
毎月の返済が重いと感じたとき、借り換えという言葉が頭に浮かびます。金利の低いところへ移せば負担が軽くなる、という説明はよく見かけます。ただ、借り換えれば必ず得をするわけではありません。金利が下がったのに総返済額は増えていた、という結果は珍しくありませんし、申込を重ねた履歴だけが信用情報に残って条件は変わらなかった、ということも起こります。
この記事は、すでにカードローンの借入がある方が、自分の契約で借り換えを実行すべきかどうかを判断できるようにするために書いています。借り換えとおまとめの区別、得になる条件の見分け方、実際の金額を入れた計算例、年収の3分の1という総量規制と借換えの例外、申込から完済までの手続き、見送ったほうがよい場面、そして返済が苦しいときにどこへ相談すればよいかまでを扱います。
判断に必要なのは専門知識ではなく、手元の契約書と電卓です。残高、金利、毎月の返済額、残りの回数。この4つがわかれば、借り換え後の条件と比べる作業はご自身でできます。なお、本文中の法令の内容と金利の上限は2026年8月時点のものです。
目次
借り換えとおまとめは何が違うのか
言葉としては似ていますが、指している状態が違います。ここを混同すると、あとで説明する総量規制の話も読み違えてしまいます。
借り換えは契約を別の契約に置き換えることです
借り換えは、いま返済中の借入を新しい借入で完済し、返済先を入れ替える手続きです。借入が1件なら、A社の残高80万円をB社から80万円借りて完済し、以後はB社だけに返す形になります。借金が消えるわけではなく、返済条件が新しい契約のものに変わるだけです。
おまとめは複数の債務を1本にすることです
おまとめは、2件以上の借入をまとめて1つの契約に集約する方法です。A社40万円、B社30万円、C社20万円の3件を合計90万円で借り直し、3社を完済して返済先を1つにします。返済日と引き落とし口座が1つになるため管理は楽になります。返済額の合計が下がるかどうかは、金利と期間の設定しだいです。
法令上は2つの枠組みに分かれています
貸金業法施行規則では、借換えに関する規定が第10条の23第1項の第1号と第1号の2に分かれています。第1号が「顧客に一方的に有利となる借換え」、第1号の2が「借入残高を段階的に減少させるための借換え」で、後者がいわゆるおまとめローンにあたります。要件が異なるため、どちらに乗るかで貸し手の審査の見方も変わります。借入の一本化そのものの考え方は借金の借り換えのメリットと注意点の解説でも整理しています。
得になる条件は金利差だけでは決まりません
「金利が下がるなら借り換えるべき」という説明は、半分しか当たっていません。返済総額を決めるのは金利と期間の掛け算だからです。
見るべき数字は月々の返済額と総返済額の2つです
借り換えの効果は、この2つを別々に確認しないと判断できません。月々の返済額は今月の家計に効く数字で、総返済額は完済までに支払う合計です。この2つは同じ方向に動くとは限りません。むしろ、片方を良くすると片方が悪くなる関係にあります。
上限金利の枠組みも押さえておくと比較が楽になります。利息制限法では、元本10万円未満なら年20%、10万円以上100万円未満なら年18%、100万円以上なら年15%が上限です。出資法の上限金利は2010年6月18日から年20%に引き下げられており、これを超える貸付には刑事罰があります。遅延損害金は営業的な貸付で年20%が上限です。現在の契約の金利がこの水準に近いほど、借り換えで下げられる余地は大きくなります。
100万円を借り換えたときの計算例
残高100万円、年15.0%、毎月3万円ずつ元利均等で返済している契約を例にします。このまま返すと完済までは44回、およそ3年8か月かかり、支払総額は約130万1,704円、うち利息は約30万1,704円です。
ここで年12.0%に借り換えたとします。毎月の返済額を3万円のまま据え置くと、完済は41回に縮まり、支払総額は約122万2,495円になります。利息は約22万2,495円で、据え置く前より約7万9,209円減ります。金利差3ポイントが、そのまま利息の削減として現れた形です。
同じ年12.0%でも、毎月の返済額を2万円に下げると景色が変わります。完済までは70回、およそ5年10か月に延び、支払総額は約139万3,237円、利息は約39万3,237円になります。金利は下がったのに、借り換える前より約9万1,533円多く払う計算です。
