社に必要な項目が入るなら合わせるのが現実的です。項目が足りない場合は、追記した様式を送って差し支えないかを事前に確認します。取引先ごとに様式が増えるときは、正本テンプレートと差分の一覧を作って管理します。

Excelとクラウドソフトはどちらでテンプレートをつくるべきですか

月の発行件数が10件程度までなら、Excelでも運用は回ります。件数が増えたときに負担になるのは、連番の重複、税率ごとの端数処理、そして電子取引データの検索要件への対応です。この3点が手作業になってくると、クラウドソフトのほうが総作業時間は短くなります。判断材料は請求件数と、取引先が適格請求書発行事業者かどうかを管理する手間の大きさです。

海外の取引先向けの請求書はどうすればよいですか

輸出取引は消費税が免税になるため、適格請求書の記載事項をそのまま当てはめる必要はありません。通貨、支払条件、送金手数料の負担者を明記した英語表記の様式を別に用意するのが実務的です。国内向けと海外向けでテンプレートを分けておくと混乱しません。

まとめ

請求書の様式は法律で指定されていません。国税庁も適格請求書の様式は法令等で定められていないと明記しています。法律が決めているのは記載事項で、適格請求書は6項目、適格簡易請求書は5項目です。

様式の型は取引の性質で選びます。明細が少なければ一体型、多ければ別紙型、月まとめなら合計請求書という具合です。建設業の出来高請求、源泉徴収を伴う業務委託、継続課金、複数税率の混在では、それぞれ必要な欄が変わります。

紙とPDFで記載事項は変わりませんが、電子取引のデータは真実性と可視性の要件を満たして保存します。JP PINTによる電子インボイスでは、紙面のレイアウトよりデータ項目の定義が基準になります。

社内で統一するときは、請求書番号の連番、保存期間(法人7年・欠損金の繰越があれば10年、個人事業主は5年または7年)、経過措置の変更への追随、テンプレートの版管理という4点を押さえます。様式に法的な指定がない分、社内のルールを文書にしておけば、担当者が交代しても請求書の品質は落ちません。

この記事の投稿者:

hasegawa

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