請求書の基礎知識

請求書が届かないときの対処法|確認手順と催促文例、支払期日への備え

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請求書が届かない

支払予定に入れていたはずの請求書が、期日の直前になっても手元にない。経理を担当していると、年に何度かはこの場面に出会います。振込を止めれば取引先との関係に影響しますし、金額を推測して先に振り込めば、あとで消費税の処理に困ります。どちらも避けたいところです。

この記事では、社内と受信環境を確認する手順、取引先に催促するときの文例、支払期日に間に合わないときの判断という順で整理します。請求書がないまま支払ってしまった場合の仕入税額控除の扱い、決算をまたぐときの未払金計上、そして同じことを繰り返さないための受領ルールまで扱います。読み終えたときに「今日どこまで動くか」が決まっている状態を目標にしました。

専門知識はほとんど要りません。確認する場所と連絡する順番をあらかじめ決めておけば、次に同じ場面が来たときに迷わなくなります。

目次

請求書が届かないときに最初に確認する5つの場所

取引先に連絡する前に、社内と受信環境を見ておきます。送り手のミスに見えて、実際には受け手の側で止まっていることが少なくありません。順番に潰していけば、5分から10分で切り分けられます。

郵送の遅延を疑う

紙の請求書なら、配達日数から確かめます。日本郵便は2021年10月から普通郵便の土曜日配達を休止し、お届け日数を1日程度繰り下げました。現在はおおむね差出日から2日後から3日後が目安になります。月末の金曜日に投函された請求書が、翌週の火曜日以降に届くことも珍しくありません。

締め日が月末で支払期日が翌月末という取引なら、数日の遅れは吸収できます。ただし支払期日が翌月10日のような短いサイクルだと、郵送の遅れがそのまま処理の遅れになります。取引先ごとに、いつ投函されるはずなのかを把握しておくと判断が早くなります。

メールの受信環境を確認する

PDFの請求書をメールで受け取っている場合、迷惑メールフォルダに振り分けられている可能性があります。添付ファイル付きのメールは、送信元のドメイン設定やファイル形式によってフィルタに引っかかりやすい傾向があります。

次の場所を順に見てください。

  • 迷惑メールフォルダ
  • アーカイブや自動振り分け先のフォルダ
  • ゴミ箱(自動削除の設定があれば期間内のみ)
  • メールアドレス全体を対象にした検索(件名ではなく取引先名で検索します)

社内で止まっていないか調べる

紙の請求書は、経理に回る前に営業担当や現場の机で止まることがあります。開封したまま引き出しに入れてしまった、他社の書類と一緒にファイリングされてしまった、といった事故は起こります。

受領印や受付台帳を運用している会社なら、そこに記録が残っているか確認します。記録がなければ社内に届いていないと判断でき、取引先への連絡に進めます。

送付先の変更が伝わっていないか確かめる

オフィスの移転、部署名の変更、経理担当者の入れ替わり。こうした社内の変化が取引先に伝わっていないと、請求書は旧住所や退職した担当者のメールアドレスへ送られます。差出人に返送されるまで数週間かかることもあります。

直近半年のうちに送付先に関わる変更があったなら、この線を先に疑ってください。

電子送付への切り替えを見落としていないか

取引先が請求書の発行方法を郵送から電子に切り替えていて、その案内メールを見落としているケースもあります。専用のポータルサイトにログインして自分でダウンロードする方式に変わっていれば、待っていても何も届きません。

案内メールは請求書本体とは別の件名で届くため、探すときは差出人のドメインで検索するほうが見つかりやすくなります。

取引先への催促は電話とメールを使い分けます

社内を確認しても見つからなければ、取引先に連絡します。責める調子にならないことが第一です。相手の送付ミスと決めつけると、あとで自社の受信漏れだった場合に気まずくなります。

連絡の前に手元にそろえておく情報

問い合わせは、特定に必要な情報を添えるほど早く解決します。

  • 対象の取引内容と契約名
  • 締め日と発行予定日
  • 想定している金額(概算でも構いません)
  • 自社の正しい送付先(住所とメールアドレス)

メール文例:期日まで余裕があるとき

件名:〇年〇月分ご請求書の送付状況について

株式会社〇〇 経理ご担当者様

いつもお世話になっております。株式会社△△の〇〇です。

〇年〇月分のご請求書について、本日時点で弊社にて確認ができておりません。弊社側での受領漏れの可能性もございますので、念のため送付状況をご確認いただけますでしょうか。

