ファクタリングの基礎知識

手形払いとは

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取引先との支払いで「手形払い」という言葉を見聞きしたものの、仕組みや銀行振込との違いがよくわからないという方は少なくありません。手形払いは、あらかじめ定めた期日に一定の金額を支払うことを約束する「手形」という証券を使った決済方法で、支払いを先延ばしできるため資金繰りの調整手段として古くから使われてきました。一方で、紙の手形は2026年度末(2027年3月末)を目途に実質的な廃止が進められており、企業はでんさい(電子記録債権)などへの移行が求められています。

この記事では、手形払いの基本的な仕組みから約束手形と為替手形の違い、メリット・デメリット、不渡りのリスク、会計処理の基本、そして廃止に向けた最新の動向までをわかりやすく整理します。これから手形払いを理解したい経理担当者や事業者の方はもちろん、取引先から手形払いを提案された方にも役立つ内容です。

手形払いとは

手形払いとは、「手形」と呼ばれる有価証券を用いて、あらかじめ定めた期日に一定の金額を支払う決済方法のことです。商品やサービスの代金をその場で現金や振込で支払うのではなく、「いつ・いくらを支払うか」を記載した証券を相手に渡すことで、支払いを将来の特定日まで猶予できる点が大きな特徴です。 手形を発行することを「振り出し」といい、代金を支払う側を「振出人」、受け取る側を「受取人」と呼びます。

受取人は記載された支払期日が到来すると、取引銀行を通じて手形を呈示し、振出人の当座預金口座から代金を受け取ります。手形払いは主に企業間(BtoB)の取引で利用され、消費者向けの取引で使われることはほとんどありません。

手形払いと銀行振込・小切手の違い

銀行振込は、支払いを実行した時点で資金が相手に移動する「即時性のある決済」です。これに対し手形払いは、振り出した時点では資金が動かず、支払期日が来てはじめて決済される「期日後払いの決済」である点が決定的に異なります。手形の支払期日までの期間は「手形サイト」と呼ばれ、振出日から30日後・60日後・120日後といった形で設定されます。 小切手も手形と同じく有価証券ですが、小切手は受け取った側がすぐに銀行で換金できる「一覧払い」が原則で、支払いを先延ばしする機能はありません。つまり、小切手は現金に近い即時決済の道具であり、手形は支払いを将来に猶予する道具である、という違いがあります。

手形払いの仕組みと取引の流れ

手形払いを利用するには、まず振出人が取引銀行と「当座勘定取引契約」を結び、当座預金口座を開設したうえで手形帳の交付を受ける必要があります。当座預金口座の開設には銀行の審査(与信)が必要で、誰でも自由に手形を振り出せるわけではありません。この審査を通過していること自体が、一定の社会的信用を示すものとされてきました。 実際の取引は、おおむね次の流れで進みます。

第一に、振出人が支払金額・支払期日・受取人などを記載した手形を作成し、受取人に渡します(振り出し)。

第二に、受取人は支払期日まで手形を保有します。

第三に、支払期日が到来したら、受取人は取引銀行に手形を持ち込み、取り立てを依頼します。

第四に、振出人の当座預金口座から代金が引き落とされ、受取人の口座へ入金されて決済が完了します。 なお、手形の支払期日を含めた3営業日以内に取り立てを行わないと、支払いを受ける手続き上の権利関係が複雑になるため、受取人は期日の管理を徹底する必要があります。期日の失念は資金繰りに直結するため、受取手形の管理は経理実務上の重要なポイントです。請求書の支払い処理の基本は、請求書の支払い処理ガイドをご覧ください。

約束手形と為替手形の違い

手形払いに使われる手形は、大きく「約束手形」と「為替手形」の2種類に分けられます。両者は当事者の人数と支払義務を負う者が異なります。

約束手形

約束手形は、振出人が受取人に対して「記載した期日に一定の金額を支払う」ことを約束する証券で、振出人と受取人の二者間で成立します。支払義務を負うのは振出人自身です。企業間取引で「手形払い」という場合、その多くはこの約束手形を指します。実務で利用される手形のほとんどが約束手形であり、為替手形の利用は限定的です。約束手形と為替手形の違いをさらに詳しく知りたい方は、為替手形と約束手形の違いの解説記事をご覧ください。

為替手形

為替手形は、振出人・受取人・支払人(引受人)の三者が関わる手形です。振出人が、第三者である支払人に対して「受取人へ代金を支払うよう」依頼する仕組みで、支払義務は引き受けを行った支払人が負います。売掛金と買掛金を相殺するような複雑な取引で用いられることがありますが、当事者が三者にわたるぶん仕組みが複雑で、近年は利用が少なくなっています。約束手形と為替手形の詳しい違いは、別記事でも解説しています。

