
監修|税理士(氏名・所属事務所・監修日は公開前に記入してください。監修者が確定した時点で、タイトルとH1に「税理士監修」の表記を戻せます)
執筆|INVOY編集部
公開日|2025年3月17日 最終更新日|2026年8月5日
この記事の要点は次の3点です。
- 法人カードの個人利用は原則NGで、根拠は「会員規約」と「税務」の2系統に分かれます。
- 会社が負担したまま役員に返済させない場合は役員への給与として扱われ、法人側で損金にならず役員個人にも課税されます。
- 使ってしまった場合は速やかに会社へ報告し、金額と返済見込みに応じて仮払金または役員貸付金で処理します。
「法人カードでうっかり私物を買ってしまった」「経営者なのだから自分のカードと同じように使ってよいのでは」。そう考えて処理を後回しにすると、経費として認められないだけでは済みません。会社が負担したまま返済されない金額は役員への給与として扱われ、法人の利益から差し引けず、役員本人にも所得税と住民税がかかります。
この記事では、原則NGとされる理由を会員規約と税務の2系統に整理し、金額と返済状況に応じた仕訳を3つの表で示します。さらに、どこから役員への給与になるのかを判定する表、個人事業主の家事按分、社員による立替払いとの違い、そのまま使える社内規程のひな形までをまとめました。
目次
- 結論|法人カードの個人利用は原則NG。理由は「規約」と「税務」の2系統
- 私的利用が引き起こす5つの問題
- 法人カードで個人の買い物をした場合の仕訳
- どこから「役員への給与」になるのか|課税判定の分かれ目
- ポイントやマイルを個人的に使ってよいか
- 会社決済型と個人決済型の違い|個人決済型なら私的利用してよいのか
- 社員が個人カードで立替払いするのは適法か|個人利用との違い
- 個人事業主が事業用カードで私的支出をした場合|家事按分の考え方
- 税務調査では何を見られるのか
- 私的に使ってしまった場合の対処法
- 私的利用を防ぐ仕組みと社内体制
- そのまま使える「法人カード利用規程」のひな形
- よくある質問
- 請求書をクレジットカード支払い銀行振込をクレカ払いに置き換え
- まとめ
結論|法人カードの個人利用は原則NG。理由は「規約」と「税務」の2系統
NGとされる理由は2つの系統に分かれます。1つはカード会社との契約、つまり会員規約の問題、もう1つは税務の問題です。
系統1|会員規約が利用目的を事業用に限定している
法人カードの会員規約には、利用目的を事業用に限定する条項が置かれていることがあります。JCBの法人カード会員規約(一般法人用)第1条第8項は、会員は法人会員の営業のためにのみ、事業費の決済を利用目的としてカードを利用できると定めています。同項には、これに違反した場合であっても法人会員および代表使用者が支払義務を負うという定めも続きます。
さらに同規約第3条第3項では、カードおよびカード情報はカード使用者本人以外は使用できないとされ、他人への貸与、預託、譲渡、担保提供も禁止されています。社内で1枚のカードを回して使う運用は、この条項に触れる可能性があります。条文はJCB法人カード会員規約(一般法人用)で確認できます。
規約の内容は商品ごとに異なり、この記事で条番号を挙げて引用できるのはJCBの規約に限られます。他社のカードを使っている場合は必ず手元の会員規約を確認してください。
系統2|法人が負担した個人的支出は「役員への給与」になり得る
法人が役員の個人的な支出を負担し、それを返済させない場合、その負担額は役員に対する経済的利益の供与にあたります。国税庁の法人税基本通達9-2-9は、法人税法34条4項および36条に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」を、法人がその行為をしたことにより実質的にその役員等に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすものと説明しています。通達の本文は法人税基本通達9-2-9(国税庁)で確認できます。
この給与は臨時的な支給です。国税庁の役員に対する給与(国税庁 タックスアンサー No.5211)によれば、法人が役員に支給する給与のうち、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものは損金の額に算入されません。私的利用の肩代わり分は、どの類型にも当てはまりません。
結果として、法人側では損金に算入できず、役員個人には所得税と住民税が課されます。さらに法人は源泉徴収義務を負うため、徴収も納付もしていなければ源泉徴収漏れになります。
原則NGでも問題の大きさが変わる4つのケース
