
決算書に赤字が出た瞬間、「もう銀行から融資を受けることはできないのではないか」と不安を感じる経営者は少なくありません。しかし、赤字だからといって資金調達の道が完全に閉ざされるわけではありません。実際、日本の中小企業の約65%は赤字法人であり、赤字でも事業を継続しながら融資を受けているケースは数多く存在します。
この記事では、赤字状態でも融資を受けるための具体的な条件・審査通過のポイント・活用できる融資制度・資金調達の代替手段を体系的に解説します。「うちは赤字だから無理」と諦める前に、ぜひ最後までお読みください。資金繰りの改善策を知ることで、経営の安定に向けた具体的な行動を起こすことができます。あなたの会社でも、適切な準備と知識さえあれば融資の扉を開くことは十分に可能です。
目次
赤字でも融資を諦めてはいけない理由
日本の中小企業の6割以上が赤字という現実
「赤字企業に融資はできない」という思い込みは、多くの経営者が陥りやすい誤解です。実際のデータを見ると、東京商工リサーチの調査によれば、2023年度における日本の赤字法人率は64.73%にのぼります。つまり、国内企業の約3分の2は赤字決算の状態にあるということです。
この数字が示すのは、赤字は決して特殊な状況ではなく、日本企業の多くが経験する一般的な状態だということです。もし赤字企業への融資が完全に禁止されていたとすれば、日本経済の大部分を支える中小企業への資金供給が止まり、経済が成り立たなくなります。金融機関もそのような現実を熟知しており、赤字だからといって機械的に融資を拒絶するわけではありません。
赤字と融資不可は必ずしもイコールではない
融資審査において、金融機関が最も重視するのは「返済できるかどうか」という点です。決算書の損益が赤字であっても、実際のキャッシュフローがプラスであれば返済能力があると評価される場合があります。
例えば、設備投資や新規事業への先行投資が原因で会計上の赤字が発生していても、本業のキャッシュフローは安定しているケースがあります。また、減価償却費が大きく計上されることで損益計算書上は赤字でも、実際の資金の流れはプラスということも珍しくありません。
赤字の「理由」と「性質」を明確に説明できるかどうかが、審査の分かれ目となります。一時的な赤字であることを証明できれば、融資の可能性は十分にあります。
銀行と政府系金融機関の審査基準の違い
民間銀行と日本政策金融公庫などの政府系金融機関では、融資審査の基準が大きく異なります。民間銀行は収益性・財務健全性を厳格に審査する傾向が強く、赤字決算や債務超過の企業には融資を渋ることが多いです。
一方、日本政策金融公庫は政策的観点から中小企業や個人事業主の事業継続を支援する使命を持っており、赤字であっても「将来の収益性」「事業の必要性」「改善計画の実効性」を重視した審査を行います。2期連続の赤字でも融資を受けたケースは実際に存在し、3期連続赤字や2〜3年での解消が見込まれる債務超過でも対応してもらえることがあります。
このように、融資先の選択肢を正しく理解することが、赤字状態での資金調達成功の第一歩となります。
赤字でも融資を受けられる条件と審査のポイント
キャッシュフローがプラスであること
赤字企業が融資審査を通過するうえで、最も重要な要素の1つがキャッシュフロー(実際の現金の動き)です。損益計算書が赤字であっても、営業キャッシュフローがプラスであれば、「返済のための現金は確保できている」と金融機関に評価してもらえる可能性があります。
キャッシュフロー計算書を用意し、本業から生み出している現金の流れを可視化することが重要です。「売上は上がっているが、回収サイクルの関係で現金が少ない」「在庫投資が一時的にかさんでいる」など、赤字の背景にある現金の動きを正確に示すことで、返済能力を客観的にアピールできます。
さらに、毎月の入出金明細や売掛金の回収実績なども補足資料として提出すると、審査担当者への説明力が増します。
赤字の原因を明確に説明できること
金融機関の審査担当者が赤字決算を見たとき、真っ先に確認するのは「なぜ赤字になったのか」という点です。赤字の原因が一時的・外部的要因によるものであれば、融資に前向きになってもらいやすくなります。
以下のような赤字は「説明しやすい赤字」として評価されることがあります。
・設備投資や新規事業への先行投資による一時的な赤字
・自然災害や感染症拡大など外部要因による売上減少
・原材料費・人件費の高騰による一時的なコスト増加
・大口顧客の倒産による売上減少
逆に、「販売力の低下」「競合他社への顧客流出」「管理体制の崩壊」など、構造的・慢性的な問題が赤字の原因である場合は、改善計画なしには審査通過が難しくなります。自社の赤字理由を正直かつ論理的に説明する準備をしておきましょう。