月々の負担を軽くすると総額が増える理由
利息は残高に対して毎月かかります。毎月の返済額を下げると、そのうち元本に充てられる部分が薄くなり、残高の減りが遅くなります。残高が大きいまま月数が延びれば、その分だけ利息の発生する回数が増えます。金利の低下による削減幅より、期間の延びによる増加幅が大きくなれば、総返済額は増えます。
つまり、月々の負担軽減と総返済額の圧縮は同時に達成できるとは限りません。どちらを優先するかは家計の状況で決まります。今月の資金繰りが限界に近いなら月額を下げる判断に合理性がありますし、支払いは続けられるが総額を減らしたいなら期間を延ばさない借り換えを選ぶことになります。ここを曖昧にしたまま「金利が下がるから」という理由だけで契約すると、望んでいなかったほうの結果を受け取ります。
手数料と保証料まで含めて比べます
比較に入れるべきは利息だけではありません。事務手数料、保証料、繰上返済や一括返済にかかる費用、印紙代なども実質的な負担です。先ほどの例で利息が約7万9,209円減っても、事務手数料に5万円かかれば実質の削減は約2万9,209円まで縮みます。金額が小さい借入ほど、この固定費の比重が重くなります。
総量規制の例外にあたる借換えの仕組み
借り換えを考えるとき、年収の3分の1という枠が壁になることがあります。ただし借換えには例外の規定があるため、枠を超えていても検討の余地は残ります。
総量規制は年収の3分の1が基準です
貸金業法第13条の2第2項は、個人向けの貸付で借入残高の合計が年収の3分の1を超える契約を、原則として禁止しています。年収300万円の方なら100万円が目安です。対象は貸金業者からの借入で、銀行が銀行法に基づいて行う貸付はこの規定の直接の対象ではありません。ただし銀行側も自主的な融資審査の基準を設けています。
顧客に一方的に有利となる借換え
貸金業法施行規則第10条の23第1項第1号は、すでに債務を負っている方がそれを弁済するための資金の貸付について、すべての要件を満たす場合を例外として認めています。要件は、1か月の負担が既存の債務の1か月の負担を上回らないこと、将来支払う返済金額の合計に元本と利息以外の負担を加えた額が既存の債務の合計を上回らないこと、既存の担保以外の物的担保を新たに求めないこと、担保を求める場合もその条件が従来より不利にならないこと、既存の保証人以外を保証人としないこと、保証契約の条件が保証人に不利にならないこと、の6つです。
要点は2つ目にあります。総支払額が増えないことが条件に含まれているため、期間を延ばして総額が膨らむ契約はこの号には乗りません。
借入残高を段階的に減少させるための借換え
第1号の2は、いわゆるおまとめローンに対応する規定です。弁済する債務のすべてが貸金業者を債権者とする貸付であること、新しい契約の貸付利率が弁済する債務の利率を上回らないこと、複数ある場合は残高で加重平均した利率と比べること、定期の返済によって残高が段階的に減っていく見込みがあること、そして第1号のうち月々の負担と担保・保証に関する要件を満たすことが求められます。
ここで注意したいのは、第1号にあった「総支払額が増えないこと」という要件が第1号の2には含まれていない点です。おまとめローンでは、法令上、期間が延びて総返済額が増える契約も成立し得ます。総量規制の例外に該当することと、利用者にとって金銭的に有利であることは、別の話だと理解しておく必要があります。
例外は除外とは扱いが違います
総量規制の枠外になる貸付には「除外」と「例外」があり、性質が異なります。除外にあたる貸付は借入残高に算入されません。一方、例外にあたる貸付は借入可能ですが、その金額は借入残高に算入されます。おまとめで借りた分は残高として数えられるため、その後に残高が基準額を超えていれば、除外や例外に該当しない新規の借入はできなくなります。借り換えたあとに追加で借りる前提の計画は成り立ちません。
借り換えを実行するときの手続き
条件を比べて進めると決めたら、申込から完済までの流れを一度に見ておくと手戻りが減ります。
申込先を選ぶときに確認すること
確認すべきは、適用される金利が上限側なのか下限側なのか、借入希望額が通ったときにいくらになるのか、借換え専用の商品なのか通常のカードローンなのか、そして手数料の有無です。広告に出ている下限金利は、多くの場合まとまった金額を借りる方に適用される値です。自分に適用される見込みの金利で計算しないと、比較の前提が崩れます。