資金の出所と返済の有無で論点は変わります。自社の状況がどこに当たるかを確認してください。
| ケース | 資金の出所 | 経理処理 | 税務上の主な論点 |
| 会社決済型で私的支出、速やかに返済 | 法人口座 | 仮払金または立替金 | 返済されれば給与課税の論点は生じにくい |
| 会社決済型で私的支出、返済しない | 法人口座 | 役員貸付金または役員給与 | 経済的利益=給与。損金不算入と個人課税 |
| 個人決済型で私的支出 | 個人口座 | 会社の帳簿には載せない | 会社が負担していなければ給与課税の論点は生じにくい |
| 事業と家事が混在する支出(個人事業主) | 事業用口座 | 事業主貸または家事関連費として按分 | 記録により区分できる金額のみ必要経費 |
規約上は、会社決済型で私的支出をした場合は利用目的の逸脱にあたり得ます。個人決済型でも、規約が事業用に限定していれば同様です。個人事業主の家事関連費については、規約の定めを商品ごとに確認してください。
返済するかどうかが税務上の分かれ目になります。ただしどのケースでも、規約上の利用目的から外れているという評価は残ります。
私的利用が引き起こす5つの問題
影響は次の5方向に広がります。
会計処理が煩雑になり、経理の負担が増える
経費と私的支出が同じ明細に混在すると、経理担当者は1件ずつ業務関連性を判断することになります。件数が増えれば月次決算が遅れます。
経費として認められず、法人税の追徴や加算税につながる
個人的な支出を経費計上していれば、その部分は認められません。税務調査で否認されれば法人税の追徴が生じ、加算税や延滞税の対象にもなります。
役員個人にも所得税・住民税が課され、源泉徴収漏れになる
会社が負担して返済させていない金額は役員への給与として扱われ得ます。法人側は損金不算入、役員個人には所得税と住民税がかかり、給与として処理していなければ不納付加算税などの対象にもなり得ます。
金融機関への説明が必要になる
役員貸付金で処理すると、その残高は貸借対照表に資産として残ります。決算書を提出する場面では内容の説明を求められることがあります。
会員規約違反として利用停止や会員資格喪失の対象になり得る
JCBの法人カード会員規約(一般法人用)第33条第3項(2)には「会員が本規約に違反したとき」が挙げられ、該当する場合はカード会社が会員資格の喪失を通知したときに資格を喪失します。同条第6項により、カード会社は加盟店にカードの無効を通知できます。
法人カードで個人の買い物をした場合の仕訳
仕訳は金額の大きさと返済までの期間で決まります。
少額で速やかに返済する場合の仕訳
当月内または翌月の給与支給日までに返済できるケースです。会社が一時的に立て替えた状態として、仮払金または立替金で処理します。
| 日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
| 購入時 | 仮払金 30,000 | 未払金 30,000 | 法人カード私的利用分(役員A) |
| 返済時 | 普通預金 30,000 | 仮払金 30,000 | 役員Aより私的利用分の返済 |
| カード引落時 | 未払金 30,000 | 普通預金 30,000 | 法人カード利用代金の引落 |
購入時点では会社がカード会社に対する支払義務を負うため、貸方は未払金です。借方を費用にしないことがこの処理の要点です。
高額で返済に時間がかかる場合の仕訳
一括では返済できないケースです。役員貸付金として処理し、返済のたびに残高を減らします。利息の取り扱いも決めます。
| 日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
| 購入時 | 役員貸付金 600,000 | 未払金 600,000 | 法人カード私的利用分(役員A) |
| 返済時 | 普通預金 100,000 | 役員貸付金 100,000 | 役員Aより毎月返済(1回目) |
| 利息計上時 | 未収入金 5,400 | 受取利息 5,400 | 役員貸付金にかかる利息 |
上の例は残高600,000円に年0.9%を1年間適用した概算です。通常の業務支出の仕訳は法人カードの経理処理は?仕訳の方法を解説で確認できます。
個人事業主が事業用カードで私的支出をした場合の仕訳
個人事業主には役員という概念がないため、事業のお金を私的に使った場合は事業主貸で処理し、必要経費にはしません。
| 日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
| 購入時 | 事業主貸 25,000 | 未払金 25,000 | 事業用カードでの私的支出 |
