
最終更新日: 2026年8月1日
本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。
決算賞与は、利益が出た年度に従業員へ還元し、要件を満たせば未払いでも当期損金にできる可能性がある賞与です。3月決算なら3月31日までに通知し、4月30日までに支払い、5月末の社会保険料や法人税も見込みます。
目次
決算賞与を損金算入するための3つの要件
決算賞与を当期の損金にするには、国税庁 No.5350 使用人賞与の損金算入時期に沿って、3つの要件をすべて満たす必要があります。要点は、期末までに各人別の支給額を通知し、その通知額を事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払い、通知した事業年度で損金経理することです。特に、通知は条文上、書面に限定されていません。ただし、税務調査で通知の事実を示すため、書面やメールなど記録が残る方法を使うのが実務上は望ましいです。
要件①:期末までに各人別に通知
最初の要件は、支給額を各人別に、かつ同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知することです。全従業員へ必ず支給しなければならないわけではありませんが、対象者を任意のグループに区切ってよいわけでもありません。法人税基本通達9-2-44は、パートタイマーや臨時雇いなどの身分で雇用している者とその他の使用人を区分している場合に限り、その区分ごとに通知の有無を判定できるとしています。ただし、雇用関係が継続的で他の使用人と同様に賞与の支給対象としているパートタイマーはこの区分から除かれるため、その者に通知せず正社員だけに通知すると要件を満たしません。
通知方法は、法令上は書面に限定されていません。ただし、口頭だけでは、いつ誰にいくら通知したかを後から証明しにくくなります。実務では、通知書に通知日、氏名、支給額、支給予定日を記載し、本人の受領記録を残す運用が安全です。支給対象者の一部に通知漏れがあると、要件を満たさないリスクが高くなります。
要件②:事業年度終了の日の翌日から1か月以内の支払
2つ目の要件は、通知した金額を、通知したすべての使用人に対して、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払うことです。3月31日決算の会社なら4月30日まで、9月30日決算の会社なら10月31日までが目安になります。1か月以内という期限は資金繰りの都合で延ばせるものではないため、支給決定前に現預金と入金予定を確認する必要があります。
支払方法は、銀行振込が実務上わかりやすいです。振込明細により、支払日、支払先、支払金額を客観的に示せるためです。現金手渡しが直ちに不可というわけではありませんが、領収書、受領日、本人確認の記録を残さないと、税務調査で支払事実の説明が難しくなるおそれがあります。
要件③:通知額を支払い、通知年度で損金経理
3つ目の要件は、通知した金額を支払い、その支給額を通知した日の属する事業年度で損金経理することです。通知額と実際の支給額がずれると、通知した金額を支払ったとはいえなくなる可能性があります。利益見込みが変わったから減額する、退職予定者だけ除外する、といった処理は特に注意が必要です。
会計処理では、決算日に未払いであっても、要件を満たす見込みであれば未払費用などで当期費用に計上します。ただし、期末時点ではまだ給与等を支払っていないため、源泉所得税の預り金は計上しません。源泉徴収は所得税法上、支払の際に行うものです。仕訳は後述の支給フローで具体的に確認します。
3要件チェックリスト
| 確認項目 | 実務で行うこと | NG例 |
| 各人別通知 | 決算日までに氏名別の支給額を通知します | 総額だけを社内掲示します |
| 対象者の範囲 | 同時期に支給を受けるすべての使用人へ通知します | 一部の対象者に通知が漏れます |
| 支払期限 | 決算日の翌日から1か月以内に支払います | 1日でも期限を過ぎます |
| 通知額との一致 | 通知額と同額を支払います | 資金不足で減額します |
| 損金経理 | 通知した事業年度で未払計上します | 申告調整だけで済ませます |
| 証憑保管 | 通知書控え、受領記録、振込明細を残します | 口頭説明だけで記録がありません |
根拠条文と一次情報
使用人賞与の損金算入時期は、法人税法施行令第72条の3、法人税基本通達9-2-43から9-2-44、国税庁 No.5350が根拠になります。国税庁 No.5350は、支給予定日がある賞与、3要件を満たす賞与、それ以外の賞与に分けて基準を示しています。参考情報として、要件は国税庁 No.5350 使用人賞与の損金算入時期、根拠条文は法人税法施行令、通達は法人税基本通達9-2-43から9-2-44で確認できます。
