会計の基礎知識

資産除去債務の仕訳を取得・決算・除去の数値例で解説

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資産除去債務-仕訳

資産除去債務は、取得時に除去費用の現在価値を資産と負債に両建てします。決算時には減価償却費と利息費用を計上し、除去時には資産除去債務を取り崩して、実際の支払額との差額を履行差額として処理します。

この記事では、賃借オフィスの原状回復を例に、取得から5年後の除去、税務調整、税効果会計までを数値で確認します。金額は税抜きで、割引率と法定実効税率は説明用の仮定です。

資産除去債務とは?仕訳の前に押さえる3つの要件

定義と計上時期

資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発、通常の使用によって生じる、将来の除去に関する法律上の義務およびこれに準ずるものです。企業会計基準第18号第3項では、法令や契約による義務などが対象とされています。

ここでいう除去には、売却、廃棄、リサイクルなどが含まれます。一方、資産の転用や用途変更、単に遊休状態にすることは除去に当たりません。

資産除去債務は、義務が発生した時点で計上します。ただし、金額を合理的に見積もれない場合は計上せず、見積もれるようになった時点で計上します。計上していない場合は、その理由を注記します。

対象になるもの・ならないもの

区分具体例会計上の扱い
対象賃借オフィスや店舗の原状回復義務契約上の義務として対象
対象アスベストやPCBなどの有害物質の除去法令上の義務として対象
対象定期借地の契約終了時における建物の撤去契約上の義務として対象
対象土壌汚染の調査や浄化法令上の義務として対象
対象法令や契約で撤去方法が定められた機械設備除去義務として対象
対象外使用期間中の通常の修繕資産除去債務の対象外
対象外使用中に発生する環境修復企業会計基準第18号第24項により対象外
対象外自主的な設備更新や任意の撤去法令や契約上の義務がなければ対象外

中小企業も計上が必要か

上場会社や会計監査を受ける会社は、企業会計基準第18号に従って資産除去債務を計上します。

一方、「中小企業の会計に関する指針」では、資産除去債務を各論の独立した項目として扱っていません。「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」だけで、必ず計上を求められているわけではありません。

実務では、原状回復費用を支出時に処理する企業もあります。ただし、金融機関への説明や監査対応で計上を求められる場合もあるため、自社の会計方針は顧問税理士に確認してください。

資産除去債務の仕訳は3ステップ

前提条件と割引現在価値の計算

次の条件で原則法を確認します。

> * 賃借オフィスの内装工事費は6,000,000円です。

> * 内装は建物附属設備として計上します。

> * 賃貸借契約に原状回復義務があります。

> * 5年後の原状回復費用は1,200,000円と見積もります。

> * 使用見込期間と耐用年数は5年です。

> * 減価償却は定額法、残存価額0円として単純化します。

> * 割引率は1.5%と仮定します。

耐用年数や減価償却の基本は、減価償却費の計算と耐用年数も参考にしてください。

資産除去債務は、割引前の将来キャッシュ・フローを割引現在価値に換算して計上します。

1,200,000円 ÷ 1.015^5 = 1,200,000円 ÷ 1.077284 ≒ 1,113,912円

割引率には、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前利率を使います。実務では、除去までの残存期間に見合う国債利回りなどを参考にします。上記の1.5%は説明用の仮定であり、実際の利回りを示すものではありません。

ステップ1 取得時の仕訳

企業会計基準第18号第7項では、資産除去債務の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加えます。

建物附属設備の取得価額は、現金支払額6,000,000円と資産除去債務1,113,912円を合計した7,113,912円です。

借方金額貸方金額
建物附属設備7,113,912円現金預金6,000,000円
資産除去債務1,113,912円

この仕訳では、将来の原状回復費用を現在の負債として計上し、同額を設備の取得原価にも含めます。

ステップ2 決算時の仕訳

決算では、資産側と負債側をそれぞれ処理します。

資産側では、資産除去債務を含めた建物附属設備を減価償却します。負債側では、時の経過による資産除去債務の増加を利息費用として計上します。

1年目の減価償却費は、次のとおりです。

7,113,912円 ÷ 5年 = 1,422,782.4円

端数は最終年度で調整し、1〜4年目は1,422,782円、5年目は1,422,784円とします。

1年目の利息費用は、期首の資産除去債務残高に割引率を乗じて計算します。

1,113,912円 × 1.5% = 16,708.68円 ≒ 16,709円

1年目の仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
減価償却費1,422,782円減価償却累計額1,422,782円
利息費用16,709円資産除去債務16,709円