| カード引落時 | 未払金 25,000 | 普通預金 25,000 | 事業用カード利用代金の引落 |
事業主貸は経費ではなく、事業から個人へ資金が移動したことを表す科目です。所得の計算には影響しません。
役員貸付金にした後に発生する3つの負担
貸付金処理は返済を前提にした処理です。処理した後にも次の3つの負担が続きます。
認定利息を計上しないと差額が給与として課税されます
役員や使用人に金銭を貸し付けた場合、通常の利率で計算した利息額と実際に受け取った利息額との差額は、給与として課税されます。国税庁の金銭を貸し付けたとき(国税庁 タックスアンサー No.2606)では、課税されない場合として、災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった役員等に合理的と認められる金額と返済期間で貸し付ける場合、会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定めてその利率で貸し付ける場合、差額が1年間で5,000円以下である場合の3つが示されています。
適用する利率は貸付日の属する年によって異なります。令和4年から令和7年中に貸し付けた場合は年0.9%とされています(令和3年中の貸付は年1.0%)。会社が他から借り入れて貸し付けた場合はその借入金の利率によります。利率は改定されることがあるため、実際に適用する際は国税庁のページで最新の内容を確認してください。
貸借対照表に残り続け、対外的な説明が必要になります
貸付金は返済が完了するまで資産として残ります。返済計画を書面で定め、約定どおり返済していれば説明しやすくなります。
返済が進まないままだと給与認定のリスクが高まります
形式上は貸付金でも、返済の実績がなく残高が増え続けていれば、実質的に返済させていないと評価される可能性があります。その場合は給与に該当し得ます。
どこから「役員への給与」になるのか|課税判定の分かれ目
返済の有無、利息の有無、金額規模で扱いがどう変わるかを1つの表に統合しました。
返済・利息・金額規模で見る課税判定表
| 条件 | 会計上の科目 | 法人側の税務 | 役員個人側の税務 |
| 当月内に全額返済、利息の差額が年5,000円以下 | 仮払金・立替金 | 費用計上しないため損金の論点は生じない | 課税の論点は生じにくい |
| 返済期間を定め、合理的な貸付利率で返済中 | 役員貸付金 | 受取利息を益金に計上 | 課税の論点は生じにくい |
| 返済中だが無利息または低利。差額が年5,000円超 | 役員貸付金 | 差額分は給与として損金不算入 | 差額が給与として課税 |
| 返済させない、または返済実績がなく残高が累増 | 役員給与(経済的利益) | 臨時的な支給のため損金不算入 | 給与として課税。法人に源泉徴収義務 |
| 個人的支出を経費として計上 | 費用(否認対象) | 経費として認められず追徴・加算税の対象 | 給与とされた場合は課税 |
根拠は国税庁のタックスアンサーNo.2606(役員に対する貸付金の利息)、No.5211(役員に対する経済的利益)、法人税基本通達9-2-9です。
「貸付金として処理した」だけでは安全にならない理由
貸付金という科目を選んだこと自体が安全を意味するわけではありません。判断されるのは、返済期間や利率を定めた記録があるか、実際に返済されているか、利息を計上しているかという実態です。金額を確定する、返済方法と期限を決める、利率を決める、記録を残す、の順で進めてください。
判断が分かれる領域と、税理士に確認すべき論点
次の3点は個別事情によって判断が変わりやすいため、金額が大きい場合は税理士に確認してください。
- 事業と私用の両方に関わる支出(携帯電話や車両など)を、どの基準でどこまで按分するか。
- 返済期間をどこまで長く設定して合理的と言えるか、また適用する利率をどう決めるか。
- 過年度分の私的利用が判明した場合に、修正申告や源泉所得税の納付をどの範囲で行うか。
対象期間、件数、合計金額、返済の有無、これまでの経理処理をまとめて渡すと判断が早くなります。
ポイントやマイルを個人的に使ってよいか
法人カードでもポイントやマイルが貯まりますが、その扱いは社内で曖昧になりやすい部分です。
法人契約のカードで貯まったポイントは法人に帰属します
契約者が法人であり、利用代金を法人が支払っているのであれば、その対価として付与されるポイントやマイルは法人に帰属すると考えるのが原則です。出張の航空券や事務用品の購入など、業務目的で使う運用が筋の通った形です。
私的利用は法人から個人への経済的利益に当たり得ます