通常の賞与・業績賞与・賞与引当金との違い
通常のボーナスとの違い
| 区分 | 通常賞与 | 決算時の臨時賞与 | 業績賞与 | 賞与引当金 |
| 主な目的 | 定例的な処遇 | 利益還元と決算対策 | 業績や評価への連動 | 将来賞与の会計上の見積り |
| 支給時期 | 夏・冬など | 決算日前後 | 制度により異なります | 支給ではなく見積計上です |
| 金額の決め方 | 基本給や評価 | 当期利益や資金余力 | 指標や評価基準 | 過去実績や見積り |
| 税務上の注意 | 支払時期が中心 | 3要件が重要 | 制度設計が重要 | 原則として税務上の損金とは別です |
業績賞与との違い
業績賞与は、売上、営業利益、評価ランクなどの指標にもとづく賞与です。支給基準は業績賞与の計算方法と制度設計で確認できます。
賞与引当金との違い
賞与引当金は将来賞与の会計上の見積りで、国税庁 No.5350の通知、支払、損金経理で判定する決算時の臨時賞与とは異なります。賞与引当金の仕訳と計算方法と混同しないでください。
節税効果はどれくらい?シミュレーションで確認
賞与額別の法人税軽減額の目安
| 支給総額 | 実効税率約30%の場合の軽減額 | 会社から出ていく現金 |
| 500万円 | 約150万円 | 500万円と会社負担の社会保険料等 |
| 1,000万円 | 約300万円 | 1,000万円と会社負担の社会保険料等 |
| 2,000万円 | 約600万円 | 2,000万円と会社負担の社会保険料等 |
実効税率は、資本金、所得金額、自治体、外形標準課税の有無などで変わります。上の表は税率約30%で単純計算した目安です。1,000万円支給で税負担は約300万円下がる可能性がありますが、現金は1,000万円以上出ていきます。
節税だけを目的にすべきではない理由
賞与、会社負担の社会保険料、源泉所得税、法人税等の納付は短期間に重なります。3月決算では4月末に賞与、5月末に社会保険料と法人税等が続くため、節税額だけでなく支給後の手元資金を確認してから支給額を決めます。他の節税手段と比べるなら、30万円未満の少額資産の即時償却も選択肢になります。
支給フローと実務手順
STEP1 支給総額と対象者を決める
税引前利益、納税見込み、賞与支給後の現預金、今後3か月の入金予定を確認します。配分は全員同額、係数配分、評価ポイント制などです。利益率は営業利益率の目安も参考になります。
STEP2 各人別の通知書を作成・交付する
通知書には、通知日、対象者名、支給額、支給予定日、支給方法を入れます。条文上は書面限定ではありませんが、記録を残します。
| 項目 | 記入例 |
| 通知日 | 2027年3月25日 |
| 宛名 | 営業部 山田太郎 様 |
| 件名 | 決算時賞与支給額の通知 |
| 本文 | 2027年3月期の業績を踏まえ、貴殿への賞与支給額を500,000円と通知します |
| 支給予定日 | 2027年4月30日 |
| 支給方法 | 給与振込口座への振込 |
| 会社名 | 株式会社〇〇 |
| 確認欄 | 受領日、本人署名または電子確認記録 |
STEP3 期末に未払計上する
決算日時点で未払いの場合は、通知した事業年度で損金経理するため、未払費用などで計上します。ここで重要なのは、期末時点で源泉所得税の預り金を立てないことです。源泉徴収は支払の際に行うため、未払計上時と支払時を分けて処理します。勘定科目の整理は給与関連の勘定科目と仕訳も参考になります。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
| 期末の未払計上時 | 賞与 10,000,000円 | 未払費用 10,000,000円 |
| 翌期の支払時 | 未払費用 10,000,000円 | 預り金 2,000,000円、普通預金 8,000,000円 |
STEP4 1か月以内に振込で支給する
通知した金額は、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払います。3月31日決算なら4月30日までに支払い、銀行振込の明細、作成者、承認者、送信日を保存します。
STEP5 源泉徴収と社会保険料の手続きを行う
支払時には、源泉所得税、従業員負担分の社会保険料、雇用保険料などを控除します。被保険者賞与支払届は支給日から5日以内に提出し、手取りは賞与の手取り・所得税の計算方法で確認できます。