対象取引:〇〇〇〇

締め日:〇月〇日

弊社送付先:〒000-0000 〇〇(メール:〇〇@〇〇)

すでにご送付済みでしたら、お手数ですが再送をお願いできますと助かります。

メール文例:支払期日が迫っているとき

件名:ご請求書送付のお願い(〇月〇日支払期日)

株式会社〇〇 経理ご担当者様

お世話になっております。株式会社△△の〇〇です。

〇月〇日を支払期日として予定しております〇年〇月分のご請求書が、本日時点で未着となっております。弊社の振込処理の締めが〇月〇日となるため、同日までにPDFでのご送付をいただけますと、期日どおりのお支払いが可能です。

原本の郵送は後日で問題ございません。ご都合が難しい場合は、お支払い時期についてあらためてご相談させてください。

期日が近いときは、原本を待たずにPDFで先に受け取る提案が有効です。相手の事務負担が小さく、承諾を得やすい方法です。

電話で伝えるときの順番

メールの返信がない、あるいは期日が翌営業日という状況なら電話に切り替えます。伝える順番を決めておくと短く済みます。

1. 用件を先に言います(請求書が未着であること)

2. 対象の月と取引内容を伝えます

3. 期日と自社の処理締めを伝えます

4. PDFでの先行送付を依頼します

5. 送付先を口頭で確認します

通話後は、決まった内容をメールで送って記録に残します。口約束のままにすると、後日の確認ができません。

支払期日が近いときの実務判断

請求書が届かないまま期日が近づくと、支払を止めるか進めるかの判断を迫られます。どちらにもリスクがあるため、判断の材料を整理しておきます。

支払を止めるリスク

請求書がないから支払わない、という対応は原則として認められません。支払義務は契約と履行によって発生するもので、請求書は金額と内容を確認する書類にすぎません。契約書に支払期日が定められていれば、請求書の未着を理由に支払を遅らせると債務不履行を問われる可能性があります。

委託取引ではさらに注意が必要です。下請法は2026年1月1日施行の改正で中小受託取引適正化法(取適法)に変わり、支払期日は給付を受領した日から60日以内で、その期日までに現金で支払うことが求められます。手形による支払は禁止されました。委託側の立場にあるなら、請求書の未着は支払遅延の言い訳になりません。

請求書なしで先に振り込むリスク

逆に、金額を推測して振り込むのも危険です。単価や数量の認識がずれていれば、過払いや不足が発生します。過払い分の返金交渉は手間がかかり、相殺で処理すると帳簿が複雑になります。

消費税の面でも不利になります。仕入税額控除を受けるには、適格請求書と帳簿の両方の保存が原則として必要です。振込の記録だけでは要件を満たしません。

支払通知書や仕入明細書で代替する

実務的な折衷案として、買手が作成する書類で代替する方法があります。買手が作成した仕入明細書や支払通知書は、売手の確認を受けたものであれば、仕入税額控除の要件を満たす請求書等として扱えます。

確認の方法には、電子メールや通信回線を通じて内容を送り、相手から確認の通知を受け取るやり方があります。記載する登録番号は売手のものになる点に注意してください。継続的な取引で毎月請求書の到着が遅れるなら、支払通知書方式に切り替える交渉をしておくと、待つ必要がなくなります。支払処理の全体像は請求書の支払い処理を解説した記事で確認できます。

期日の調整を申し出る

金額の確定が間に合わないと判断したら、早めに支払時期の相談をします。期日を過ぎてから連絡するより、期日前に一報を入れるほうが信用を保てます。「請求書の到着を確認できないため、〇月〇日に振込日を変更させてください」と具体的な日付を示して伝えます。

請求書なしで支払った場合の消費税と仕入税額控除

支払を先に済ませたあと、書類がそろわないまま課税期間の末日を迎える。この状態が消費税で最も影響の大きい論点です。

控除の要件は書類と帳簿の両方

仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書等の保存と、一定の事項を記載した帳簿の保存が必要です。適格請求書には、発行事業者の氏名または名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した対価の額と適用税率、税率ごとに区分した消費税額等、交付を受ける事業者の氏名または名称の記載が求められます。