役員や従業員がポイントを私的に使えば、法人に帰属する価値を個人が受け取ったことになります。法人が個人的支出を負担する場合と同じ構造であり、法人から個人への経済的利益の供与に当たり得ます。
断定できない領域と、社内ルールでの整理
一方で、ポイントの評価方法や課税のタイミングは個別の事情によって判断が分かれます。「ポイントを私的に使えば必ず課税される」と断定できる取り扱いではないため、金額が大きい場合は税理士に確認してください。実務では、使途を業務目的に限定し、使用状況を記録する仕組みを社内規程に書き込むのが揉めにくい方法です。ポイントの会計処理はポイントの会計処理とは?利用・付与時の仕訳で確認できます。
会社決済型と個人決済型の違い|個人決済型なら私的利用してよいのか
法人カードには、利用代金が法人口座から引き落とされる会社決済型と、使用者の個人口座から引き落とされる個人決済型があります。「個人決済型なら自分のお金だから私的利用しても構わない」という説明には注意が必要です。
引落口座と経理処理で比べる2つの決済方式
| 項目 | 会社決済型 | 個人決済型 |
| 引落口座 | 法人口座 | カード使用者の個人口座 |
| 経費精算 | 原則として不要 | 使用者が立替え、後日精算する |
| 経理処理の混入リスク | 私的利用が会社の帳簿に入り込む | 会社の帳簿には精算した分だけが入る |
| 限度額の管理主体 | 会社が一括で管理しやすい | 使用者ごとの管理になりやすい |
| 規約上の利用目的の定め | 事業用に限定する定めが置かれることがある | 立替型でも事業用に限定する定めが置かれることがある |
| 向いている企業規模 | 経理体制が整った企業 | 少人数の企業や利用者が限られる場合 |
決済方式の選び方や手続きは法人カードを個人口座で利用する方法【メリット・デメリットと注意点】で解説しています。
決済方式は経理の混入を防ぐ手段で、規約上の利用目的を解除するものではありません
個人決済型の利点は、私的な支出が会社の帳簿に入り込まない点です。会社が肩代わりしていないので、給与課税の論点も生じにくくなります。
しかし、引落口座がどこかという話と、会員規約が利用目的をどう定めているかという話は別の論点です。前者は経理の問題、後者はカード会社との契約の問題であり、個人決済型を選んだからといって、規約上の利用目的の制限が自動的に外れるわけではありません。
実際の会員規約でどう書かれているか
JCBの会員規約(法人債務・カード使用者立替用)第1条第6項は、会員は法人会員の営業のためにのみカードを利用できると定めています。使用者が一旦負担する立替型であっても、利用目的は事業用に限定されているということです。条文はJCB会員規約(法人債務・カード使用者立替用)で確認できます。
ここで引用できるのはJCBの規約に限られます。規約の定めは商品ごとに異なるため、「個人決済型なら私的利用してよい」と一般化はできません。
社員が個人カードで立替払いするのは適法か|個人利用との違い
「法人カードで私物を買う」と「個人カードで会社の経費を払う」は、同じ話のように語られますが別のものです。
資金の向きが逆であること
法人カードの私的利用は法人の資金で個人の買い物をする行為で、会社から個人へ資金が流れます。社員による立替払いは個人の資金で会社の支出を払う行為で、後日精算されます。前者は原則NGですが、後者は問題のない運用です。資金の向きが逆であることが、両者を区別する基準になります。立替の会計処理は立替金とは?仕訳から税務、インボイス制度までで整理しています。
立替精算は適法。ただしインボイス制度下で必要になる書類があります
従業員が立替払いした場合、適格請求書の宛名は従業員になることがあります。国税庁のインボイス制度に関するQ&Aでは、立替払いをした者宛の適格請求書をそのまま受領するだけでは自社の課税仕入れであることが明らかにならないため、適格請求書に加えて立替金精算書等の書類の保存が必要になるとされています。ただし、宛名の記載を要しない適格簡易請求書を受領した場合は不要です。詳細はインボイス制度に関するQ&A(立替金・国税庁)で確認できます。
書式と記載項目はインボイス制度に対応した立替金精算書の書き方と立替金受領書の無料テンプレートで確認できます。
立替精算とカード直払いのどちらを標準にすべきか
立替精算は書類が増え、社員の一時的な資金負担も発生します。カード直払いは手続きが軽い反面、私的利用が混入する余地が残ります。金額が読める定期的な支出はカードで直払いにし、少額かつ突発的な支出は立替精算にする切り分けが機能しやすいです。
個人事業主が事業用カードで私的支出をした場合|家事按分の考え方
個人事業主は事業用と生活用のお金の境目が曖昧になりやすく、「事業用カードで払ったのだから経費」と考えてしまいがちです。