減価償却の仕組みや仕訳は、減価償却費の意味と仕訳で詳しく確認できます。

利息費用は、期首の資産除去債務残高に当初の割引率1.5%を乗じます。企業会計基準第18号第9項に基づく処理です。

ステップ3 除去時の仕訳

5年後に内装を撤去し、建物附属設備を除却します。5年間の減価償却が完了しているため、減価償却累計額と建物附属設備を相殺します。

5年間の利息費用の累計により、資産除去債務の残高は1,200,000円になります。実際の原状回復費用が1,300,000円だった場合、差額100,000円を履行差額として費用計上します。

借方金額貸方金額
減価償却累計額7,113,912円建物附属設備7,113,912円
資産除去債務1,200,000円現金預金1,300,000円
履行差額100,000円

実際の支払額が1,150,000円であれば、差額50,000円は履行差額の貸方に計上します。除却時の固定資産の処理は、固定資産の除却処理も確認してください。

減価償却累計額の取り扱いは、減価償却累計額の実務処理で確認できます。

5年間の推移

利息費用は、期首の資産除去債務残高に1.5%を乗じます。負債残高の増加に伴い、利息費用も後年ほどわずかに増加します。

年期首残高利息費用期末残高減価償却費(うち除去費用分)
1年目1,113,912円16,709円1,130,621円1,422,782円(222,782円)
2年目1,130,621円16,959円1,147,580円1,422,782円(222,782円)
3年目1,147,580円17,214円1,164,794円1,422,782円(222,782円)
4年目1,164,794円17,472円1,182,266円1,422,782円(222,782円)
5年目1,182,266円17,734円1,200,000円1,422,784円(222,784円)

減価償却費の合計は7,113,912円です。除去費用分の減価償却費は、1,113,912円に相当します。利息費用の合計は86,088円で、当初の資産除去債務1,113,912円と合計すると、最終的に1,200,000円になります。

利息費用・履行差額の勘定科目と表示区分

利息費用は支払利息ではない

利息費用は、資産除去債務を割引計算したことによる、時の経過に伴う負債の増加です。

勘定科目には「利息費用」を使います。ただし、通常の借入金にかかる「支払利息」と同じ営業外費用には表示しません。企業会計基準第18号第13項および第14項では、関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に表示します。

製造設備に関する利息費用であれば売上原価、本社の建物附属設備に関する利息費用であれば販売費及び一般管理費に含めます。

履行差額も原則として同じ区分

履行差額は、資産除去債務の帳簿価額と実際の除去費用との差額です。企業会計基準第18号第15項では、原則として除去費用の費用配分額と同じ区分に表示します。

製造設備の撤去で発生した差額は売上原価、本社設備の撤去で発生した差額は販売費及び一般管理費に含める方法が基本です。

当初の除去予定時期より著しく早く除去することになった場合など、差額が異常な原因で生じたときは、特別損益として処理することがあります。判断に迷う場合は、監査人や顧問税理士に確認してください。

貸借対照表の表示と注記

資産除去債務は、履行時期に応じて流動負債または固定負債に表示します。

履行見込み時期表示区分
1年以内流動負債
1年を超える時期固定負債

企業会計基準第18号第16項では、次の事項を注記します。

> * 資産除去債務の内容

> * 履行までの見込期間や割引率などの前提

> * 期中における資産除去債務の増減

> * 見積り変更の概要と影響額

> * 資産除去債務を計上していない場合の理由

賃借オフィス・店舗は敷金の簡便法も使える

簡便法の考え方と条件

賃借オフィスや店舗の原状回復義務については、敷金を使った簡便法を適用できる場合があります。

適用指針第21号第9項では、敷金が資産計上されている場合、敷金のうち最終的に回収できないと認められる金額を合理的に見積もり、そのうち当期の負担に属する金額を費用計上できます。