手形払いのメリット

支払いを猶予でき資金繰りを改善できる

振出人にとって最大のメリットは、支払いを手形サイトのぶんだけ先延ばしできることです。たとえば60日サイトの手形を振り出せば、商品を受け取った日から約2か月後まで支払いを猶予できます。手元資金が一時的に少ない時期でも仕入れや取引を継続でき、資金繰りの調整に役立ちます。

受取人は期日前に現金化できる

受取人にとっては、支払期日を待たずに資金を得る手段がある点がメリットです。代表的なのが「手形割引」で、受け取った手形を支払期日より前に銀行などに買い取ってもらい、割引料を差し引いた金額を受け取る方法です。また、受け取った手形を別の支払いに充てる「裏書譲渡」も可能で、支払期日までであれば原則として何度でも譲渡できます。

信用取引の実績になる

手形を振り出すには銀行の与信を通過している必要があるため、手形払いに対応できること自体が取引上の信用の裏づけになります。期日どおりに決済を続けることは、企業間の信頼関係を積み上げることにもつながります。

手形払いのデメリットと不渡りのリスク

不渡りによる銀行取引停止のリスク

手形払いの最大のリスクが「不渡り」です。不渡りとは、支払期日に当座預金口座の残高不足などの理由で手形の金額が支払われないことをいいます。不渡りを6か月以内に2回発生させると、銀行取引停止処分が下され、当座勘定取引と貸出取引が約2年間できなくなります。これは事実上の倒産につながりかねない重大なペナルティです。手形払いを利用する以上、支払期日までに必ず資金を用意しておく資金管理が欠かせません。

印紙税などのコストがかかる

約束手形には、記載金額に応じて印紙税が課されます。たとえば記載金額が100万円を超え200万円以下の手形には400円、500万円を超え1,000万円以下なら2,000円の収入印紙が必要です(記載金額10万円未満は非課税)。紙の手形を発行・郵送・保管する事務負担もあり、振込と比べて見えにくいコストがかかります。

受取人の資金繰りを圧迫しやすい

受取人にとっては、代金を受け取れるのが支払期日まで先延ばしされるため、その間の運転資金を別途確保する必要があります。期日前に現金化する手形割引を使えば割引料という実質的なコストが発生し、期日の管理を誤れば資金繰りがショートするおそれもあります。下請法の運用では、2024年11月以降、支払期日が60日を超える手形などは行政指導の対象とされており、長すぎる手形サイトは見直しが求められています。

手形払いとは

2026年度末に向けた紙の手形の廃止

近年、紙の手形払いを取り巻く環境は大きく変わりつつあります。政府および全国銀行協会は、手形・小切手機能の全面的な電子化を進めており、2026年度末(2027年3月末)までに、手形・小切手を交換する電子交換所での交換枚数をゼロにすることを目標として掲げています。これにより、紙の約束手形は実質的に利用が廃止される方向へ進んでいます。 廃止が進められる背景には、紙の手形が抱える課題があります。発行・郵送・保管に手間とコストがかかること、紛失・盗難のリスクがあること、そして支払サイトが長く受取側の資金繰りを圧迫しやすいことなどです。中小企業の取引環境を改善する観点からも、電子的な手段への移行が促されています。特に、支払いを受ける側である中小企業や下請事業者にとっては、長い手形サイトが資金繰りの負担となってきた経緯があり、こうした負担を軽減することも電子化の狙いの一つです。

代替手段としてのでんさい(電子記録債権)

紙の手形に代わる手段として政府が推奨しているのが「でんさい(電子記録債権)」です。でんさいは、でんさいネットという電子的な記録機関に債権の発生・譲渡を記録することで、手形と同じように支払いの猶予や譲渡・割引ができる仕組みです。紙の発行や郵送が不要で印紙税もかからず、紛失リスクもないため、手形払いのデメリットの多くを解消できます。でんさいの利用は2019年からの5年間で約2.5倍に増えるなど、着実に普及が進んでいます。 紙の手形を利用している企業は、廃止スケジュールを見据え、でんさいや銀行振込といった代替手段への移行を早めに検討しておくことが大切です。請求から入金までの管理をデジタル化しておくと、移行もスムーズに進められます。

手形払いの会計処理(仕訳)の基本

手形払いを行うと、振出人と受取人の双方で帳簿への記帳(仕訳)が必要になります。振出人側では、手形を振り出したときに「支払手形」という負債の勘定科目を使います。

たとえば商品を100万円で仕入れて約束手形を振り出した場合、借方に仕入1,000,000円、貸方に支払手形1,000,000円と記帳します。

支払期日に当座預金から決済されたときは、借方に支払手形1,000,000円、貸方に当座預金1,000,000円と振り替えます。 受取人側では、手形を受け取ったときに「受取手形」という資産の勘定科目を使います。