事業用カードで払ったから経費にはなりません
必要経費になるかどうかは支出の内容で決まり、決済に使ったカードの種類では決まりません。事業用カードで私的な買い物をしても必要経費にはならず、事業主貸として処理します。逆に、個人カードでの事業用の支出は必要経費になります。
家事関連費を必要経費にできる要件
家事上と業務上の両方にかかわる費用を家事関連費といいます。国税庁のやさしい必要経費の知識(国税庁 タックスアンサー No.2210)では、家事関連費のうち必要経費に算入できるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られると説明されています。根拠となる法令は所得税法45条と所得税法施行令96条です。
要件は「記録により明らかに区分できること」です。感覚で決めた割合では要件を満たしません。
按分の実務と記録の残し方
按分の基準は支出の性質に応じて選びます。家賃や電気代は床面積の割合、通信費や車両費は使用時間や走行距離の割合が使われます。重要なのは、その割合を裏づける記録を残すことです。
- 床面積で按分する場合は、間取り図に事業用スペースを示した資料を残します。
- 走行距離で按分する場合は、業務での走行を記録した運行記録を残します。
- 通信費を按分する場合は、業務での使用状況がわかる記録を残します。
事業用カードでの決済を経費計上する際の考え方は個人事業主がクレジットカードで経費計上する方法でも解説しています。
税務調査では何を見られるのか
「私的利用は結局バレるのか」の答えは「カード会社が見つけるか」ではなく「帳簿と証憑を突き合わせたときに説明できるか」です。
利用明細と業務関連性の突き合わせ
確認されるのは、カードの利用明細と計上された費用、領収書の対応関係です。休日や深夜の利用、業務エリアから離れた場所での利用などは、内容の説明を求められやすくなります。管理の進め方はクレジットカードの請求管理術|不正利用を見逃さない方法が参考になります。
役員貸付金の残高と返済実績
役員貸付金が計上されている場合は、残高の推移と返済の実績が確認されます。貸付の契約書や返済計画があるか、利息を計上しているかも確認の対象です。
カード会社が個人利用を検知するかは別の問題です
カード会社が個々の決済について業務との関連性を判断することは実務上難しいと考えられますが、それは「問題にならない」ことを意味しません。会員規約上は利用目的が事業用に限定され、規約違反は会員資格の喪失事由として定められています。私的利用は帳簿と証憑の突き合わせや税務調査の過程で判明します。
私的に使ってしまった場合の対処法
状況に応じて対応は変わります。4つのケースで手順を示します。
ケース1|少額で当月内に気づいた場合
上司や経理担当者に報告し、カードの引落日までに該当額を会社へ返済します。返済は会社口座への振込または給与からの控除が一般的です。経理処理は仮払金または立替金で行い、返済時に消し込みます。
ケース2|高額ですぐに返済できない場合
役員貸付金として処理し、返済計画を先に固めます。決めるべき項目は、返済総額、返済方法、返済期限、適用する利率の4つです。あわせて金銭消費貸借契約書などの書面を作成し、決議が必要かどうかも確認します。利息は、会社の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定めるか、差額が年5,000円以下におさまるかを確認します。
ケース3|決算や年度を跨いでしまった場合
すでに申告を終えた期間に私的利用分が費用計上されていた場合は修正が必要です。対象期間と金額を洗い出し、法人税の修正申告が必要か、役員給与として扱う場合に源泉所得税の納付が必要かを税理士と確認します。自主的な修正と調査での指摘では、加算税の取り扱いが変わることがあります。
ケース4|従業員による私的利用が判明した場合
対象期間と金額を確定し、本人に事実確認を行います。返済方法を合意して書面に残し、社内規程に基づく対応を検討します。処分の内容は規程の定めと事案によって決まるため、就業規則と法人カード利用規程の該当条項を確認してください。
どのケースでも共通してやるべき3ステップ
- 対象となる利用日、店舗、金額、利用者を一覧にして事実を確定します。
- 返済の方法と期限を決め、書面で残します。
- 経理処理を確定し、必要な場合は税理士に修正の範囲を確認します。
返済だけして記録を残さないと、数年後に「何の入金だったか」がわからなくなります。