社会保険料・源泉徴収の扱い
標準賞与額の考え方と上限
日本年金機構によると、賞与の健康保険料と厚生年金保険料は、税引前の総支給額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額で計算します。2026年度時点の上限は、健康保険が年度累計573万円、厚生年金保険が1か月あたり150万円です。被保険者賞与支払届は支給日から5日以内に提出します。
手続きは日本年金機構の賞与支給時の手続きで確認できます。
源泉所得税は支払の際に徴収
源泉所得税は支払時に差し引くため、決算日時点で未払費用を計上するだけの段階では預り金を計上しない処理が一般的です。根拠は所得税法および国税庁 No.2502 源泉徴収義務者とはで確認できます。実際の税額は支給月や扶養親族数により変わります。
会社負担分の社会保険料は原則として翌期の損金
決算日後に賞与を支払う場合、会社負担分の社会保険料は原則として翌期の損金になると考えられます。3月決算の会社が4月30日に賞与を支給した場合、賞与本体は3要件を満たせば3月期の損金となる可能性がありますが、社会保険料の納付義務は4月以降に確定するため、3月期に入れると期ずれを指摘されるリスクがあります。
役員に支給する場合の注意点
役員賞与は原則として損金不算入
国税庁 No.5211では、法人が役員に対して支給する給与のうち、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものは損金に算入されないとされています。期末に利益を見てから役員へ臨時賞与を出す処理は、原則として損金不算入です。詳しくは役員報酬の損金算入ルールも確認してください。
事前確定届出給与・定期同額給与との関係
事前確定届出給与は、所定の時期に確定額を支給する旨を定め、原則として期限までに税務署へ届け出る制度です。届出額、支給日、支給額がずれると損金算入が認められないリスクがあります。
従業員と役員の取扱い比較
| 区分 | 従業員 | 役員 |
| 主な根拠 | 使用人賞与の損金算入時期 | 役員給与の損金算入ルール |
| 臨時賞与の扱い | 3要件を満たせば当期損金の可能性があります | 原則として損金不算入です |
| 通知の重要性 | 各人別通知が重要です | 事前確定届出などが重要です |
| 未払計上 | 要件を満たす場合に検討できます | 利益確定後の未払計上は慎重判断です |
| 相談先 | 顧問税理士、社労士 | 顧問税理士、必要に応じて司法書士等 |
損金算入が否認される7ケース
| ケース | 否認リスクがある理由 | 予防策 |
| 通知が一部の従業員に漏れていた | 同時期に支給を受けるすべての使用人への通知になりません | 対象者一覧と通知記録を照合します |
| 通知額と支給額が一致しない | 通知した金額を支払ったといえない可能性があります | 金額確定後に通知します |
| 支給日在籍要件がある | 支給日に在職する使用人だけに支給することとしている場合の通知は、要件上の通知に当たりません | 規程と通知文を税理士に確認します |
| 支払が1か月を超えた | 期限内支払の要件を満たしません | 振込日を決算前に予約します |
| 役員や役員親族が混在 | 使用人賞与と役員給与の区分が問題になります | 対象者の身分を確認します |
| 現金手渡しで記録がない | 支払日と金額を証明しにくくなります | 銀行振込を原則にします |
| 損金経理をしていない | 通知年度での損金経理要件を満たしません | 決算整理仕訳に入れます |
通知が一部の従業員に漏れていた
支給対象の一部に通知していない場合、各人別かつ同時期に支給を受けるすべての使用人への通知という要件を満たさないおそれがあります。
通知額と支給額が一致しなかった
通知後に通知額より少なく支給する処理は危険です。
就業規則に支給日在籍要件がある
支給日在籍要件がある場合、決算日時点で支給対象が確定していないと見られるおそれがあります。国税庁 No.5350にも、支給日に在職する使用人のみに賞与を支給する場合の通知は、ここでいう通知に該当しない旨が示されています。
支払が1か月を超えた・一部未払が残った
支払期限を1日でも過ぎると、当期損金として認められないリスクが高くなります。
役員・役員親族への支給が混在していた
役員への支給は別ルールで判断します。役員親族も職務内容、権限、勤務実態で確認します。
現金手渡しで記録が残っていない
現金支給では本人の領収書、支給日、金額、受領署名を残してください。
損金経理をしていなかった