改善計画(事業計画書)の提示
赤字企業への融資を検討する際、金融機関は「この企業は今後黒字に転換できるのか」を慎重に見極めます。そのために不可欠なのが、実現可能性の高い事業計画書です。
事業計画書には、以下の要素を盛り込むことが重要です。
・赤字の原因分析と現状認識
・具体的な改善施策(コスト削減・売上増加の方策)
・月次の売上・コスト・利益の数値目標
・資金の使い道と返済計画
・黒字転換の見込み時期
希望的観測や根拠のない数字を並べるだけでは評価されません。過去の実績データを踏まえた具体的な計画を示すことで、審査担当者からの信頼を得ることができます。できれば税理士や中小企業診断士などの専門家のサポートを受けながら作成することをおすすめします。
担保・保証人による信用補完
赤字決算で信用力が低下している場合、担保や保証人を提供することで融資審査のハードルを下げることができます。
担保として活用できるものには、不動産(自社所有の土地・建物)、売掛金・在庫などの動産(ABL)、代表者の個人保証などがあります。また、信用保証協会の保証を利用することで、銀行からの融資が受けやすくなるケースもあります。
ただし、個人保証については近年の金融庁の指針変更により、必ずしも要求されるわけではなくなってきています。担保の有無だけで審査が決まるわけではなく、あくまでも信用補完の手段の1つとして捉えておくことが大切です。
赤字企業が活用すべき融資制度
日本政策金融公庫のセーフティネット貸付
日本政策金融公庫は、経営環境の変化によって一時的に業況が悪化した中小企業を支援するための「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」を提供しています。この制度は、赤字決算であっても申し込める代表的な融資制度の1つです。
融資限度額は国民生活事業(個人事業主・小規模事業者向け)で7,200万円と設定されており、赤字企業でも業況悪化の原因が明確であれば審査対象となります。審査期間は平均3週間程度で、民間銀行よりも柔軟な対応が期待できます。
また、金利は比較的低く設定されており、民間のビジネスローンと比べて返済負担を抑えられる点もメリットです。まず日本政策金融公庫への相談を検討するのが、赤字企業の資金調達における王道の選択肢です。
資本性ローン(劣後ローン)の活用
日本政策金融公庫が提供する「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」は、赤字や債務超過の状態でも利用できる特殊なローンです。このローンは会計上「資本」として扱われるため、財務体質の改善にもつながります。
資本性ローンの大きな特徴は金利の設定方法にあります。赤字の期間は金利が年0.50%と非常に低く抑えられ、黒字に転換するにつれて段階的に金利が上昇する仕組みになっています。返済方法は毎月利息のみを支払い、元本は最終回にまとめて返済する形式(期限一括返済)で、経営再建中のキャッシュフローへの負担を最小化できます。
ただし、この制度は成長性や事業再生の可能性を評価されることが前提となるため、説得力のある事業計画書の提示が必須です。
信用保証協会のセーフティネット保証
信用保証協会のセーフティネット保証(4号・5号など)は、経営環境の悪化により資金調達が困難になった中小企業が活用できる制度です。保証協会が融資の保証人となることで、赤字状態でも銀行融資を受けやすくなります。
特に「セーフティネット保証4号」は、自然災害や経済危機など特定の事由により売上が減少した企業を対象としており、別枠で保証限度額が設定されます。「セーフティネット保証5号」は特定業種の企業を対象に、同様の支援が受けられます。
市区町村の認定を受ける必要がありますが、申請手続き自体はそれほど複雑ではありません。地域の商工会議所や中小企業診断士に相談しながら進めると、手続きをスムーズに進められます。
不動産担保融資・売掛債権担保融資(ABL)
不動産を所有している場合、不動産担保融資を活用することで赤字状態でも比較的大きな金額の融資を受けられる可能性があります。不動産の評価額をベースに融資額が決まるため、決算内容よりも担保価値が重視される点が特徴です。
一方、不動産担保がない企業には「売掛債権担保融資(ABL:Asset Based Lending)」が有効な選択肢です。売掛金や在庫などの動産を担保にして融資を受ける仕組みで、信用力よりも実際の事業資産の価値が評価されます。