保存期間も決まっています。帳簿はその閉鎖の日、請求書等は受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日を起点として、7年間保存します。6年目と7年目については、帳簿と請求書等のいずれか一方の保存で足ります。記載要件の詳細は適格請求書と領収書の違いを整理した記事が参考になります。

後日交付を受ければ控除できます

支払が先で書類が後になっても、控除そのものが消えるわけではありません。適格請求書発行事業者には、課税事業者から求められたときに適格請求書を交付する義務があります。依頼すれば発行してもらえる立場だと理解しておいてください。

大切なのは時期です。仕入税額控除は課税仕入れを行った日の属する課税期間で行います。請求書の到着が遅れても課税仕入れの時期は動きません。申告までに書類がそろっていれば処理に支障はないため、決算作業のうちに回収を済ませます。

なお、記載内容に誤りがあった場合、買手が勝手に書き直すことはできません。修正した適格請求書の交付を売手に依頼します。

帳簿だけの保存で済む取引もあります

例外として、帳簿の保存だけで控除が認められる取引があります。代表的なものが少額特例です。基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについて、帳簿の保存だけで控除を受けられます。適用期間は令和11年(2029年)9月30日までです。

1万円未満の判定は、一回の取引の税込金額で行います。商品1個ごとの金額ではありません。特定期間の判定を給与支払額に置き換えることもできません。

このほか、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送や、3万円未満の自動販売機での商品購入なども、帳簿の保存だけで控除できます。届かない請求書が少額の取引に関するものなら、この特例に当てはまるか先に確認したほうが早く片づきます。

免税事業者からの仕入れは控除割合が変わります

取引先が免税事業者で適格請求書を発行できない場合は、経過措置の対象になります。控除できる割合は段階的に縮小しており、2026年10月1日から2028年9月30日までは70%です。その後は2028年10月から50%、2030年10月から30%へと下がり、2031年10月以降は控除できません。

令和8年度税制改正では、適用に上限が設けられました。同一の年または事業年度において、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込)が1億円を超える場合、超えた部分は経過措置の対象外になります。

改正前のスケジュールでは2026年10月から50%とされていたため、この数値のまま書かれた解説が今も多く残っています。社内の資料を更新するときは、控除割合を国税庁の公表内容で確かめてください。

請求書が届かない

決算や月次締めに間に合わないときの未払金計上

書類がそろわないまま締め日を迎えたときは、見積りの金額で費用を計上します。会計処理は現金が動いた時点ではなく、取引が発生した事実に基づいて行うためです。

未払金と未払費用を使い分けます

役務の提供や物品の引き渡しが完了していて支払が済んでいない債務は、未払金で処理します。一方、家賃や保守料のように継続的な役務提供の途中で、期間の経過に応じて発生している債務は未払費用(経過勘定)で処理します。

具体例で見ると分かりやすくなります。3月に納品を受けた外注費で請求書が未着なら、契約単価と数量から金額を算定し、外注費と未払金で計上します。勘定科目の違いは未払金と未払費用の違いを解説した記事で整理されています。

概算計上と翌期の差額調整

金額が確定していない場合は、合理的な根拠に基づいて概算で計上します。根拠になるのは契約書の単価、注文書、過去の同一取引の実績、作業報告書の数量です。算定の根拠は必ずメモとして残してください。税務調査で説明を求められる場面があります。

請求書が届いて金額が確定したら、差額を調整します。差額が小さければ翌期の費用または収益として処理する扱いが一般的です。金額が大きく、当期の損益を歪めるほどであれば、修正申告や更正の請求の検討対象になります。

消費税は計上時期と控除時期を分けて考えます

会計上の未払金計上と、消費税の仕入税額控除は別の話です。概算で未払金を立てても、適格請求書の保存要件を満たしていなければ、その課税期間で控除はできません。決算整理では、費用計上が済んでいる取引のうち書類が未回収のものを一覧にして、申告までに回収する運用が安全です。

受領ルールの整備で再発を防ぎます

一度の未着はミスですが、毎月起きるなら仕組みの問題です。受領の方法とルールを見直します。

受け取り方法を電子に寄せます

郵送は配達日数と社内の運搬という2つの遅延要因を抱えます。メールやポータル経由の受領に切り替えれば、この2つがなくなります。取引先に依頼するときは、指定の受領用アドレスを1つ用意して案内すると、担当者の異動や不在の影響を受けません。