私的な支出と業務上の支出の切り分けは、意思の問題であると同時に仕組みの問題です。取引先への支払いをクレジットカードに置き換えられる「INVOYカード払い」なら、業務上の支払いが1つの経路に集約されるため、私的利用の混入を見つけやすくなります。詳細は請求書カード払い「INVOYカード払い」の詳細をご確認ください。
私的利用を防ぐ仕組みと社内体制
個人利用は注意喚起だけでは減りません。発行する範囲、使える範囲、確認する仕組みの3方向から手を打ちます。
カード発行対象者を限定する
業務上の支出が頻繁に発生する担当者に限って発行し、必要がなくなった時点で返却させます。誰に何枚発行しているかを一覧で管理し、退職時の回収まで手順に含めます。考え方は社員用法人カードとは?メリット・デメリットと選び方で整理しています。1枚のカードを複数人で使い回す運用は会員規約の第三者利用の禁止に触れる可能性があり、注意点は法人カードの使いまわしは大丈夫?社員が利用する際の注意点で確認できます。
カードごとに利用可能枠を設定する
役職や業務内容に応じて、カード単位で利用可能枠を設定します。枠が業務上の必要額に近ければ、大きな私的利用は起こりにくくなります。金額の決め方は法人カードの限度額の決め方は?どれぐらいに設定すべきかを参考にしてください。
利用先のカテゴリを制限する
カードによっては、業種カテゴリ単位で利用を制限できます。業務で使わないカテゴリをあらかじめ止めておけば、うっかりミスによる利用を入口で防げます。
利用明細を定期的にチェックする体制を作る
経理担当者が毎月の明細を確認し、業務関連性が読み取りにくい支出を洗い出します。確認項目を一覧にしておけば、担当者が替わっても品質が保てます。
領収書の提出を義務化する
カードを利用したら領収書または請求書を提出する運用にします。提出がない支出は経費として認めないというルールを明記すれば、提出は定着します。
経費精算システムを導入する
経費精算システムを使えば、カードの利用データを取り込んで自動で分類し、承認の流れを電子化できます。異常な利用を検知する機能を持つものもあります。
そのまま使える「法人カード利用規程」のひな形
社内規程は文面がないと着手しにくいものです。ここでは7条構成のひな形を示します。自社の実情に合わせて金額や役職名を差し替えて使ってください。禁止行為の条文は、会員規約が定める利用目的の限定と第三者利用の禁止に合わせた参考例です。なお実際の制定時は専門家に確認してください。
規程に必ず入れる7条
- 第1条は目的です。規程を定める理由と適用範囲を示します。
- 第2条は対象者と発行基準です。誰にカードを発行するかを決めます。
- 第3条は利用範囲です。何に使えるかを列挙します。
- 第4条は禁止行為です。私的利用、第三者への貸与、ポイントの私的利用を止めます。
- 第5条は明細確認と証憑提出の義務です。提出期限まで書きます。
- 第6条は私的利用が生じた場合の報告と精算の手続です。
- 第7条は違反時の措置です。就業規則との関係を示します。
条文サンプル
第1条(目的) 本規程は、当社が法人名義で契約するクレジットカード(以下「法人カード」という)の利用に関する基準および手続を定め、経費支出の適正化と会計処理の正確性を確保することを目的とする。
第2条(対象者および発行基準) 法人カードは、業務上継続的に経費の支出を伴う職務に従事する従業員のうち、所属長が申請し、経理部門の承認を得た者に対して交付する。交付を受けた者(以下「利用者」という)は、退職、異動その他交付の必要がなくなった場合、直ちに法人カードを経理部門に返却しなければならない。
第3条(利用範囲) 法人カードは、当社の事業の遂行に必要な支出に限り利用することができる。利用できる支出の範囲は、旅費交通費、宿泊費、会議費、消耗品費、通信費、その他所属長が事前に承認した費用とする。1回の利用金額が〇〇円を超える場合は、事前に所属長の承認を得なければならない。
第4条(禁止行為) 利用者は、次の行為を行ってはならない。第1号、私的な目的で法人カードを利用すること。第2号、法人カードまたはカード情報を他人に貸与し、預託し、譲渡し、担保に供し、または使用させること。第3号、法人カードの利用により付与されたポイント、マイルその他の特典を私的な目的で使用すること。第4号、換金を目的とする利用その他カード会社の会員規約に違反する利用を行うこと。
第5条(明細確認および証憑の提出) 利用者は、法人カードを利用した場合、領収書または請求書その他利用内容を確認できる書類を、利用月の翌月〇日までに経理部門に提出しなければならない。経理部門は、毎月の利用明細と提出された書類を照合し、内容を確認する。前項の書類が提出されない支出については、経費として認めない。