当期の負担額は、同種の賃借建物などへの平均的な入居期間など、合理的な償却期間を使って計算します。

敷金の基本的な意味や返還条件は、敷金の基礎知識も参考にしてください。

簡便法の仕訳例

次の条件で計算します。

> * 敷金の差入額は3,000,000円です。

> * 退去時に返還されない見込額は600,000円です。

> * 同種物件の平均的な入居期間は5年です。

> * 毎年の費用計上額は600,000円 ÷ 5年=120,000円です。

時点借方金額貸方金額
入居時敷金(差入保証金)3,000,000円現金預金3,000,000円
各決算敷金償却(販売費及び一般管理費)120,000円敷金120,000円
退去時現金預金2,400,000円敷金2,400,000円

5年間の償却後は、敷金の帳簿残高が2,400,000円になります。返還額が2,300,000円であれば、差額100,000円を退去時の費用として処理します。

退去時の敷金精算書を整理する場合は、敷金精算書の作成方法も活用できます。

原則法と簡便法の比較

比較項目原則法簡便法
基本処理除去費用を現在価値で負債計上し、同額を資産に加算敷金の回収不能見込額を費用計上
負債表示資産除去債務を計上資産除去債務を計上しない
費用処理減価償却費と利息費用敷金償却などの費用
償却期間関連する資産の耐用年数など同種の賃借建物への平均的な入居期間など
期間損益利息費用により後年ほど費用がわずかに増える原則として毎期均等
実務負担割引計算や見積り変更の管理が必要計算や管理が比較的簡単

税務では損金にならない:別表四の調整と税効果会計の仕訳

税務上の扱いと別表四の加算・減算

法人税法では、事業年度終了日までに債務が確定していない費用は、原則として損金に算入できません。資産除去債務の計上額、利息費用、除去費用相当額の減価償却費は、実際に除去するまで損金になりません。

そのため、会計上の費用を別表四で加算し、除去した年度に実際の支出額を基準として減算します。

建物附属設備の税務上の取得価額は6,000,000円です。会計上加算した除去費用相当額1,113,912円は、税務上の取得価額に含めません。

年加算(減価償却費のうち除去費用分+利息費用)減算
1年目222,782円+16,709円=239,491円—
2年目222,782円+16,959円=239,741円—
3年目222,782円+17,214円=239,996円—
4年目222,782円+17,472円=240,254円—
5年目222,784円+17,734円=240,518円1,200,000円

5年間の加算額は合計1,200,000円です。除去年度には、過年度に加算した累計額を一括で減算します。

除去年度は、会計上の履行差額100,000円も費用になります。別表四で1,200,000円を減算するため、会計上の履行差額100,000円と合わせた税務上の損金は、実際の支払額1,300,000円と一致します。

敷金の簡便法を使う場合、返還されない敷金は税務上の繰延資産として扱われる可能性があります。償却期間や少額の場合の処理は、本記事の主題から外れるため、顧問税理士に確認してください。

税効果会計の仕訳

税効果会計では、会計と税務の差から生じる一時差異を処理します。法定実効税率は30%、繰延税金資産の回収可能性はあると仮定します。

計上時は、資産除去債務1,113,912円について将来減算一時差異が生じ、除去費用分の資産1,113,912円について将来加算一時差異が生じます。

1,113,912円 × 30% = 334,173.6円 ≒ 334,174円

借方金額貸方金額
繰延税金資産334,174円繰延税金負債334,174円

1年目末は、期末の一時差異に税率を乗じて残高を洗い替えます。

> * 資産除去債務1,130,621円 × 30%=繰延税金資産339,186円

> * 除去費用分の資産残高891,130円 × 30%=繰延税金負債267,339円

> * 繰延税金資産は5,012円増加します。

> * 繰延税金負債は66,835円減少します。

> * 法人税等調整額は貸方71,847円です。

借方金額貸方金額
繰延税金資産5,012円法人税等調整額71,847円
繰延税金負債66,835円

各期末に一時差異の残高を計算し、繰延税金資産と繰延税金負債を更新します。除去時は、残っている繰延税金資産と繰延税金負債をそれぞれゼロにします。

同一の納税主体に生じた繰延税金資産と繰延税金負債は、一定の要件を満たす場合に相殺表示します。繰延税金資産は、将来の課税所得による回収可能性を検討して計上してください。