電子で受け取る場合は電子帳簿保存法への対応が必要です。メールやWebで受け取った請求書は、2024年1月から電子データのまま保存することが義務づけられており、紙に印刷して保存するだけでは要件を満たしません。日付、金額、取引先で検索できる状態にしておきます。請求書処理の効率化の進め方もあわせて確認しておくと、移行の段取りが立てやすくなります。

到着期限と督促のタイミングを決めます

取引先ごとに「いつまでに届くはずか」を決め、その日を過ぎたら督促する運用にします。担当者の記憶に頼らず、支払予定表に到着チェックの欄を設けると漏れません。

  • 締め日の翌営業日から起算して5営業日で未着なら1回目の連絡をします
  • 支払処理の締めの3営業日前で未着なら電話に切り替えます
  • 2回目の連絡以降は記録を残します

担当者が不在でも回る形にします

受領用のアドレスや台帳を1人で抱えていると、その人が休んでいる週に未着が発覚しません。共有メールボックスに切り替えて、少なくとも2人が確認できる状態にします。取引先の連絡先も、担当者名に加えて代表番号と部署のアドレスを控えておくと、相手が不在のときに詰まりません。

よくある質問

請求書が届かない場合、支払わなくてもよいのでしょうか

支払義務は契約と履行によって発生するため、請求書がないことを理由に支払を止めるのは原則として適切ではありません。契約書に支払期日の定めがあれば、その期日に従います。金額が確定できないときは、支払を止めるのではなく、期日前に取引先へ連絡して振込日の調整を相談してください。委託取引では取適法の60日以内という制限もあるため、遅延の判断は慎重に行います。

請求書を再発行してもらうときは何と伝えればよいですか

再発行という言葉を使うと、相手が発行済みの番号を管理している場合に混乱することがあります。「送付状況を確認したい」「PDFで再送してほしい」と伝えるほうが行き違いが少なくなります。原本の郵送が必要なら、PDFを先に受け取ってから原本を後送してもらう順番で依頼します。

請求書が届かないまま決算を迎えたらどうなりますか

会計上は、契約単価や納品実績をもとに概算で費用を計上し、未払金または未払費用として負債に立てます。算定根拠は書面で残してください。消費税は別で、適格請求書の保存要件を満たしていない取引はその課税期間で控除できないため、申告までに書類を回収する必要があります。

少額の取引なら請求書がなくても控除できますか

条件を満たせば可能です。基準期間の課税売上高が1億円以下または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについて帳簿の保存だけで控除を受けられます。適用は令和11年9月30日までの課税仕入れが対象です。3万円未満の公共交通機関の運賃や自動販売機での購入も、帳簿の保存だけで済みます。

取引先が請求書を送ってこない理由には何がありますか

発行漏れ、送付先の登録間違い、担当者の休職や退職による引き継ぎ漏れ、システム移行中の不具合などが実際に起きています。相手の資金繰りが悪化して事務が止まっている場合もあります。何度も未着が続く取引先については、支払通知書方式への切り替えや、取引条件の見直しを検討する材料になります。

まとめ

請求書が届かないときは、社内と受信環境の確認から始めます。郵送の遅延、迷惑メールフォルダ、社内での滞留、送付先の変更、電子送付への切り替えの5点を押さえれば、多くは切り分けられます。

取引先への連絡は、責める調子を避け、対象の取引と期日、自社の処理締めを添えて依頼します。期日が近ければ、PDFでの先行送付を提案する方法が現実的です。

支払を止める判断は慎重に行い、金額が確定しないなら期日前に振込日の相談をします。書類がそろわないまま締めを迎えたら、概算で未払金を計上し、根拠を残します。消費税は会計処理と切り離して考え、適格請求書の回収を申告までに終わらせます。免税事業者からの仕入れは、2026年10月から控除割合が70%に変わる点を忘れないでください。

再発防止まで手を入れられるなら、受領方法を電子に寄せ、到着期限と督促のタイミングを決め、受領用のアドレスを複数人で見る形にします。ここまで整えておけば、次に未着が起きても、判断に迷う時間はずいぶん短くなります。

この記事の投稿者:

hasegawa

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