審査で見られる主な項目
貸し手は返済能力を確認します。年収と雇用形態や事業の状況、勤続年数や営業年数、他社を含めた借入の件数と残高、信用情報に記録された過去の返済状況、そして申込内容と提出書類の整合性です。借換えを目的とする場合は、弁済する債務の残高や利率、債権者の名称といった情報の申告と確認も行われます。施行規則が貸金業者に対して、これらを記載した書面の保存を義務づけているためです。
既存の借入を完済する手続き
新しい契約が成立したら、既存の借入を完済します。貸し手が既存の債権者へ直接振り込む方式もあれば、いったん本人の口座に入金され、自分で返済する方式もあります。後者の場合は、入金された資金を他の用途に使わないことが前提になります。完済にあたっては、その日時点での残高と精算額を債権者に確認してから振り込みます。日割りの利息が乗るため、見積もりと実際の額がずれることがあります。
完済後に受け取る書類と解約の確認
貸金業法第18条は、貸金業者が弁済を受けたときに受取証書を交付することを定めています。全額を返し終えたら、この受取証書に加えて完済証明書の発行を依頼しておくと、あとで残高の有無を証明する必要が生じたときに役立ちます。もう1つ忘れやすいのが解約です。カードローンは完済しても契約自体は残り、利用枠がそのまま使える状態が続きます。解約の手続きをとらない限り、信用情報上も契約が継続しているものとして扱われます。借り換えたのに古い枠を使い、残高が元に戻ってしまう例はよくあります。

カードローンの借り換えを見送ったほうがよい場面
借り換えは選択肢の1つであって、常に取るべき手段ではありません。次のような状況では、実行しないほうが結果として傷が浅く済みます。
申込を繰り返すと信用情報に履歴が残ります
貸付の申込を行うと、その事実が信用情報機関に記録されます。短い期間に何社も申し込むと、資金繰りが逼迫していると受け取られ、審査に影響することがあります。条件の良さそうな先から順に1社ずつ検討し、通らなかった理由を推測してから次に進むほうが安全です。
金利がほとんど下がらない場合
現在の金利と借換え後の金利の差が小さければ、削減できる利息は限られます。手続きの手間と申込履歴を考えると、割に合わないことがあります。差が1ポイント程度なら、実際に金額を計算してから判断してください。
手数料負けする場合
事務手数料や保証料が削減できる利息を上回れば、借り換えたほうが高くつきます。残高が少ない場合や、返済期間の残りが短い場合に起こりやすい現象です。残りの返済回数が少なければ、そもそも利息の発生する余地が小さいためです。
返済がすでに滞っている場合
延滞が続いている状態では、新しい借入の審査を通ることは難しくなります。この段階で無理に借入先を探すより、次の章で挙げる方法や相談先を先に検討したほうが現実的です。
借り換え以外にも選べる手段があります
負担を減らす方法は借り換えだけではありません。手元の状況によっては、借り換えよりも早く効く手段があります。
繰上返済で利息を減らす
余裕のある月に元本を追加で返す方法です。繰上返済で入れた資金は原則として元本に充当されるため、以後の利息計算のもとになる残高が直接減ります。少額でも回数を重ねると効きます。手数料の有無は契約によって異なるため、事前に確認してください。
返済方式や返済額の見直しを相談する
契約先に相談して、返済額や返済日を調整できる場合があります。新たな契約を結ばずに月々の負担を調整できるなら、申込履歴も残りません。ただし返済額を下げれば期間が延び、総返済額は増えます。借り換えと同じトレードオフが働きます。
債務整理は弁護士・司法書士に相談します
収入に対して返済額が明らかに過大で、どう組み替えても完済の見通しが立たない場合は、任意整理や個人再生、自己破産といった債務整理が選択肢になります。どの手続きが適切かは、収入、財産、債務の総額、保証人の有無などによって変わります。これは自己判断で進める領域ではありません。弁護士または認定司法書士に相談してください。債務整理を行うと信用情報に記録が残り、一定期間は新たな借入やクレジットカードの利用が難しくなります。その影響も含めて、専門家と一緒に検討する必要があります。
返済が難しいときの相談先
ひとりで抱えると選択肢が狭くなります。公的な窓口や専門家の相談は、多くが無料または低額で利用できます。
日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センター