どちらの融資も赤字決算の企業でも申し込みできますが、担保価値の評価や審査プロセスに時間がかかる場合があります。早めに金融機関に相談を始めることが重要です。
民間銀行から赤字でも融資を引き出す交渉術
メインバンクとの信頼関係を維持する
民間銀行から赤字状態で融資を受けるためには、日頃からのリレーションシップ(関係性)が重要です。業績が好調な時期に積極的にメインバンクとコミュニケーションを取り、経営状況を定期的に報告する習慣をつけておくことで、業況が悪化したときに相談しやすい関係が生まれます。
赤字決算を迎えた際も、まず隠さずに担当者に報告し、赤字の原因と今後の対応方針を説明することが先決です。「連絡が来なくなった」「決算書を持ってこなくなった」という状態が最も銀行担当者の不信感を招きます。透明性を持ったコミュニケーションが、継続的な融資関係を支える基盤となります。
決算書だけでなく資金繰り表を提出する
赤字決算の企業が銀行に融資を相談する際、決算書だけを持参しても不十分です。決算書は過去の結果を示すものに過ぎず、「これから返済できるかどうか」を示すには資金繰り表が不可欠です。
資金繰り表には、今後12か月の月次ベースでの収入・支出・残高の見通しを記載します。「いつ・どれくらいの資金が不足するか」「融資を受けることでどう資金繰りが改善するか」を具体的な数字で示すことで、融資の必要性と返済能力を同時にアピールできます。
赤字でも銀行融資を受けている中小企業の最大の特徴は、「資金使途と返済計画がわかる資金繰り表を銀行に提示していること」だというデータもあります。この準備が審査通過の大きなカギとなります。
赤字理由を「一時的」と証明するための資料
銀行担当者に「この赤字は一時的なものだ」と納得してもらうためには、客観的な証拠が必要です。具体的には、以下のような資料が有効です。
・業界全体の市況データ(自社だけでなく業界全体が厳しいことを示す)
・過去数期の業績推移グラフ(一時的な落ち込みであることを可視化)
・主要取引先との継続的な取引実績(売上の安定性を証明)
・新規受注や商談中の案件リスト(近い将来の売上増加を示す)
これらの資料を事業計画書と合わせて提出することで、「今は赤字でも、近い将来に回復が見込まれる」という説得力ある説明が可能になります。

融資以外の資金調達手段も押さえておく
ファクタリングで売掛金を即座に資金化する
融資審査に時間がかかる場合や、融資が難しい状況では、ファクタリングが即効性の高い資金調達手段として有効です。ファクタリングとは、保有する売掛金(売上代金の未回収分)をファクタリング会社に売却し、回収期日前に現金化するサービスです。
ファクタリングの審査は融資とは異なり、借り手企業の信用力ではなく売掛先(得意先)の信用力を主に評価します。そのため、自社が赤字や債務超過であっても、売掛先が信頼性の高い企業であれば利用できる可能性があります。
最短で即日〜数日以内に資金化できるため、急を要する資金繰り対応に適しています。ただし、手数料(2〜20%程度)が発生するため、コストを考慮したうえで活用判断することが重要です。
補助金・助成金を活用する
融資(借入)とは異なり、返済不要な資金として活用できるのが補助金・助成金です。国や地方自治体が中小企業の設備投資・事業転換・人材育成などを支援するために提供しており、赤字企業でも申請できるものが多数あります。
代表的な補助金には、ものづくり補助金(最大3,000万円)、小規模事業者持続化補助金(最大250万円)、IT導入補助金などがあります。ただし、補助金は採択後に費用を支払い、その後に補助金が交付される「後払い」形式であるため、申請から実際に資金を受け取るまでに数か月かかります。緊急の資金繰りには向きませんが、中長期的な経営改善のための資金として計画的に活用することをおすすめします。
請求書カード払いで支払いを遅らせて資金繰りを改善する
赤字時の資金繰りを改善するもう1つの方法として、支払いサイクルの見直しがあります。仕入れ代金や外注費などの支払いに、請求書カード払いサービスを活用することで、実際の現金支出を最大60日程度遅らせることが可能です。
INVOYのカード払いサービス(https://go.invoy.jp/service/pay/)を利用すると、本来は銀行振込で支払う必要がある請求書をクレジットカードで決済でき、カードの支払いサイクル分だけ手元資金を温存できます。融資の審査中や補助金の入金待ちの期間など、一時的な資金ギャップを埋めるための手段として効果的です。
融資を受けることが難しい赤字局面でこそ、このようなキャッシュフロー改善の工夫を組み合わせることで、経営の安定を図ることができます。