消費税の扱い

資産除去債務の計上、利息費用、除去費用相当額の減価償却は、課税取引ではありません。

除去時に支払う撤去工事費や原状回復工事費は課税仕入れです。税込みで支払う場合は、仕訳に仮払消費税等を追加します。仕入税額控除の時期は、原則として役務の提供を受けた時です。

見積りを変更するときの仕訳

除去費用が増えた場合

原則法では、除去費用の見積り変更を過去に遡って修正せず、変更時点から将来に向かって処理します。

原則法の3年目末に、5年後の除去費用見積額が1,200,000円から1,500,000円に増えたとします。増加額は300,000円、残存期間は2年です。変更時点の割引率は2.0%と仮定します。

300,000円 ÷ 1.02^2 = 288,350.6円 ≒ 288,351円

この金額を資産除去債務と建物附属設備に加算します。

借方金額貸方金額
建物附属設備288,351円資産除去債務288,351円

増加部分は、新たな負債が発生したものとして、変更時点の割引率を使います。以後の利息費用は、当初分を1.5%、増加分を2.0%で区分して計算します。

除去費用が減った場合

除去費用の見積りが1,200,000円から1,000,000円に減少した場合、減少額は200,000円です。残存期間は2年、負債計上時の割引率は1.5%とします。

200,000円 ÷ 1.015^2 = 200,000円 ÷ 1.030225 ≒ 194,132円

減少額は、資産除去債務と建物附属設備から減額します。

借方金額貸方金額
資産除去債務194,132円建物附属設備194,132円

企業会計基準第18号では、見積りの増加部分は新たな負債の発生と同様に扱って変更時点の割引率を使い、減少部分には負債計上時の割引率を使うと定めています。

2024年改正:新リース会計基準と資産除去債務

2024年9月13日公表の改正版では、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の公表に伴い、資産除去債務に関する結論の背景などが改正されました。

適用時期はリース会計基準と同じです。2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用します。また、2025年4月1日以後開始する年度から早期適用できます。

企業会計基準第18号第23項では、使用権資産も資産除去債務の対象になることが明記されています。リース取引で認識した使用権資産について、契約上の原状回復義務などがあれば、資産除去債務の検討が必要です。

賃借オフィスや店舗で簡便法を使う場合は、改正後も適用指針第21号の規定に従って判断します。新リース会計基準の適用によって簡便法が廃止される、または無条件に継続できると断定せず、適用指針と自社の会計方針を確認してください。

よくある質問

利息費用は支払利息として処理できますか?

いいえ。利息費用は、原則として関連する有形固定資産の減価償却費と同じ費用区分に表示します。通常の借入金にかかる営業外費用の支払利息とは区別してください。

履行差額は特別損失ですか?

原則として、関連する除去費用の費用配分額と同じ区分に表示します。著しく早期の除去など異常な原因で生じた差額は、特別損益として処理することがあります。

賃借オフィスは必ず資産除去債務を計上しますか?

敷金を資産計上している場合は、適用指針第21号第9項に基づき、簡便法を選べる場合があります。契約内容や敷金の回収見込みを確認してください。

中小企業も必ず計上しますか?

「中小企業の会計に関する指針」では、資産除去債務を独立した項目として扱っていません。ただし、金融機関や監査対応などで計上を求められる場合があるため、顧問税理士に確認してください。

資産除去債務は税務上の損金になりますか?

資産除去債務の計上額や会計上の利息費用、除去費用相当額の減価償却費は、原則として計上時には損金になりません。別表四で加算し、実際に除去費用を支出した年度に減算します。

割引率はどのように決めますか?

貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前利率を使います。実務では、除去までの残存期間に見合う国債利回りなどが目安です。原則として当初の割引率を使い、見積りの増加部分だけは変更時点の割引率を使います。

まとめ

資産除去債務は、取得時に除去費用の現在価値を資産と負債に両建てします。決算時には減価償却費と利息費用を計上し、除去時には資産除去債務を取り崩して履行差額を処理します。

賃借オフィスや店舗では、敷金の回収不能見込額を費用化する簡便法を使える場合があります。税務上は除去まで損金にならないため、別表四の加算・減算と税効果会計が必要です。

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この記事の投稿者:

hasegawa

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