貸金業法に基づく自主規制機関である日本貸金業協会が運営している窓口です。電話番号は0570-051-051、受付時間は9時から17時までで、土日祝日と年末年始は休みです。契約内容に不明な点がある、返済が苦しい、登録業者かどうか確認したい、といった相談に応じています。貸金業者との間で紛争が生じた場合の解決手続きも扱っています。
法テラスのサポートダイヤル
日本司法支援センター、通称法テラスのサポートダイヤルは0570-078374です。IP電話からは03-6745-5600につながります。受付は平日9時から21時、土曜は9時から17時までで、祝日と年末年始は休みです。利用料は無料で、通話料のみ負担します。困りごとの内容に応じて、適切な相談窓口や利用できる法制度を案内してもらえます。収入が一定額以下の場合は、無料の法律相談や弁護士費用の立替制度を利用できることがあります。
各地の弁護士会・司法書士会
お住まいの地域の弁護士会や司法書士会でも、借金に関する法律相談を受け付けています。多重債務を対象とした無料相談日を設けているところもあります。地方自治体の消費生活センターや、金融庁の金融サービス利用者相談室も入口になります。どこに相談すればよいか判断がつかないときは、まず法テラスに電話して案内を受けるのが手早い方法です。
事業者が借り換えを検討するときの考え方
個人事業主の方が事業のためにカードローンを使っているなら、借り換え先の選び方が個人の場合と変わります。
事業性資金は事業者向けの融資で借り換えます
カードローンの金利は、事業者向けの融資と比べて高い水準になりがちです。運転資金として使っている残高があるなら、日本政策金融公庫や自治体の制度融資への借り換えを検討する価値があります。審査に時間はかかりますが、金利と返済期間の条件は有利になることが多くあります。制度の全体像は公的融資制度の種類と申請方法の解説が、公庫の具体的な手順は日本政策金融公庫の申請手順と必要書類の解説が参考になります。
なお、事業を営む個人への貸付は、事業の実態が確認され、事業計画や収支計画に照らして返済能力を超えないと認められる場合、貸金業法施行規則第10条の23第1項第4号によって総量規制の例外として扱われます。貸付額が100万円を超えないときは、事業や収支、資金繰りの状況の確認で足りるとされています。
資金繰りの改善を先に検討します
借入の組み替えは、資金の出入りそのものを変える手段ではありません。売掛金の回収が入金より遅い、在庫が過大、固定費が収益に対して重いといった原因が残っていれば、借り換えても同じ状態に戻ります。入金と支払いのタイミングを整える作業を並行して進めてください。手順はキャッシュフロー改善の進め方の解説にまとめています。
個人の借入と事業の借入は分けて管理します
同じ口座で生活費と事業資金を動かしていると、どちらの返済に苦しんでいるのかが見えなくなります。融資の相談をするときも、事業の収支が説明できる状態になっていないと話が進みません。口座と帳簿を分け、事業の借入残高と個人の借入残高を別々に把握しておくことが、条件の良い借り換えを引き出す前提になります。
まとめ
借り換えが有利になるのは、金利が下がり、かつ返済期間を延ばさずに済む場合です。月々の負担を軽くする借り換えは家計を助けますが、その代わりに総返済額は増えます。どちらを優先するかを先に決めてから、手元の契約書の数字で試算してください。
総量規制については、年収の3分の1を超えていても、貸金業法施行規則第10条の23第1項第1号または第1号の2の要件を満たす借換えなら例外として扱われる場合があります。ただし例外にあたる借入は残高に算入されますし、おまとめの規定には総支払額が増えないという要件が入っていません。例外に該当することと有利であることは別に考える必要があります。
金利差が小さい場合や、手数料が削減額を上回る場合、すでに延滞が続いている場合は、借り換えをいったん見送り、繰上返済や返済条件の見直しを先に検討してください。返済の見通しが立たないなら、日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センターや法テラスに連絡し、債務整理が必要かどうかを弁護士や認定司法書士と一緒に判断することをおすすめします。



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