第6条(私的利用が生じた場合の報告および精算) 利用者は、誤って私的な支出に法人カードを利用した場合、速やかに所属長および経理部門に報告しなければならない。前項の報告があった場合、利用者は当該金額を当社の指定する方法により当社に支払うものとする。支払が完了するまでの間、当社は当該金額を貸付金として処理し、必要に応じて返済の方法、期限および利率を別途書面により定める。
第7条(違反時の措置) 本規程に違反した利用者に対しては、就業規則の定めるところにより必要な措置を講ずることがある。当社は、違反により生じた損害について、利用者に対して賠償を求めることがある。
運用のポイント
第1に、交付時に規程を読ませ、同意書を取得します。第2に、金額基準と提出期限は実際に守れる水準に設定します。第3に、年に1回は内容を見直し、税制改正や会員規約の改定、組織変更を反映します。
よくある質問
最後に、法人カードの私的利用についてよく寄せられる質問に回答します。
法人カードで個人的な買い物をしてしまいました。どうすればよいですか
速やかに上司や経理担当者へ報告し、原則としてその金額を会社へ返済してください。少額で当月内に返済できる場合は仮払金または立替金、高額の場合は役員貸付金として処理します。放置すると役員への給与として扱われ、法人側で損金に算入できず、役員個人にも課税される可能性があります。
法人カードの個人利用はカード会社に「バレる」のでしょうか
カード会社が個々の決済について業務との関連性を判断することは実務上難しいと考えられますが、問題にならないという意味ではありません。会員規約では利用目的が事業用に限定され、規約違反は会員資格の喪失事由として定められています。
税務調査で個人利用が見つかったらどうなりますか
個人的な支出を経費計上していた場合、その部分は認められず、法人税の追徴や加算税の対象になり得ます。さらに、法人が負担して役員に返済させていない場合は役員への給与として扱われ、役員個人への課税と法人の源泉徴収漏れが生じます。
役員貸付金として処理すれば問題ありませんか
貸付金処理は返済を前提にした処理です。無利息または通常より低い利率であれば、通常の利率との差額が給与として課税されます。課税されないのは、差額が1年間で5,000円以下である場合や、会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定めている場合などです。
法人カードで貯まったポイントやマイルを個人的に使ってよいですか
法人契約のカードで貯まったポイントは、原則として法人に帰属します。役員や従業員が私的に使う場合は、法人から個人への経済的利益の供与に当たり得ます。評価や課税の取り扱いは個別事情によるため、金額が大きい場合は税理士に確認してください。
個人決済型の法人カードなら私的利用してもよいのですか
決済方式は引落口座と経理処理の違いであり、規約上の利用目的の制限を解除するものではありません。JCBの立替用の会員規約でも、法人会員の営業のためにのみ利用できると定められています。規約の内容は商品ごとに異なるため、必ず手元のカードの会員規約を確認してください。
個人事業主が事業用カードで私的な支出をした場合はどうなりますか
私的な支出は必要経費にならず、事業主貸として処理します。事業と家事の両方に関わる家事関連費を必要経費にできるのは、取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られます。
社員が自分の個人カードで会社の経費を立替えるのは問題ありませんか
立替払いと後日の精算は一般的な運用で問題はなく、法人カードの私的利用とは資金の向きが逆です。ただしインボイス制度では、従業員宛の適格請求書を受領した場合に立替金精算書等の保存が必要になることがあります。適格簡易請求書を受領した場合は不要です。
まとめ
法人カードの個人利用が原則NGとされる理由は、会員規約と税務の2系統に分かれます。JCBの規約は利用目的を事業用に限定し、本人以外の使用も禁止しています。税務では、会社が負担したまま返済させない金額が役員への給与として扱われ、法人側で損金に算入できず、役員個人にも課税され、法人には源泉徴収義務が生じます。
使ってしまった場合は、金額と返済見込みに応じて仮払金または役員貸付金で処理します。貸付金にする場合は、返済計画と利率を先に決めて記録に残すことが要点です。個人事業主は事業主貸で処理し、家事関連費は記録により区分できる金額だけを必要経費にします。再発を防ぐには、発行対象者の限定、利用可能枠の設定、利用先カテゴリの制限、明細チェック、領収書提出の義務化を組み合わせ、規程ひな形を土台に社内ルールを文書化してください。
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