通知と支払が正しくても、通知した事業年度で損金経理していなければ要件を満たしません。
税務調査で確認されるポイントと残すべき書類
調査官が確認する5点
| 確認点 | 見られる資料 | 実務上の注意 |
| 通知日 | 通知書、メールログ、受領記録 | 決算日以前かを確認します |
| 対象者 | 支給対象者一覧、賃金台帳 | 漏れや不自然な除外を確認します |
| 支給額 | 通知書、賃金台帳、振込明細 | 通知額と支払額の一致を確認します |
| 支払日 | 振込明細、通帳、FBデータ | 1か月以内かを確認します |
| 損金経理 | 総勘定元帳、決算整理仕訳 | 通知年度で費用計上したかを確認します |
保管すべき証憑リスト
通知書控え、本人の受領記録、支給対象者一覧、支給額の計算資料、賃金台帳、振込明細、総勘定元帳、決算整理仕訳、取締役会や経営会議の議事録を保管します。
参考判例:三光純薬事件/ベネッセコーポレーション事件
三光純薬事件では賞与の支給日在籍要件、ベネッセコーポレーション事件では退職予定者への賞与減額が争点です。労務上の扱いと未払計上した賞与の損金算入要件は分けて確認します。
資金繰りに与える影響
決算日から3か月間の資金流出タイムライン
決算日から3か月は、賞与、社会保険料、源泉所得税、法人税、消費税、通常の仕入や給与が重なります。
3月決算モデルケース
| 時期 | 主な手続き | 資金繰りへの影響 |
| 3月25日 | 各人別の支給額を通知 | 支払予定額が確定します |
| 3月31日 | 決算日、未払計上 | 損益に反映します |
| 4月30日 | 賞与を振込支給 | 現金が大きく減ります |
| 5月10日 | 源泉所得税の納付期限の目安 | 預り金を納付します |
| 5月末 | 社会保険料の納付 | 会社負担分も流出します |
| 5月31日 | 法人税等の納付期限の目安 | 納税資金が必要です |
法人税等の処理は法人税の勘定科目と仕訳も確認してください。期限は会社の申告期限、納期の特例、休日などで変わります。
出せる会社の条件は利益ではなく入金予定
入金が遅い会社、支払いが先行する会社、借入返済が大きい会社は、賞与支給日、社会保険料の納付日、法人税等の納付日、主要な買掛金支払日を1枚の表に並べます。
銀行融資の審査への影響
賞与を損金にすると利益は下がります。
入金予定を見ながら支給余力を確認したい方へ
INVOYは請求書の作成、送付、入金管理を無料プランから利用できます。
よくある質問
平均・相場はいくらですか
法律上の相場はなく、数万円から月給1か月分程度まで幅があります。
パート・アルバイトにも支給できますか
支給できます。ただし、就業規則、雇用契約、社内の賞与制度に沿って対象者を整理します。
支給前に退職した社員はどうなりますか
労務上は支給日在籍要件、税務上は支給日在籍者だけを対象にする通知が要件上の通知に当たるかを確認します。
支給日に退職した社員への支給は損金になりますか
通知済みなら通知額どおり支払うかが重要です。退職を理由に支払わないと、通知したすべての使用人に支払ったとはいえない可能性があります。
通知は口頭でも要件を満たしますか
条文上は通知であり、書面に限定されていません。ただし、書面、メール、電子承認など記録が残る方法が望ましいです。
毎期出さないといけませんか
毎期支給する義務はありません。業績や資金状況に応じて支給の有無を判断します。
赤字でも出せますか
任意の賞与支給自体は考えられますが、運転資金や納税資金を圧迫し、黒字の場合ほど節税効果も見込めません。
手取りはいくらですか
手取りは、額面から社会保険料、雇用保険料、源泉所得税などを控除した金額です。詳しい流れは賞与の手取り・所得税の計算方法で確認できます。
まとめ
決算賞与の要点は、期末までに各人別に、同時期に支給を受けるすべての使用人へ通知すること、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に通知額を支払うこと、通知した事業年度で損金経理することです。
書面通知が法令要件ではないこと、未払計上時に源泉所得税の預り金を立てないこと、役員賞与は原則として損金不算入であること、会社負担分の社会保険料は原則として翌期の損金になる点に注意してください。
〈BOLD〉決算後の支払余力を見える化するなら〈/BOLD〉
賞与、社会保険料、法人税の支払いは短期間に重なります。INVOYで請求書と入金予定を管理できます。



カードローンの債務整理とは?3つの手続きの違いと相談先を整理
返済日が近づくたびに残高を確認し、別のカードで工面する。その繰り返しに入ると、元本はほとんど減らない…