売上として100万円の手形を受け取った場合、借方に受取手形1,000,000円、貸方に売上1,000,000円と記帳し、支払期日に入金されたら借方に当座預金1,000,000円、貸方に受取手形1,000,000円と処理します。

受け取った手形を裏書譲渡して買掛金の支払いに充てた場合は、借方に買掛金、貸方に受取手形という仕訳になります。 手形は支払期日まで資産・負債として残り続けるため、決算をまたぐ場合は受取手形・支払手形の残高管理が重要です。期日や金額を一覧で管理し、漏れなく決済できる体制を整えておきましょう。

手形払いを利用する際の注意点

支払期日と資金準備を徹底する

振出人は、支払期日に当座預金口座へ十分な資金を用意しておく必要があります。前述のとおり、残高不足で不渡りを6か月以内に2回出すと銀行取引停止処分となり、事業継続が困難になります。手形払いを利用するなら、複数の手形の支払期日と金額を一覧化し、各期日に向けた資金繰り計画を立てることが不可欠です。

手形の記載事項に不備がないか確認する

手形は法律で記載すべき事項(必要的記載事項)が定められており、金額・支払期日・支払地・振出日・振出人の署名などに不備があると、手形としての効力が認められないおそれがあります。受け取った側も、記載内容に誤りや空欄がないかを必ず確認しましょう。

電子化への移行を見据えて準備する

紙の手形は2026年度末を目途に廃止が進められているため、これから新たに手形払いの仕組みを整えるよりも、でんさいや銀行振込への移行を前提に検討するほうが現実的です。取引先と支払方法を見直す際は、双方の事務負担や手数料も比較したうえで決めるとよいでしょう。

手形払いに関するよくある質問

Q. 手形払いと約束手形は同じ意味ですか?

A. ほぼ同じ意味で使われることが多いですが、厳密には異なります。「手形払い」は手形という証券を使った決済方法全般を指す言葉で、その手形には約束手形と為替手形の2種類があります。実務上は約束手形が大半を占めるため、「手形払い=約束手形での支払い」を指している場合がほとんどです。

Q. 手形サイトとは何ですか?

A. 手形を振り出した日から支払期日までの期間のことです。30日・60日・120日などで設定され、サイトが長いほど振出人は支払いを長く猶予できる一方、受取人は資金回収が遅くなります。下請法の運用では、2024年11月以降、60日を超える手形は行政指導の対象とされています。

Q. 紙の手形が廃止されたら、これまでの手形はどうなりますか?

A. 2026年度末(2027年3月末)を目途に、電子交換所での手形・小切手の交換枚数ゼロが目指されています。今後は紙の手形を新たに利用することが難しくなっていくため、でんさいや銀行振込など電子的な手段への移行を進めることが推奨されます。具体的な移行時期や手続きは取引銀行に確認するとよいでしょう。

Q. 受け取った手形を期日前に現金化できますか?

A. できます。代表的なのが「手形割引」で、銀行などに手形を買い取ってもらい、割引料を差し引いた金額を支払期日前に受け取る方法です。また「裏書譲渡」によって、受け取った手形を自社の支払いに充てることも可能です。

Q. 手形払いとでんさいの違いは何ですか?

A. どちらも支払いの猶予・譲渡・割引ができる点は共通していますが、手形は紙の証券をやり取りするのに対し、でんさいは電子的な記録機関に債権を記録する仕組みです。でんさいは紙の発行・郵送が不要で印紙税もかからず、紛失リスクもありません。紙の手形が2026年度末を目途に廃止される流れを受け、でんさいへの移行が進んでいます。

Q. 手形払いは個人事業主でも利用できますか?

A. 当座預金口座を開設し、銀行の審査を通過すれば個人事業主でも手形を振り出すことは可能です。ただし審査のハードルは決して低くなく、紙の手形が廃止に向かっている現状を踏まえると、これから手形払いを始めるよりも銀行振込やでんさいを選ぶほうが現実的です。

まとめ

手形払いは、あらかじめ定めた期日に一定の金額を支払うことを約束する「手形」を使った決済方法で、支払いを猶予できるため資金繰りの調整に役立ってきました。手形には約束手形と為替手形があり、実務では二者間で成立する約束手形が中心です。一方で、不渡りによる銀行取引停止のリスクや印紙税・事務負担といったデメリットもあります。 そして紙の手形は、2026年度末(2027年3月末)を目途に実質的な廃止が進められており、でんさい(電子記録債権)や銀行振込といった電子的な手段への移行が求められています。現在も手形払いを利用している企業は、廃止スケジュールを見据えて代替手段の検討を早めに始め、請求から入金までの管理をデジタル化しておくことをおすすめします。INVOYでは請求書の作成から支払い管理までを効率化でき、手形からの移行後の業務にも役立ちます。請求から支払いまでをまとめて管理したい方は、INVOYのサービス紹介ページをご覧ください。

この記事の投稿者:

hasegawa

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