融資審査で必ず準備すべき書類一覧
決算書(損益計算書・貸借対照表)
融資審査において最も基本的な提出書類が決算書です。通常、直近2〜3期分の決算書(損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書)の提出を求められます。
赤字決算の場合、損益計算書の赤字を補完する説明資料を同時に用意することが重要です。「減価償却費が大きい」「特別損失が発生した」など、赤字の理由を数字で説明できるようにしておきましょう。また、自己資本比率や流動比率など、財務健全性を示す指標も把握しておくと、審査担当者との対話がスムーズになります。
資金繰り表と事業計画書
先述のとおり、資金繰り表と事業計画書は赤字企業の融資申請において必須の書類です。資金繰り表は月次ベースで今後1年間の現金収支を予測したもの、事業計画書は中長期的な経営改善の方向性と数値目標を示したものです。
事業計画書の作成が難しい場合は、最寄りの商工会議所・商工会・中小企業診断士・税理士などに相談することができます。日本政策金融公庫でも事業計画書の作成支援を行っている場合があるため、窓口に問い合わせてみることをおすすめします。
赤字理由書の書き方
金融機関によっては、赤字決算の理由を文書にまとめた「赤字理由書」の提出を求められることがあります。赤字理由書では、以下の内容を簡潔にまとめることが重要です。
・赤字が発生した主な要因(具体的かつ客観的に記述)
・赤字が発生した時期と規模(金額・期間)
・赤字解消に向けた具体的な取り組み
・黒字転換の見込み時期と根拠
文体は丁寧・簡潔に。感情的な表現や言い訳めいた記述は避け、事実ベースで冷静に記述することが、審査担当者への信頼感を高めます。
よくある質問(Q&A)
2期連続赤字でも融資は受けられますか?
2期連続赤字の状態でも、融資を受けられる可能性はあります。特に日本政策金融公庫は、3期連続赤字の企業に融資を行ったケースもあります。重要なのは赤字の原因と改善計画の説得力です。キャッシュフローがプラスであること、事業計画書が具体的であること、担当者との対話が誠実であることが、融資可否を左右します。
ただし、2期連続赤字ともなると民間銀行での審査は一段とハードルが上がります。まず日本政策金融公庫や信用保証協会の保証付き融資から検討するのが現実的な選択肢です。
赤字でも即日で資金を調達できますか?
融資(ローン)で即日対応は基本的に難しく、日本政策金融公庫でも審査から融資実行まで平均3週間程度かかります。民間銀行のビジネスローンでは最短数日で融資実行できる場合もありますが、審査が通るかどうかは赤字の内容によって異なります。
即日性を求める場合は、ファクタリングが最も現実的な手段です。売掛金を保有している場合、最短即日での資金化が可能なファクタリング会社もあります。また、請求書のカード払いサービスを使って支払いを先延ばしにし、手元資金を守るという方法も有効です。
債務超過でも融資の可能性はありますか?
債務超過(負債が資産を上回る状態)は、融資審査において赤字以上に厳しく評価されます。民間銀行での通常の融資は極めて困難になりますが、日本政策金融公庫の資本性ローン(挑戦支援資本強化特別貸付)は、債務超過の解消が見込まれる企業でも利用できるよう設計されています。
また、信用保証協会のセーフティネット保証や不動産担保融資なども、状況によっては選択肢となります。専門の経営コンサルタントや弁護士、税理士に相談しながら、最適な再建計画を立てることが重要です。
まとめ
赤字だからといって、融資の道が完全に閉ざされるわけではありません。この記事でお伝えした重要なポイントを振り返ります。
日本の赤字法人率は約65%で、赤字は中小企業の多くが経験する一般的な状況です。キャッシュフロー・赤字の原因・改善計画書を整えることが審査通過の鍵です。日本政策金融公庫のセーフティネット貸付・資本性ローン(赤字時の金利0.50%)・信用保証協会の保証付き融資など、赤字企業向けの制度を積極的に活用しましょう。ファクタリングや請求書カード払いサービスなど、融資以外の資金調達手段も組み合わせることで、資金繰りの安定化を図ることができます。
赤字の局面は経営者にとって精神的にも厳しい時期ですが、正しい知識と準備があれば必ず打開策は見つかります。まずは最寄りの日本政策金融公庫や商工会議所に相談してみてください。専門家のサポートを活用しながら、一歩一歩着実に経営の立て直しを進めていきましょう。



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